2019/4/1 アメリカ合衆国・ライス大学
世界中の蓄電池をリサイクルする「ブルーグリーン」の新しい溶液
(New ‘blue-green’ solution for recycling world’s batteries)
・ ライス大学が、環境負荷のない深共晶溶媒で、リチウムイオン蓄電池カソード(正極)に使用される金属酸化物からコバルトを抽出する技術を開発。
・ 一般的な化学物質である塩化コリンとエチレングリコールから構成される深共晶溶媒は、粉末状の化合物からコバルトを 90%超、使用済み蓄電池からはより少量でも有用な量を回収する。
・ リチウムイオン蓄電池のような充電式電池は、EVを含む電子機器での需要増大に伴い将来的な環境への負荷が懸念される。賦存量が限られエネルギー貯蔵デバイスの性能に不可欠なコバルトのような金属の回収は重要であり、増え続ける蓄電池廃棄物回収の包括的な戦略の構築が必要と考える。
・ 蓄電池からの重要金属回収では酸の使用もあるが、効果的でも環境に厳しく、リサイクルプロセス全体の高コスト化と作業の危険性を伴う。高温冶金や湿式冶金によるリサイクル方法もあるが、いずれも高温度プロセスが必要。
・ 様々な種類の金属酸化物を溶解できる深共晶溶媒は、養鶏飼料添加物とプラスチック前駆体から構成され、室温下の混合で効果的な溶媒和特性を有する透明で比較的無毒性の液体になる。前駆体を適切に選択することで、有用な特性を備えた安価で「グリーンな」溶媒ができる。
・ 同大学では当初、次世代の高温度スーパーキャパシタの電解質として深共晶溶媒の研究を進めていたが、同溶媒が金属酸化物スーパーキャパシタのニッケルからイオンを引き抜いていることを発見。このような電解質としての欠点を、使用済みリチウムイオン蓄電池のリサイクルで活用した。
・ 多様な温度・時系にて金属酸化物で深共晶溶媒を試験し、コバルト酸リチウムの粉末では透明な同溶媒がコバルトの溶解を示すブルーからグリーンの広範囲の色を提示。特定の条件下、180℃(356 ℉)にて同溶媒は粉末からリチウムイオンを 90%近く、またコバルトイオンを 99%まで抽出した。
・ 小型のプロトタイプ蓄電池で 300 回の充放電サイクル後に電極を前述と同様の条件下に置くと、同溶媒はコバルトとリチウムを溶解し、電極中の他の化合物から金属酸化物を分離した。
・ 同溶媒に溶解したコバルトは、析出やスチールメッシュへの電気めっきにより回収できることを発見。電気めっきによる回収後では、溶媒が再利用できる。
・ 米国エネルギー省(DOE)は、電池の先進的なリサイクリングに技術に向けた新しい取組を開始し、リチウムイオン蓄電池のリサイクルセンター設立を発表している。本研究は、米国科学財団(NSF)が同財団の Graduate Research Fellowship Program を通じて支援した。 URL: https://news.rice.edu/2019/04/01/new-blue-green-solution-for-recycling-worldsbatteries2/?utm_source=Homepage&utm_medium=bluegreen&utm_campaign=Homepage%20News
(関連情報)
Nature Energy 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Deep eutectic solvents for cathode recycling of Li-ion batteries
URL: https://www.nature.com/articles/s41560-019-0368-4
<NEDO海外技術情報より>