災害と社会課題に対処するレジリエンスアプローチを提唱

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持続可能な社会を創造する道しるべとして

2019-03-08 京都大学

清水美香 学際融合教育研究推進センター特定准教授は、自然・社会環境変化におけるレジリエンス研究の成果として、災害や複雑な社会課題に対処し、持続可能な社会を創造するための「レジリエンスアプローチ」を提唱しました。

レジリエンスとは、「大きな変化や逆境にあってもしなやかに回復する力、変化する力、発展する力」を指し、より専門的には、「人、森、都市といったシステムが変化に対応し、発展しつづける力(または器量)」を意味しています。

本研究は、従来のように生態・社会・人間の個別のレジリエンスではなく、自然・社会・人間システムに共通するレジリエンスの構造を明示しました。さらに、その機能を「リンケージ(繋がり)」、「プロセス」、「時間」、「スケール」の4つの位相に分類してレジリエンスが機能する条件を明らかにし、レジリエンスアプローチとして集約しました。

本アプローチは、複眼的・多元的な思考に基づいてレジリエンスを組み立てるものです。複雑化する自然災害や、持続可能な社会を実現するための複合課題群に対処するための、問題解決型の実践的ツールとして活用されることが期待されます。

本研究成果は、2019年2月5日に、「Nexus of Resilience and Public Policy in a Modern Risk Society」として出版されました。

図:レジリエンス組み⽴てのための森と⽊の視点マトリックス

詳しい研究内容について

最新のレジリエンス研究の成果を刊行
”Nexus of Resilience and Public Policy in a Modern Risk Society”
―持続可能な社会の道しるべを描く―
概要

京都大学学際融合教育研究推進センター 清水美香 特定准教授が、複雑で不確実な時代における持続可能な 社会の道しるべを描いたレジリエンス研究の最新成果を研究書”Nexus of Resilience and Public Policy in a Modern Risk Society”にまとめ、2019 年 2 月 5 日に Springer から出版しました。
清水特定准教授は、米国で長年自然 社会環境変化におけるレジリエンスの研究を行い、その後継続的に京 都大学でも研究を続けてきました。研究をつらぬくキーワードは、現代の社会問題解決に必須の 「システム思 考」「 デザイン思考」「 システムズアプローチ」などで、今そしてこれからの持続可能な社会創りに役立つ成果 を生み出しています。本書は、自然 社会 人間システムに共通するレジリエンスの構造と、レジリエンスが 機能する条件を明らかにし、レジリエンスアプローチとして集約しています。複雑化する自然災害や、SDGs (国連の 「持続可能な開発目標」)が示す持続可能な社会の複合課題群を解決するためのツールとして活用さ れることが期待されます。

本書”Nexus of Resilience and Public Policy in a Modern Risk Society”(左)と、同じテーマを扱っ た和書『協働知創造のレジリエンス』の書影(右)1.背景
本書” Nexus of Resilience and Public Policy in a Modern Risk Society”は、著者清水美香が、共著者 Allen Clark と共に近年の大きな環境変化 災害を背景に 10 年以上にわたって行ってきたレジリエンス研究の集大 成です。
遥か昔、科学者アルベルト アインシュタインが 「私たちが抱えている問題は、その問題を作り出した同じ 思考レベルでは解決することはできない」と述べましたが、本書はその見方を具現化しています。従来のレジ リエンス本のように生態、社会、人間の個別のレジリエンスではなく、自然システム、社会システム、人間シ ステムに共通するレジリエンス、またはそれらを繋ぐ複合的 包括的 創造的なレジリエンス思考に焦点を当 て、さらに複雑な社会課題の解決方向に向けるためのレジリエンスアプローチを打ちだすダイナミックな内容 となっています。

2.研究手法・成果
本書では自然・社会・人間システムに共通するレジリエンスの構造を明示し、その機能を 「リンケージ」・ 「プロセス」・「 時間」・ 「スケール」の4つの位相に分類してレジリエンスが機能する条件を明らかにし、レジ リエンスアプローチとして集約されています。このアプローチは複眼的かつ多元的な思考に基づくため、複雑 化する自然災害や、SDGs(国連の 「持続可能な開発目標」)などが示す持続可能な社会のための複合課題群 に対処するための、問題解決型のツールとして活用することができます。

