がん細胞毒性を有する1-ヒドロキシタキシニンの全合成に成功

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強力な生物活性を有する複雑な天然物の完全化学合成

2019-07-05 東京大学

東京大学大学院薬学系研究科天然物合成化学教室の今村祐亮大学院生、吉岡駿博士、長友優典講師、井上将行教授は、がん細胞毒性を有する複雑天然物1-ヒドロキシタキシニンの全合成を、2つのラジカルカップリングを鍵反応として用いることで達成しました。本研究成果は、2019年6月18日付で、化学分野の総合学術雑誌であるAngewandte Chemie International Edition電子版に掲載されました。

1-ヒドロキシタキシニンは、マウス白血病細胞やヒト扁平上皮癌細胞に対して細胞毒性を示す天然物です。複雑に環構造が組み合わさった6/8/6員環炭素骨格に多数の高反応性の酸素官能基を有している本化合物およびその類縁体はタキサンジテルペンと総称され、有用な生物活性天然物群として注目されています。1-ヒドロキシタキシニンの化学構造の特徴として、2つの第4級炭素と6つの不斉中心を含む歪んだ8員環構造が挙げられます。今回、本研究グループは、独自に開発した化学・立体選択的なラジカルカップリングを鍵反応として用いることで、複雑な環構造を効率的に構築し、標的分子1-ヒドロキシタキシニンの全合成を26工程で達成しました。

本研究の応用展開により、抗がん剤タキソールのような、より高酸化度かつ強力な生物活性を有するタキサンジテルペン類の創出が期待されます。

「1-ヒドロキシタキシニンのような酸素官能基を多数持ち、複雑な炭素骨格を持つ天然物を、構造的に単純な原料から、有機合成的に組み上げていくことは、非常に困難です。今回の全合成では、収束性を最大限に高め、官能基変換をなるべく抑えた戦略を開発しました。高酸化度天然物やその誘導体の自在な供給は、医薬品探索のための新規ケミカルスペースの拡張に重要です。今後も、構造的に多様かつ複雑な天然物群の全合成に挑戦し続けていきたいと思います」と井上教授は話します。

論文情報

Yusuke Imamura, Shun Yoshioka, Masanori Nagatomo, Masayuki Inoue, “Total Synthesis of 1-Hydroxytaxinine,” Angewandte Chemie International Edition: 2019年6月18日, doi:10.1002/anie.201906872.

論文へのリンク (掲載誌)

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