オートリザバー計算:新しいAI予測理論の構築

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2020-09-11 東京大学

1. 発表者:

Pei Chen (華南理工大学 研究員)

劉   鋭(華南理工大学 教授)

合原 一幸(東京大学 特別教授・名誉教授/東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)副機構長・主任研究者)

陳 洛南(中国科学院 上海生命科学研究院 教授)

2. 発表のポイント:

◆様々な複雑系の変化を予測する新しいAI予測理論である「オートリザバー計算」手法を提案した。

◆実際の複雑系から観測される多数の観測ビッグデータの空間情報を特定のターゲット変数の予測に活用するための数理的手法を構築した。

◆予測が重要な意味を持つ再生可能エネルギー、気象、疾病患者数などの多様な複雑系の予測精度向上が期待出来る。

3.発表概要:

 気象、生命、経済などの世の中に実在する様々な複雑系は、非常に多くの構成要素が相互作用する高次元システムである。この性質があるために、複雑系からは多変数のビッグデータが観測出来る。東京大学の合原一幸特別教授・名誉教授は、中国科学院の陳洛南教授らと共同で、複雑系に適用可能な新しいAI予測技術である「オートリザバー計算」手法を提案した。この手法は、複雑系から観測される多変数ビッグデータの空間情報を特定のターゲット変数の予測に活用するための数学理論に基づいている。風速、日射量、海面気圧、気温、台風進路、遺伝子発現量、株価指数、循環器系疾患の入院患者数、交通量といった多数の複雑系の予測に有効であることが、実際の観測ビッグデータを用いて検証された。

4.発表内容:

① 研究の背景・先行研究における問題点

 脳、生命、新興・再興感染症、電力、通信、交通などの社会インフラシステム、経済など現代社会の重要な問題は、広義の複雑系として理解することが出来る(合原編著:暮らしを変える驚きの数理工学、ウエッジ、2015)。これらの複雑系の将来の変化を予測することは、様々な疾病の早期診断、感染症の流行予測、電力網のブラックアウトや交通渋滞の発生防止、経済対策など社会の様々な問題解決のために極めて重要である。また、最近のセンサー、IoT(Internet of Things)、エッジコンピューティングなどのICTの進歩により、複雑系から非常にたくさんのビッグデータが同時計測出来るようになってきている。

しかしながら、これらの高次元ビッグデータを用いて複雑系の将来動向を効率よく予測する技術は、高次元性の数理的取り扱いの難しさ(“次元の呪い”と表現される)もあって、十分に開発されていなかった。

② 研究内容

 本研究は、複雑系から観測された高次元、すなわち多変数のビッグデータの空間情報を特定のターゲット変数の高精度予測に活用するための新しいAI予測技術の基盤となる数理的原理を明らかにしたものである。具体的には、微分幾何学および力学系理論の埋め込み定理に基づいて、高次元の同時計測ビッグデータの空間情報をターゲット変数の将来の状態変化時系列へと変換する時空間情報変換式を定式化し、これをAIとして実装する具体的手法を構築した。

近年、複雑系の予測を目的として高次元のリカレントニューラルネットワークを動的情報のリザバーとして利用するリザバー計算がAI分野で大きな注目を集めている。さらに、コンピュータの中に大規模なリカレントニューラルネットワークを構築する代わりに、光システム、電子システムなどの物理システムを用いてリザバーを実現する研究も広く行われている。

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