多方向の地震力低減可能なユニット型3次元免震装置を開発

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2022-09-02 日本原子力研究開発機構,富山県立大学,東京電機大学,日本原子力発電株式会社,三菱FBRシステムズ株式会社,株式会社大林組,株式会社川金コアテック,平和発條株式会社

発表のポイント】

  • ナトリウム冷却高速炉においては、他国に比べて厳しい日本の基準地震動を想定した設計を行う必要があり、原子炉建屋への免震システムの導入を検討しています。
  • 従来の免震システムにおいては、主に水平方向の地震力低減を担うものでしたが、上下方向の地震力を低減することができれば更なる耐震性向上が期待できます。
  • そこで本研究グループは、水平方向の地震力低減効果を持つ機器と上下方向の地震力低減効果を持つ機器を1つに統合したユニット型3次元免震装置を開発いたしました。
  • 本ユニット型3次元免震装置を適用することで、耐震性が向上し設計の成立範囲が広がるため、より安全な次世代原子力システムを構築することが可能になります。また、精密機器工場やデータセンターなど一般建築物への応用も期待できます。

開発したユニット型3次元免震装置(1/2縮尺試験体)

【概要】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:小口正範 以下、「JAEA」という)高速炉・新型炉研究開発部門の山本研究副主幹らは、富山県立大学、東京電機大学、日本原子力発電株式会社、三菱FBRシステムズ株式会社、株式会社大林組、株式会社川金コアテック、平和発條株式会社及び株式会社ブリヂストンとともに、水平と上下方向の地震力を低減するユニット型の3次元免震装置を開発しました。

ナトリウム冷却高速炉(以下、高速炉という)は、高い信頼性、経済性等を実現する第4世代原子力システム*1の、有望な技術のひとつです。JAEAではこれまでに高速炉を開発しており、その設計には日本の厳しい基準地震動を想定しています。原子炉建屋にも免震システムの活用を検討しており、水平方向の地震荷重のみならず上下方向にも免震効果を発揮する3次元免震システムの開発を並行して進めてきました。

3次元免震システムには支持機能*2・復元機能*3・減衰機能*4の3つの機能があります。この度、上記3機能を期待どおり発揮するユニット型3次元免震装置を開発しました。本ユニット型3次元免震装置を建屋下部に設置することにより、水平免震機能を維持しつつ、上下方向の地震力の低減効果を図ることができます。また、水平免震機器と上下免震機器を個別に配置する方法に比べて、装置をコンパクトに配置することができ、装置の配置性が向上するため、重量構造物であるより安全な次世代の原子力システムに適用することができます。さらに、本システムは、精密機器工場やデータセンターなど一般建築物の耐震性向上へも応用可能です。

本研究成果は、2022年9月5日付けで日本建築学会大会(および日本機械学会)において「3次元免震装置の研究開発」として発表予定です。

【これまでの経緯、背景】

高速炉は、冷却材の沸点が高いという特徴を活かして熱効率を向上させるため運転時の冷却材温度が軽水炉と比べて高温となります。そのため、高速炉の機器設計では低温から高温の広い温度使用条件における耐熱設計の観点から、構造物の厚さが薄肉構造となる傾向になります。一方、機器に作用する地震荷重に対する耐震設計の観点では、構造物の厚さが厚肉構造となる傾向になります。高速炉の機器設計では、構造物の厚さについて「耐熱設計」と「耐震設計」の相反する要求を考慮して両立させる必要があります。

そのため、薄肉構造でも耐震設計が成立するよう地震荷重の大幅低減に着眼した原子炉建屋への3次元免震システムの導入が検討されてきました。昨今の地震評価における地震動の大きさを考慮すると、大型の原子炉容器の耐震性を向上させるためには、水平方向の荷重に加えて上下方向の荷重を低減できる免震システムが有効であるためです。

高速炉の3次元免震システムでは、図1で示すように今回開発したユニット型3次元免震装置の要素である積層ゴムが主に支持機能と水平方向の復元機能を、皿ばねが上下方向の復元機能を担い、高性能オイルダンパ(2021年度プレス発表済)が水平方向の減衰機能を担います。ユニット型3次元免震装置のメリットとして、水平免震機能と上下免震機能を別置きすることなく建屋下部に設置することで、設置の簡便化とメンテナンスの容易さが格段に上昇すること、があげられます。

図1 高速炉の3次元免震システム概略図

【今回の結果】

これまで、ユニット型3次元免震装置の開発に向けて、積層ゴムや皿ばねユニットといった各要素機器の試験データを取得し、その試験データを反映した地震応答解析を実施してユニット型3次元免震装置の設計成立性を確認してきました。

本装置の開発においては、既存の水平免震装置を用いたシステムに対して、水平方向の地震力低減の性能を全く変えずに上下方向の地震力低減の性能を付与することと、ロッキング*5動を抑制するための付帯設備が不要なシンプルな装置であることを開発要求としています(図2参照)。そのため、各要素機器を組み合わせた状態且つ水平・上下同時に荷重を加えた状態において、確認する必要があります。

図2 水平免震に対する3次元免震の違い(開発要求)

今回、実際に各要素機器を組み合わせた試験を実施しました。水平・上下方向の繰返し載荷試験を実施した結果、図3で示すように上下方向と水平方向の荷重重畳下であっても、水平方向と上下方向にそれぞれ独立かつ安定した荷重−変位関係が得られました。

図3 ユニット型3次元免震装置の水平・上下方向の荷重-変位関係(試験結果)

【今後の展望】

本ユニット型3次元免震装置を原子炉建屋へ適用することにより、耐震性が向上し設計の成立範囲が広がるため、より安全な次世代原子力システムの構築が期待できます。

本成果は、安全な次世代原子力システムに貢献するだけでなく、一般建築物(精密機器工場やデータセンターなど)の幅広い分野での利用も期待されます。

【各研究者の役割】

JAEA:開発目標/地震条件の設定、開発計画策定・評価

富山県立大学:免震システムに関する助言・規格化に向けた検討

東京電機大学:免震システムに関する助言・解析モデルの作成

日本原子力発電株式会社:設計・試験・評価の総括

三菱FBRシステムズ株式会社:免震システムの設計要求設定・設計、原子炉建屋設計

株式会社大林組:免震システムの設計・試験の実施・試験結果分析、建屋設計・評価

株式会社川金コアテック:水平オイルダンパ・摺動材・水平支持構造試験体製作、試験の実施

平和発條株式会社:皿ばね試験体製作、試験の実施

株式会社ブリヂストン:積層ゴム製作

用語説明

*1 第4世代原子力システム:
燃料の効率的利用、核廃棄物の最小化、核拡散抵抗性の確保等エネルギー源としての持続可能性、炉心損傷頻度の飛躍的低減や敷地外の緊急時対応の必要性排除など安全性/信頼性の向上、及び他のエネルギー源とも競合できる高い経済性の達成を目標とする次世代原子炉概念です。

*2 支持機能:
建物の重さを支える機能です。

*3 復元機能:
建物を元の位置に戻す機能です。

*4 減衰機能:
地震の揺れを小さくする機能です。

*5 ロッキング:
住宅などの建築物が地震動を受けて振動する時、建物の骨組みなどは変形せずに、建築物全体が浮き上がる現象をいいます。

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