2018/08/03 京都大学
ダニエル・パックウッド 高等研究院 物質―細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)講師、一杉太郎 東京工業大学教授らの研究グループは、正解と不正解のデータを事前に学習しない「教師なし機械学習」を使って、金属基板上の分子の配列を予測するガイドラインを作ることに成功しました。
本研究成果は、2018年6月25日に英国の科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
今回の研究成果を用いると、分子の種類を、その集合の仕方によって分別することができます。これによって、例えば、電気配線として利用可能な直線状の超分子構造を形成する際に、どのような分子を用いればよいのか、予測することができます。微小デバイスにおいて必要な部品(微小電気配線など)を形成することにつながるので、ナノエレクトロニクス開発を加速することが期待できます。将来的に、ロボットや柔らかいディスプレイ、また、超低消費電力デバイスの実現に貢献できることを期待しています。
概要
基板上に付着した分子は、分子間引力によって集合し、微小な構造(超分子構造)を自発的に形成します。この現象はナノエレクトロニクス開発に向けて注目を集め、微小な電気配線(ナノ電線)や、電子素子として利用可能な超分子構造を作る際に活用できる可能性があり、研究活動が活発になっています。しかし、分子を望み通りの構造に自発的に集合させるためのガイドラインがなく、なかなか応用への展開が進みませんでした。
本研究グループは、各研究者が持つ数理科学・理論化学、材料科学の知見を活かし、機械学習を活用することで、基板上の分子を望み通りに集合させるためのガイドラインを作成することに成功しました。
この機械学習は、分子の化学的特徴とその分子の集合過程がどのように関わっているかを学習して、その結果を図式的にまとめとものです。そして、その図を解析することでガイドラインを導きました。これにより、例えば、電気配線として利用可能な直線状の超分子構造を形成する際に、どのような分子を用いれば良いのか予測することができます。また、機械学習には「教師あり」学習と「教師なし」学習の二通りあり、本研究で作成したガイドラインは、正解と不正解のデータを事前に学習しない、「教師なし機械学習」の方法で予測する点で意義があります。
本研究成果は、微小なデバイスにおいて必要な部品(微小電気配線など)を形成することにつながるため、ナノエレクトロニクス開発の加速が期待できます。将来的に、ロボットや柔らかいディスプレイ、または超低消費電力デバイスの実現に寄与することが期待されます。
図:本研究のイメージ図。分子は基板上で互いに引き合いながら集合する。(イラスト:髙宮泉水)
詳しい研究内容について
ナノ電線作製目指すガイドライン 「教師なし機械学習」利用で実現
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-018-04940-z
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/232639
Daniel M. Packwood, Taro Hitosugi (2018). Materials informatics for self-assembly of functionalized organic precursors on metal surfaces. Nature Communications, 9:2469.