第4次産業革命を生き抜くための生産性向上 自治体の取り組み紹介

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2019-08-09 経済産業研究所

岩本 晃一上席研究員(特任)

本稿では、筆者が主催する「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関する研究会」に参加する地方自治体による地元中小企業へのIoT導入支援事業の取り組みについて紹介したい。本研究会は、東京で行っているいわばモデル研究会あり、ここだけで日本全国の中小企業に対してIoT導入支援活動をするのは不可能である。そのため、当研究会をモデルとしてもらい、各自治体においても類似の研究会が発足し、個々の地域ごとにIoT導入支援活動が行われ、それにより、日本全体にIoT導入支援活動が普及拡大する。それは研究会発足当初からの期待であった。研究会発足から2年を経て、以下に述べる自治体において、予算が確保され、何らかの取り組みが開始されている。これらの取り組みがうまくいけば、来年にはもっと増え、さらに翌々年には、もっと増えるといった形で、全国に拡大し活動が展開されることを期待している。このようにして初めて日本全体の99.7%を占める中小企業の生産性・競争力が底上げされるのである。

1. 神奈川県

神奈川県では、地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所が中心となってIoTの普及・導入を進めている。代表的な支援内容としては、「IoT研究会事業」が挙げられる。これは「地方創生加速化交付金」を活用し、中小企業・通信業者・公的機関の3者を交え、プラットフォームを形成したものである。その際、例えば、評価用搬送システムを通信ネットワークを通じてタブレットで観測できるような技術システムを、IoTテストベッドで紹介している。また「IoT導入/実用化検証事業」として、ユースケースの実例紹介も併せて行っている。例えば、生産設備のスマートメンテナンスを実現するためにこの研究会に参加した向洋技研(相模原市)のケースを紹介しよう。溶接機を販売する同社では販売台数の増加に伴って、故障の際のメンテナンス対応・予防保全が求められた。そこで制御装置の持つ稼働状況や各センサーのデータをIoTでクラウドに集約し、故障の発生を予測するシステムを構築した。効率的なメンテナンスの実施で予防保全が格段に進むと考えられる。

2. 茨城県

茨城県では、平成30年度予算額を4900万円とし、「中小企業IoT等自動化技術導入促進事業」を積極的に推進している。具体的には、IoT導入の一貫した支援として、IoTへの理解を広く促進する普及啓発や、IoT導入の計画策定や課題解決を行うIoT専門家の派遣、IoTやロボットを実際に体験できる「模擬スマート工場」を整備し、導入の検討や実証実験の場として提供するほか、ロボットやネットワークの人材育成研修などを実施している。導入事例として、「IoT活用・導入事例集」を作成しており、そのうち、いがり産業(笠間市)では、稼働設備と成形機をネットワークでつなぎ、生産管理システムと連携することで現場の見える化を実現している。同社の次の目標は、得られたデータをうまく活用し、スマート工場の実現を今後目指していくことだという。

3. 広島県

広島県では、IoT活用施策の事業構想として、AI/IoT技術を組み込んだ独自システム・サービスの開発を行う「実証実験の実施」を目指している。そして、その実験結果を活用してビジネスマッチングを図り、商用サービスへの移行を目指す「商用・市場化への展開」に直接結びつけることで、実利的な情報公開を行っている。またこうした技術を利用するためには当然、人材育成も不可欠である。AI/IoTの技能蓄積を目指して専門者養成も並行している。以上の取り組みを推進する機関として、県は新たに「IoT研究コンソーシアム(仮称)」を設置し、各施策の具体化を進めている。さらには、産官学の連携を図るAI/IoT実証プラットフォームとして「ひろしまサンドボックス」構想が進行中だ。異なるプラットフォーム間で有機的なデータ結合を行い、新しいサービスを創出していくことが狙いである。3年間で10億円規模が投じられる予定で、国内でも最大級のプラットフォームとなるだろう。AI/IoTビッグデータなどの最新技術によって新たなソリューションを創り出すための技術やノウハウを呼び込むオープンな実証実験プラットフォームとしての役割に期待が集まっている。平成30年以降の本格的な事業計画のスタートを目指して、企業・自治体との連携が進められている。さらに今年度、経済産業研究所の取り組み(IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関する研究会)を参考に、広島においても「ひろしまIoT実践道場」という名称での同様の取り組みを開始した。

4. 熊本県

熊本県では、IoT推進ラボをはじめとして多くの計画が進行中だ。同県では、IoTを活用したアイデアの事業化に対して「事業化補助金(100万円/件)」を、また高い付加価値を創出し、地域経済を牽引する事業を対象に「地域未来投資促進補助金(5000万円/件)」を交付するなどIoT導入に取り組む企業への支援を積極的に展開している。

さらに、「IoT導入モデル企業支援事業」として、県産業技術センター・地元ITベンダー・県産業支援課で構成される支援チームがIoT導入を目指す企業の課題解決を図るべく支援を行っており、そのプロセスを県内企業に水平展開していくこととしている。

また他の地方公共団体とは異なる珍しい取り組みとして、外国人等企画室がある。外国人留学生等を県内企業とネットワークで結び、異文化融合や協働の中から、IoTを活用した新たなビジネスアイデアの創出を行っている。ここで提案されたアイデアは、前述した事業化補助金などを活用して、県内企業が事業化することを目指している。

その他の取り組み事例として、「IoTスクウェアくまもと」の開設が挙げられる。これは県がNTT西日本と連携して、平田機工(熊本市)の遊星歯車の自動組み立てラインなど、最先端のIoT機器のユースケースを紹介し、人材育成や普及啓発の場として活用している。併設されているセミナールームでは、IoT研修なども開催されている。

5. 群馬県

群馬県産業経済部は、中小企業へのIoT導入支援事業を実施している。産官学連携体制を整備するため、「群馬県IoT推進研究会」が設置され、中小企業や事業者では個別対応が困難なIoT/AI技術の導入を、産官学が連携することでサポートする。同会の活動は、主に①研究開発、②情報発信、③人材育成に集約されている。特にものづくりの分野で、「製造現場へのIoT/AI技術の有効活用」をテーマに、産業技術センターが中心となってこの事業を推し進めている。具体的な検討にあたっては、幅広い知識と経験が必要であるため、産業技術センター職員、大学等有識者、システム関連企業などが参加する「支援チーム」を企業に派遣し、意見交換や助言などを行っている。今年度は既に県内中小企業5社に支援チームを派遣している。各企業の身の丈に合ったIoT導入を推進する方針のもと、その時点での企業の成熟度に即した導入・活用を提案している。また、同会が推進する産業技術センターとの共同研究では、参加8企業は、20の事業テーマについて競争的資金を獲得している。

6. 栃木県

栃木県産業技術センターでは、「北関東デジタルものづくりネットワーク」を形成している。ものづくり企業における製品の複雑化、試作・開発期間短縮への対応強化に向けて、「デジタルものづくり」の技術支援やIoTの活用を促進させることが目的だ。北関東三県の公設試験研究機関・企業・大学等高等教育機関・金融機関・産業技術支援機関をネットワーク化し、域内中小企業の課題解決を目指している。こうした取り組みに加えて、研究会や技術者研修会の開催も積極的に行われている。例えば、「デジタルものづくり研究会」では、X線CT三次元測定機や非接触三次元デジタイザなどデジタルものづくり機器について見学や意見交換を行っている。参加企業への技術移転や研究会の活動は今後も続いていくという。本センターではネットワーク構成機関と連携した支援の取り組みを引き続き推進することとしている。

2019年1月25日 生産性新聞に掲載

2019年8月9日掲載

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