核融合研究がさらに進展

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核融合研究がさらに進展

2018/04/03 大学共同利用機関法人自然科学研究機構 核融合科学研究所

自然科学研究機構 核融合科学研究所(岐阜県土岐市 所長・竹入康彦)では、平成29年度の研究を終了し、上記3つに代表される研究成果を上げ、核融合研究をさらに前進させることに成功しました。以下に詳細を説明します。

  1. 超伝導プラズマ実験装置・大型ヘリカル装置(LHD)を用いて行ってきたプラズマ実験は、本年4月で20周年を迎えました。平成29年度、LHDは学術上大きな節目となる重水素を用いた実験(重水素実験)を開始し、この第1年次の重水素実験でイオン温度1億2,000万度を達成するなど、期待通りプラズマ性能を向上させることに成功しました。これらの成果に伴い、海外の研究者との共同研究も増加しています。引き続き東濃から世界へ、最先端の研究成果を発信していきます。
  2. 没入型バーチャルリアリティ装置を使って、将来のヘリカル型核融合エネルギー原型炉の設計データを3次元仮想空間に表示することにより、炉内部品の取り付けや取り外しを行うロボットアームの動きを確認するシステムを構築しました。このシステムでは、自分自身が原型炉の中や傍らに立って、アームの動きを確認しながら部品同士がぶつかり合っていないかなどを効率よく検討できます。これにより炉設計研究が一層進展するものと期待されます。
  3. バナジウム合金を高純度化することにより、核融合炉に必要な高温での強度を維持したまま、加工時に割れたり、溶接後に割れやすくなったりするという性質を克服することに成功しました。これにより、高温での運転が可能な、発電ブランケットを製作できる見通しが得られました。

これらの研究成果は、4月4日から6日まで核融合科学研究所で行われる「平成29年度研究プロジェクト成果報告会」において発表されます。

報道資料-その1

20周年を迎えた大型ヘリカル装置実験- 多くの成果を東濃から世界に発信 -

プレスリリース概要

核融合科学研究所が、将来のエネルギー源である核融合発電の実用化を目指し、超伝導プラズマ実験装置・大型ヘリカル装置(LHD)を用いて行ってきたプラズマ実験は、本年4月で20周年を迎えました。この間、数々の重要な研究成果を挙げ、世界の核融合研究を牽引してきました。平成29年度、LHDは学術上大きな節目となる重水素を用いた実験(重水素実験)を開始し、この第1年次の重水素実験でイオン温度1億2,000万度を達成するなど、期待通りプラズマ性能を向上させることに成功しました。今後は高性能化した重水素プラズマを用いた学術研究を展開するとともに、国際的な共同研究をさらに推進し、東濃から世界へ、最先端の研究成果を発信していきます。

研究の伸展

核融合発電を実現するためには、高温・高密度のプラズマを磁場で閉じ込め、長時間保持することが必要です。核融合科学研究所は、核融合発電の実現を見通せるような条件のプラズマを用いた実験を行うために平成2年、岐阜県土岐市において、我が国独自のアイデアに基づく超伝導プラズマ実験装置・大型ヘリカル装置(LHD)の建設を開始しました。8年の建設期間を経て平成9年12月に完成したLHDは、平成10年3月31日、最初のプラズマ点火に成功し、以降20年間、名実ともに世界のヘリカルプラズマ研究のフロントランナーとしてプラズマ物理・核融合研究の発展に貢献してきました。
LHDでは、これまで主に軽水素を用いたプラズマ実験を積み重ね、プラズマの性能を向上させてきました。軽水素実験での記録は、イオン温度9,400万度、連続運転48分などです。これらの記録は、加熱電力(パワー)の増強を主とする、装置の改良、最適化等に加えて、様々な学術研究の進展によって達成できました。例えば、プラズマの高性能化を阻む不安定性については、閉じ込め磁場の形状や加熱方法を工夫することで抑制したり回避したりしてきました。