3.波及効果、今後の予定
今後は、様々なステークホルダーが持続可能な社会を自ら創造するための社会的課題解決志向ツールとして レジリエンスを如何に社会実装するか、それを如何に実際の持続可能な社会の各課題に適用するかについて、 ステークホルダーを巻き込んで研究し、SDGs 実施への具体的かつ明確な道筋に結び付けていきます。
例えば、2016 年5月にロックフェラー財団の「 100 のレジリエント シティ」に選定された京都市は 「都市 のレジリエンス」を「 平常時の予防 強化力,危機発生時の危機対応力,危機からの創造的再生力を合わせた 都市の能力」と定義づけ、レジリエンス戦略の策定作業を進めています。
なお、本研究については、2015 年に出版された和書 『協働知創造のレジリエンス~隙間をデザイン~』 (清 水美香著、京都大学学術出版会)でも詳述されています。

4.研究プロジェクトについて
関連の研究/実践/教育活動は、 「レジリエンスイニシアティブ」として集約し、https://resilienceinitiative.com/ に掲載しています。

<用語解説>
レジリエンス: 広義には 「大きな変化や逆境にあってもしなやかに回復する力、変化する力、発展する力」を 指す。より専門的には、 「人、森、都市といったシステムが変化に対応し、発展しつづける力(または器量)」 を意味する。

<研究者のコメント>
人・社会・自然にはそれぞれ潜在的レジリエンスを備えていますが、相互のレジリエンスに支えられてこそ、 それぞれのレジリエンスを育てられるという関係にあると捉えることが、持続可能な社会を考える上での第一 歩になります。またレジリエンスアプローチの本質は 「異なるものからその関係性や間にあるものを観察し、 何が欠けているのかを観察すること」にあります。こうした思考方法や視点を通して、物事を注視すると、今 まで気づかなかったアイデアや問題解決方法が浮かび上がってきます。ただし、これはテクニックや知識を得 るだけでは不十分でしょう。その思考方法や視点を 「体得する」ことが不可欠です。そのために日常の現場、 教育、実践にこうした思考方法や視点を様々なプロセスや仕組みの中に浸させていくことが欠かせません。こ のためより多くの方々に 体得」いただけるよう、研究 実践を一体として今後も進めていきます。持続可能 な社会は、そこに生きる人それぞれがレジリエンスを育む素養を有しているかにかかっています。こうした取 り組みにより多くの人が関わり、投げた石が波打って、次に広がっていくことを願います。

<出版物タイトルと著者>
タイトル:”Nexus of Resilience and Public Policy in a Modern Risk Society”
著 者:Mika Shimizu, Allen L. Clark 出 版 社:Springer
出版日時:2019 年 2 月 5 日
ISBN:978-981-10-7361-8(Springer, 2019)
U R L:https://link.springer.com/book/10.1007%2F978-981-10-7362-5

<目次>
●Front Matter Pages i-xiii
●Introduction: Through Innovative Dimensions, Pages 1-11
●A Modern Risk Society and Resilience-Based Public Policy: Structural Views, Pages 13-31
●Resilience-Based Approaches and Public Policy: Operational Views, Pages 33-52 ●Nexus of Resilience and Public Policy: Tohoku Disaster Cases, Pages 53-69
●Nexus of Resilience and Public Policy: Case of Hurricane Sandy in New York, Pages 71-91
● Linkages in Boundaries for Resilient Societies Through Local to Global Levels: Roles of ResilienceBased Public Policy, Pages 93-114
●Resilience-Based Public Policy/Approaches Assessment Framework, Pages 115-126
● Advanced Technologies in a Modern Risk Society: Role of Resilience-Based Approaches and Public Policy, Pages 127-136
●Conclusions, Public Policy Recommendations and Pathway Forward, Pages 137-145

<関連文献>
清水美香『協働知創造のレジリエンス~隙間をデザイン~』(2015 年、京都大学学術出版会)
U R L:http://www.kyoto-up.or.jp/book.php?id=2015&lang=jp
ISBN:9784876982004

<参考図>

図 レジリエンス組み立てのための森と木の視点マトリックス

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