ドープ有機半導体の電気伝導度を決定づける、鍵となる因子を発見

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2019-02-05 自然科学研究機構

研究の概要

有機半導体は、柔軟で、曲げることのできる電子回路を、印刷技術で大量に作るためには欠かせない材料であり、既に、有機発光ダイオード(OLED)を用いたディスプレイ市場では成功を収めています。しかしそれ以外の産業分野に進出するためには、さらに性能を向上させることが必要です。性能向上のためには、ドーピングと呼ばれる技術が鍵になります。ドーピングとは、元々極めて高純度に作られた半導体材料にわざと微量の不純物(ドーパント)を加えて、新たな性能を発揮させることです。極微量のドーパントを加えるだけで、半導体中で電気を運ぶキャリアの振るまいが劇的に変化し、その結果として、材料の電気伝導度を制御することができます。有機エレクトロニクス製品においては、ドーパントとして分子を用いる「分子ドーピング」が不可欠の技術となっています。しかしドープされた有機半導体の中で、どのような仕組みで電気が運ばれるのかといった、基本的な物理現象の理解が不十分であったため、例えばシリコンのような非常に導電性の高い無機半導体に匹敵するまで電気伝導度を向上させることは困難でした。
ドレスデン工科大学の、ドレスデン応用物理・フォトニック材料統合センター(IAPP)、ドレスデン先進電子工学センター(cfead)、米国スタンフォード大学および分子科学研究所の研究者が、ドープ有機導体の電気伝導度を決める鍵となる因子を見出しました。ドーパント分子を有機半導体に加えることで、プラスとマイナスに帯電した分子がくっついたような「錯体」が形成されることが、実験と理論シミュレーションを組み合わせた研究により明らかになりました。有機半導体中で形成される錯体の量や、錯体の結合の強さ(クーロン相互作用)といった特徴が、電気を運ぶ「キャリア」が動くときに乗り越えなければならない障壁の高さを決め、電気伝導度の大きさを支配していることがわかりました。このようにドーパント分子の何が重要な役割なのかを明らかにしていくことが、さらに高い電気伝導度を持つ新しい分子材料を開発する基礎として重要です。
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ドーパント分子(紫色)を含んだ有機半導体層(緑色の分子)。

掲載論文

題名:
Molecular parameters responsible for thermally activated transport in doped organic semiconductors
(ドープ有機半導体における熱活性型電荷輸送を決定づける分子パラメータ)
著者名:
Martin Schwarze, Christopher Gaul, Reinhard Scholz, Fabio Bussolotti, Andreas Hofacker, Karl Sebastian Schellhammer, Bernhard Nell, Benjamin D. Naab, Zhenan Bao, Donato Spoltore, Koen Vandewal, Johannes Widmer, Satoshi Kera, Nobuo Ueno, Frank Ortmann, Karl Leo
掲載誌:
Nature Materials
DOI: 10,1038/s41563-018-0030-8
https://www.nature.com/articles/s41563-018-0277-0
2019年1月28日掲載

問い合わせ先

解良 聡 (けら さとし)
自然科学研究機構 分子科学研究所 教授

Prof. Karl Leo
Dresden Integrated Center for Applied Physics and Photonic Materials, TU Dresden

Dr. Frank Ortmann
Center for Advancing Electronics Dresden, TU Dresden

 

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