そして研究所では、平成29年3月から重水素を用いた実験(重水素実験)を開始し、この第1年次の重水素実験でイオン温度1億2,000万度を達成しました。これは、核融合発電の実現に必要な3つの条件の1つであり、LHDがこの値を達成したことは、ヘリカル型核融合炉実現に向けた見通しをもたらすという極めて大きな意味を持っています。トカマク装置では、重水素を用いることでプラズマの閉じ込めが改善し、プラズマの性能が向上することが報告されていましたが、LHDの重水素実験によって、定常性に優れたヘリカル装置においてもトカマク装置同様、閉じ込め改善効果があるということを明確に示しました。

図1.(左)加熱パワーの変遷と(右)イオン温度および電子温度の変遷
温度は必ずしも加熱パワーに比例して上昇するわけではありません。プラズマの性能向上は、多くの学術的な進展によって支えられています。

今後の展開

重水素実験によって、核融合炉の条件に近い高性能なプラズマを用いた研究を行うことが可能になりました。今後は、重水素プラズマを用いることで研究をさらに高度化し、核融合発電の実現に向けた様々な課題に取り組んでいきます。例えば、イオン温度1億2,000万度を記録したプラズマの電子温度は4,100万度程度です。より核融合条件に近づけるためには加熱方法や運転方法の最適化を進め、これをイオン温度に近い値まで高めていかなければなりません。また、プラズマ内で生成される高エネルギー粒子(イオン)はプラズマを加熱する役割を担います。高エネルギー粒子(イオン)の閉じ込めについて重水素実験で直接計測が可能となったことから、これらについても研究を加速させていきます。さらに、「なぜ重水素プラズマは軽水素プラズマより性能がよいのか」は、長年の未解決問題です。この問題を解明できれば、プラズマのさらなる高性能化につなげることができます。将来の核融合炉の実現への見通しを確立するために、このような様々な研究を重水素実験によって展開していきます。

LHDで得られた研究成果は、数々の論文や国際会議等で世界に発信され、多くの注目を集めてきました。研究の遂行には、世界中の研究者の協力も重要な役割を担っています。そのため、研究所は国内外の大学や他の研究機関と協定を結び、共同研究を進めてきました。平成29年度末現在、研究所は世界の研究機関等と、合計で29の国際学術交流協定を締結しています。最近の例では、平成28年度にはアメリカのウィスコンシン大学マディソン校工学部、タイのチェンマイ大学及びタイ国家原子力研究所、平成29年度にはポーランドのプラズマ物理・レーザーマイクロ核融合研究所、ロシアのサンクトペテルブルク工科大学、中国の北京大学及び西南交通大学と、それぞれ国際学術交流協定を締結し、それぞれの研究機関の特色ある研究課題をLHD等の研究に適用すべく、共同研究を進めています。また特に、重水素実験開始によって、定常性に優れたヘリカル装置で、さらに高性能のプラズマの研究が進展したため、以前にも増して海外の研究者からの関心が高まっています。LHDの実験提案のうち、海外からの申し込みが占める割合は、以前の8%から重水素実験の開始で14%に増加しました。その結果、平成29年度は、延べ約220名の海外からの研究者や学生等が研究所に来所するなど、国際的な実験装置としてのLHDの存在感はさらに増しています。今後も、国内はもちろん、国際共同研究もさらに活性化させ、核融合研究の最先端の成果を東濃から世界に発信していきます。

【用語解説】

※1 ヘリカル型
プラズマが磁力線に巻き付いて運動するという性質を利用して、磁力線で編んだカゴ状の磁気容器内に高温・高密度のプラズマを閉じ込める、磁場閉じ込め方式の1つ。ドーナツ型のプラズマ閉じ込め容器の周りにらせん状のコイルを巻いて、それに電流を流してプラズマ閉じ込めに必要な捻れた磁場構造を作る方式。パルス運転(短時間運転)となるトカマク方式に比べ、定常運転性能に優れる。

