半導体ナノ粒子の光吸収効率の増加メカニズムを解明

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高効率な太陽電池や光検出器へ期待

2018/08/22 京都大学

田原弘量 化学研究所助教、金光義彦 同教授らの研究グループは、直径数ナノメートルの半導体ナノ粒子が、光を吸収する過程で複数の量子力学的な状態を同時に作ることで、光の吸収効率が高くなることを発見しました。

本研究成果は、2018年8月9日に英国の科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

ナノ粒子はサイズを変えることで吸収波長を制御できるため、太陽電池や光検出器の光吸収材料として注目を集めています。本研究における光吸収メカニズムの基礎的な理解は、太陽電池や光検出器の高効率化につながると期待されます。

概要

半導体ナノ粒子は量子ドットとも呼ばれ、ディスプレイの発光材料として利用されています。また、太陽電池や光検出器の光吸収材料として利用する研究も盛んに行われています。これまでの研究で、光吸収によってナノ粒子内に生み出される電子と正孔(電子が抜けてできた空席)の数は、吸収する光子(光の最小単位)の数によって決まることが分かってきました。しかし、ナノ粒子が光を吸収する過程において、吸収効率を支配するメカニズムは明らかになっていませんでした。

本研究グループは、ナノ粒子の光吸収過程を正確に測定するために、2本のレーザーパルス光を利用した実験を行いました。1本目のパルス光で、吸収させる光子の数と、ナノ粒子内に生成される電子と正孔の数を制御し、次に2本目のパルス光によって、初めに生成した電子と正孔の数に応じた吸収効率を精密に測定しました。その結果、エキシトン(電子と正孔から成る状態)を1個ずつ段階的に作り出した場合に比べて、複数のエキシトンを同時に作り出した場合にはその生成効率が高くなることを明らかにしました。

さらに、この光吸収による生成効率の向上には量子力学的な性質である「コヒーレンス」が重要であり、生成したエキシトンの数によって吸収効率が決まることを発見しました。本研究成果は、同時に多数のエキシトンを高効率に生成できることを利用した新しい光電変換現象の発見につながるものと考えられます。

図:半導体ナノ粒子の光吸収過程において、ひとつひとつの光を吸収するよりも、同時に光を吸収する場合の方が、その効率が大きく増加することを発見。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-018-05698-0

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/233944

Hirokazu Tahara, Masanori Sakamoto, Toshiharu Teranishi, Yoshihiko Kanemitsu (2018). Quantum coherence of multiple excitons governs absorption cross-sections of PbS/CdS core/shell nanocrystals. Nature Communications, 9:3179.