アルマ望遠鏡、39個の「見えない銀河」を捉える~宇宙進化理論に謎を突きつける楕円銀河の祖先たち

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2019-08-08 国立天文台

アルマ望遠鏡で観測された、110億年以上過去の宇宙に存在する巨大銀河の想像図アルマ望遠鏡で観測された、110億年以上過去の宇宙に存在する巨大銀河の想像図(図中にある4つの大きい銀河)。多量の塵(ちり)を含み、その中で爆発的に星が生み出されており、やがて巨大楕円銀河へと進化していくことが予想されます。(Credit: 国立天文台) オリジナルサイズ(2.2MB)

110億年以上遡った過去の宇宙に、星を活発に生み出している39個もの巨大銀河が、アルマ望遠鏡による観測で発見されました。典型的な宇宙膨張に従った銀河進化に関する多くの理論では、初期の宇宙に星形成中の巨大銀河がこれほど多く存在することは想定されておらず、この観測結果は宇宙や銀河の進化の理解に大きな謎を投げかけるものです。

人間の眼で見える可視光線や、それよりもわずかに波長が長い近赤外線で観測された天体は、その美しい姿を私たちに示してくれますが、宇宙の歴史や天体の素性を理解するためにはそれだけでは不十分です。特に、塵(ちり)を多く含む銀河からの可視光線や赤外線は塵に吸収されてしまい私たちに届きません。また、宇宙初期の天体からの可視光線は、宇宙の膨張によって波長が引き延ばされ、近赤外線よりも長い波長として観測されます。アルマ望遠鏡は、塵が出すサブミリ波と呼ばれる赤外線よりも長い波長の光を捉え、詳細に研究できるという特徴があります。

東京大学/国立天文台の王 涛(ワン・タオ)特任研究員らの研究チームは、可視光線と近赤外線で観測するハッブル宇宙望遠鏡の画像には写っていないが、それよりも少し波長が長い赤外線で観測するスピッツァー宇宙望遠鏡の画像には写っている天体63個を観測対象として選び出しました。そして、アルマ望遠鏡を用いてそれらを観測し、39個の天体からサブミリ波を検出しました。解析の結果、39個の天体はいずれも、110億年以上前の宇宙に存在する星形成中の巨大銀河であることが分かりました。銀河の質量は太陽の数百億倍から1千億倍と、天の川銀河と同等かやや小さい程度ですが、昔の宇宙では例外的に大きいものです。星を生み出すスピードも天の川銀河の100倍以上と推定されています。やがてこれらの銀河は、巨大楕円銀河へと進化していくものと考えられます。

これまでの宇宙膨張モデルに基づく理論的予測では、このように星を活発に生み出す巨大な銀河は、宇宙の初期には存在できないと考えられてきました。今回の観測によって、銀河進化の理解にはまだまだ未解明な点が多いことが浮き彫りになりました。アルマ望遠鏡や近未来の新しい観測機器でのさらなる観測研究が待望されます。

この観測成果は、T. Wang et al. “A dominant population of optically-invisible massive galaxies in the early Universe” として、2019年8月7日付の英国の科学雑誌『ネイチャー』オンライン版に掲載されました。

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