※2 重水素実験
重水素を用いて生成したプラズマを用いる実験。重水素は、軽水素と同じ電荷を持っており、化学的な性質は同じだが、質量が軽水素の2倍と重く、同位体と呼ばれている。トカマク装置における実験から、軽水素プラズマよりも、重水素プラズマの方がより高い閉じ込め性能が得られると言われている。また、将来の核融合プラズマで重要となる、高エネルギー粒子の閉じ込め研究に必要な実験を行うことができる。

※3 トカマク型
ヘリカル型と同じく、磁場閉じ込め方式の1つ。コイルで作られるドーナツ状の主磁場に加え、プラズマ自身に電流を流し、その電流が作る磁場で、プラズマ閉じ込めに必要な捻れた磁場構造を作る方式。捻れた外部コイルが必要ないため、ヘリカル方式に比べ、コイルの構造が単純となる。

報道資料-その2

バーチャルリアリティ空間の中でヘリカル型原型炉を組み立てる

プレスリリース概要

没入型バーチャルリアリティ装置を使って、将来のヘリカル型核融合エネルギー原型炉の設計データを3次元仮想空間に表示することにより、炉内部品の取り付けや取り外しを行うロボットアームの動きを確認するシステムを構築しました。このシステムでは、自分自身が原型炉の中や傍らに立って、アームの動きを確認しながら部品同士がぶつかり合っていないかなどを効率よく検討できます。これにより炉設計研究が一層進展するものと期待されます。

研究の背景

研究所では、将来の核融合炉の開発に向けて、「ヘリカル型原型炉」の設計開発を進めています。ヘリカル型原型炉は、極めて多くの機器から構成され、非常に複雑な構造を持ちます。その設計には、多くの時間と労力を必要とするため、設計を効率良く進めることのできるシステムの開発も重要です。

ヘリカル型原型炉の設計では、建設時の組み立てや稼働後のメンテナンスなども考慮する必要があります。例えば、炉内の部品の取り付け・取り外しや移動を行う際、他の部品とぶつかったりしないかをあらかじめ検討して、部品の位置や組み立て工程・メンテナンス手順を決めなければいけません。また、メンテナンスはロボットアームを利用して行いますが、ロボットアームの設計とそれを動かす手順の検討も必要です。これまでの設計は、設計用のソフトウェアを使って、通常のパソコンのディスプレイのような2次元ディスプレイに表示された情報をもとに行われてきました。しかし、この方法では、本来3次元の情報を2次元に投影するために奥行き情報が失われることになり、炉内部品の位置やロボットアームの動きを検討することは大変難しく、検討結果を設計に反映することは簡単ではありませんでした。

新しい研究成果

研究所の数値実験炉研究プロジェクトでは、没入型バーチャルリアリティ装置CompleXcopeを使って、ロボットアームを含めた原型炉設計の設計データをバーチャルリアリティ空間に投影して、炉内部品の位置関係やロボットアームの動きを、3次元で正確に確認できるシステムを構築しました。
没入型バーチャルリアリティ装置は、仮想空間の中に自分自身が入って、あたかも目の前にモノが存在しているかのように感じることができる装置です。また、自分自身が動いたり、コントローラーを操作したりすることによって、視点をいろいろと変えることもできます。今回開発したシステムを使うことで、自分自身が原型炉の中や傍らに立って、部品の取り付けや取り外し、ロボットアームの動きを、あらゆる方向から確認することができます。あるいは自分自身の「手」を仮想空間に投影することで、部品をつかんで動かしたりすることもできます。これにより、炉内部品の位置関係やロボットアームの動きを正確に把握し、部品同士がぶつからないかどうか、ロボットアームの動きやメンテナンス手順が適切かどうか等を、効率よく検討できるようになりました。

今回の研究成果によって、複雑な構造を持つヘリカル型原型炉の設計研究が加速すると期待されます。この成果は、平成29年10月に東京電機大学で開催された国際会議「日本シミュレーション学会主催第36回シミュレーション技法に関する国際会議(The 36th JSST Annual International Conference on Simulation Technology(JSST2017))」で口頭発表され、学会論文集に掲載されるとともに、優秀発表賞(Outstanding Presentation Award)を受賞しました。

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