セルロースナノファイバーの安全性評価手法に関する文書類を公開

ad

関連事業者の自主安全管理を支援し、CNFの社会実装を後押し

2020-03-26 産業技術総合研究所

ポイント

  • セルロースナノファイバーの安全性を評価するための文書を公開
  • セルロースナノファイバーを取り扱う事業者などの安全管理を支援
  • セルロースナノファイバー部材の社会実装を後押し

概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構【理事長 石塚 博昭】(以下「NEDO」という)、王子ホールディングス株式会社【代表取締役社長 加来 正年】、第一工業製薬株式会社【代表取締役会長 兼 社長 坂本 隆司】、大王製紙株式会社【代表取締役社長 佐光 正義】、日本製紙株式会社【代表取締役社長 野沢 徹】は共同で、NEDOの委託事業「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」によって、セルロースナノファイバー(CNF)を取り扱う事業者などの安全管理を支援することを目的に、CNFの安全性評価手法に関する以下の文書類(セルロースナノファイバーの検出・定量の事例集、セルロースナノファイバーの有害性試験手順書、セルロースナノファイバー及びその応用製品の排出・暴露評価事例集)を作成し、本日公表しました。これらの文書は産総研のウェブサイト(https://www.aist-riss.jp/assessment/45276/)からダウンロードできます。

エネルギー・環境領域の最近の研究成果の概要図

図1 セルロースナノファイバーの安全性評価手法に関する文書類の表紙

社会的背景

CNFは軽量、高強度、チキソ性などの特徴を持つ新しいナノ材料であり多様な製品の応用開発が進行しています。CNFの安全性が評価されることによって、その社会実装がさらに促進されることが期待されます。しかし、CNFは粘性、透明性などのこれまでにない特徴を持つ新しいナノ材料であるため、その安全性を評価する手法が確立していません。そこで、CNFの安全性を評価するために、検出・定量手法、有害性試験手法、排出・暴露評価手法が求められていました。

研究の経緯

CNFの安全性評価手法開発として、検出・定量手法、有害性試験手法と排出・暴露評価手法の開発を行いながら、代表的なCNFのデータを取得してきました。この成果はNEDOの委託事業「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/CNF安全性評価手法の開発(2017~2019年度)」の支援により得られました。

公開文書の内容

(1)「セルロースナノファイバーの検出・定量の事例集」

CNFの安全性評価を行うには、環境試料や生体試料中のさまざまな有機物や固形物の存在下でも微量なCNFを検出・定量できる手法が必要です。しかし、CNFは、植物起源の有機物であること、特徴的な元素を持たないこと、高分子であること、吸光度が小さいことなどから、検出・定量が難しく、確立した検出・定量手法がないのが現状です。そこでCNFの検出・定量手法として、酸分解法、酵素分解法、熱分解法の適用・開発を進めてきました。本書は、それらの手順や測定事例、注意点などについてまとめたものです。

(2)「セルロースナノファイバーの有害性試験手順書」

CNFの有害性試験のための試料調製、特性評価、吸入影響試験、経皮影響試験などに関する手順をまとめたものです。特性の異なるCNFを被験材料に、これらの手順に基づいて得られた評価結果や知見について収載し、CNFを取り扱う事業者や関連する試験機関が利用しやすいように構成しました。なお、本書に準拠して得られた試験結果は、CNFの有害性すべてについて保証するものではありません。

(3)「セルロースナノファイバー及びその応用製品の排出・暴露評価事例集」

CNFの製造現場調査や模擬排出試験の実施により、CNFの製造・使用時の排出・暴露や、CNF複合材の加工・摩耗・劣化時の排出・暴露を評価しました。また、将来的に実用化されるであろうCNF応用製品を整理し、代表的な製品ケースについて、暴露シナリオに基づく評価を行いました。さらに、CNFが環境中で使用・廃棄された場合の安定性や分解性を評価するために、生分解性試験を行いました。本書は、それらの評価事例をまとめたものです。

今後の予定

これら文書類を活用してCNFを取り扱う素材メーカーや消費者製品メーカーなどの安全管理を支援し、CNF部材の社会実装を後押しします。

用語の説明

◆非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発(事業期間:2013年度~2019年度)
研究開発項目:非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/木質系バイオマスから化学品までの一貫製造プロセスの開発/CNF安全性評価手法の開発

実施期間:2017年度~2019年度

◆セルロースナノファイバー(CNF)
パルプなどの植物繊維をナノメートルレベルまでほぐすと得られる、径が3~100ナノメートルのセルロース繊維です。
◆チキソ性
静止状態では高粘度であるゲル状物質が、ミキサーで攪拌したり容器を振ったりしてせん断応力がかかることでサラサラになり、静置するとまた元に戻る性質。チキソトロピーともいいます。
ad

0502有機化学製品
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました