日蘭共同開発の新型超伝導受信機DESHIMAが拓く、電波天文学の新航路

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2019-08-06  国立天文台

写真:アステ望遠鏡に搭載されたDESHIMAと開発チーム。アステ望遠鏡に搭載されたDESHIMA(左の円筒形のものが、DESHIMAが入った真空冷凍容器)と開発チーム。(Credit: Robert Huiting(オランダ宇宙研究所)) オリジナルサイズ(233KB)

最先端の超伝導技術を駆使した全く新しい仕組みの電波受信機「DESHIMA」が、チリのアステ望遠鏡に搭載され、天体からの電波を観測することに成功しました。実証に成功したDESHIMAの世界初の技術を応用し、今後新たな観測研究が花開くことが期待されます。

オランダのデルフト工科大学、名古屋大学、東京大学、国立天文台などの研究者から成る国際研究チームは、非常に広い周波数帯域の電波を一度に捉え、周波数帯ごとの強度を測定することができる新しい受信機「DESHIMA」を開発しました。この受信機は、電子回路と超伝導素子の組み合わせで構成された全く新しい仕組みの観測装置です。DESHIMAの名称は、江戸時代にオランダと日本の交流の窓口であった長崎県の出島にもちなんでいます。DESHIMAを使った観測では、複数の分子や原子からの電波を一度に測定できます。さらに、宇宙膨張による周波数の変化量を精度よく測ることができなかった天体についても、その変化量を正確に求めることが可能になります。

DESHIMAは、国立天文台がチリで運用するアステ望遠鏡に取り付けられ、2017年10月から11月にかけて初めての観測が行われました。そして、星雲に含まれる複数の分子を同時に観測したり、遠い銀河が発する電波の周波数の変化量を観測したりすることに成功しました。新技術が実証されたのです。

現在のDESHIMAは「1画素」で構成されていて、空のある1点しか一度に観測できませんが、回路と素子を多数並べることで広い範囲の電波強度の違いを同時に測定する「カメラ」として構築することも可能です。実現すれば、さまざまな距離にある銀河からの周波数の変化量を一度に測定できるため、宇宙の3次元地図をより効率的に作り上げることができるでしょう。

宇宙初期の銀河ではどのように星ができていたのか、銀河がどのように成長してきたのか、こうした謎に立ち向かう強力な装置として、DESHIMAは大きな期待を受けています。

この観測成果は、A. Endo et al. “First light demonstration of the integrated superconducting spectrometer”として、2019年8月5日付の英国の天文学専門誌『ネイチャー・アストロノミー』に掲載されました。

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