水素再結合触媒の最適形状を明らかにする~実規模試験により水素濃度低減効果を確認~

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2019-10 JAEA 「原子力機構の研究開発成果2019-20」P17

福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発

核燃料廃棄物の保管容器は、放射線による水の分解反応から、可燃性ガスである水素が常に発生する環境にあります。近年、外部電源を必要としない、水素再結合触媒を利用した水素濃度低減法が注目を集めています。これは、静置するだけで発生した水素と大気中の酸素とを非爆発的に反応させ、外部電源が無い条件下でも水素濃度の低減が可能なものです。
本研究では、自動車触媒を基とした水素再結合触媒を作製し、その水素濃度低減効果を実規模反応試験装置にて評価しました。試験装置は、ドイツのユーリヒ総合研究 機構にある、内径 1400 mm、高さ 3700 mm の密封円筒型試験装置を用いました。この試験装置は閉鎖空間における水素再結合触媒の働きを確かめることができるものです。触媒を内部に設置し、水素を外部から注入させた際の、空間内の各点における温度・流速・水素濃度変化を計測し、水素濃度低減効果を実験的に観測しました。

表 1-1 に、実験に使用した水素再結合触媒の仕様を示します。多数の貫通孔(セル)がある格子型セラミックス基質の壁に貴金属微粒子が吹き付けてあります。形状の最適化を図るためにガスが流通するセルの密度が異なる触媒を複数用意しました。この触媒を煙突状の筒にはめ込み、試験装置中央部に設置します。水素注入後に反応が開始しますが、水素と酸素との反応は発熱反応であるため、煙突状の筒の上方に空気が流れる形で対流が進み、それにより空間全体の水素濃度低減効果が現れます。流速を調べることで触媒性能を知ることができ、それを図示したものが図 1-14 になります。これから、セル密度が小さくなるほど流速が増す、すなわち触媒性能が向上していることが分かります。同様に、図 1-15(a)のような厚みの異なる触媒に対して効果を確かめたのが 図 1-15(b)で、セル密度 0.047 の触媒では厚みを増しても流速が低減しないことが見て取れます。厚みの増加により反応量が増し、セル密度 0.047 の触媒では水素の大量発生にも効果を発揮できることを示しています。

放射光実験やシミュレーションとも連携して、より効果的な水素再結合触媒の開発を目指して研究開発を進めています。この研究の進展により、廃棄物保管における安全性を担保することが期待されます。


表1-1 触媒の仕様
セル密度が異なる触媒を作製し、その反応性を確かめました。

図1-14 触媒のセル密度評価
セル密度が異なる触媒に対して流速及び温度を評価し、セル密度を下げることによって流速が増すことを確認しました。


図1-15 触媒の厚み評価
(a)は厚みが異なる触媒を示しています。(b)は厚みが異なる触媒に対して流速を評価し、セル密度0.047 の触媒では触媒を厚くしても流速の低下が少ないことを確認しました。


本研究は、文部科学省からの受託研究「廃棄物長期保管容器内に発生する可燃性ガスの濃度低減技術に関する研究開発」の成果の一部です。

●参考文献
Ono, H., Matsumura, D. et al., Research on Hydrogen Safety Technology Utilizing the Automotive Catalyst, E-Journal of Advanced Maintenance,vol.11, no.1, 2019, p.40–45.

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