亜麻糸だけで作るトランジスタと電子デバイス

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(Engineers make transistors and electronic devices entirely from thread)

2019/8/21 アメリカ合衆国タフツ大学

亜麻糸だけで作るトランジスタと電子デバイス

・ タフツ大学は、亜麻糸だけでトランジスタを作製することに成功し、ファブリックに織り込んだり、皮膚の上に装着したり、また理論上では医療診断のモニタリング用に埋め込んだりすることが可能となった。
・ トランジスタは、論理ゲートや小規模集積回路と相互接続。この完全にフレキシブルな電子デバイスは、様々なアプリケーションの異なる形に適合し、機能を損なわない。
・ 糸トランジスタ(TBT)では、シンプルな全て糸ベースの論理回路や集積回路が作製可能。回路は、既存のフレキシブルデバイスの固い構成部分に置き換えることができ、糸ベースのセンサーと組み合わせると、完全にフレキシブルな多重化デバイスができる。
・ フレキシブルエレクトロニクスの開発は急速に広がっているが、そのほとんどは、金属のパターニングや、半導体を折り曲げ可能な「波型」の構造にしたり、導電性ポリマーのような本質的にフレキシブルな材料を使用するなどして柔軟さを保っており、皮膚や心臓、脳組織など、デバイスを埋め込む生理的組織と共に収縮可能なアプリケーションを作製。
・ 新技術の糸ベースの電子デバイスは、既存のポリマーベースなどのものと比べても大きなフレキシビリティ、材料の多様性や、製造過程のクリーンルーム不要等の利点を誇る。また、観測したいバイオロジカルな組織をシームレスに統合、極薄でソフト、フレキシブルな医療診断用デバイス作製も可能。
・ タフツ大学ではすでに、温度、グルコース、菌株、光学用の糸センサーや、周囲組織のサンプル採取や薬品投与が可能なマイクロ流体の糸を開発済み。新技術で開発された糸トランジスタは、作製した論理回路で、構成要素の挙動と応答を制御できる。
・ 研究者たちは、マルチプレクサ(MUX)と呼ばれる小型でシンプルな集積回路を作製し、心臓血管や肝臓、腎臓機能の重要なバイオマーカーであるナトリウムやアンモニアイオンが検出可能な、糸ベースのセンサーアレイに接続。そして、デバイスがナトリウムやアンモニア濃度の変化をどのように観測するかを、実験室レベルで検証。
・ 理論上では、TBT で作製した集積回路のスケールアップは可能で、大きなセンサーアレイで様々なバイオマーカーを、ひとつのデバイスを使用して、複数の異なる箇所で追跡できた。
・ 新技術の TBT は、まず亜麻糸をカーボンナノチューブでコーティングして、電子が通る半導体表面を作る。糸には、ソース電極とドレイン電極となる2つの薄い金のワイヤを取り付ける。三本目のワイヤはゲートで、糸を覆う材料に取り付けて、トランジスタの基本原理を構成、ワイヤゲートを通じた電圧の小さな変化により、ソース電極とドレイン電極間の糸を通じて多くの電流が流れる。
・ 本研究の最大のイノベーションは、糸を覆う材料にゲル電解質を使用して、ワイヤゲートに接続したこと。ゲルは、ネットワーク構造に自己組織化するシリカナノ粒子で構成。ゲル電解質(イオノゲル)は、ディップコーティングや迅速な乾燥で、糸上に簡単に積層する。従来型トランジスタのゲート材料に使用されている固体酸化物やポリマーとは対照的に、イオノゲルは伸縮や屈曲に強い。
・ 本研究は、完全にフレキシブルな電子デバイスを作製する重要な一歩であり、今後はさらにアプリケーションのデザイン性や機能性を高めることに、目を向ける。今後は、ますます需要が高まる皮膚に密着したバイオマーカーのリアルタイムな測定用アプリケーション開発に着目し、患者が身に着けていることを忘れてしまうような、柔らかくて柔軟な診断モニタリングデバイスの開発をめざす。
・ 本研究は、米国立科学財団(NSF)の NSF IGERT 助成金番号 DGE-1144591 より支援を受けた。
URL: https://now.tufts.edu/news-releases/engineers-make-transistors-and-electronic-devicesentirely-thread

(関連情報)
ACS Applied Materials and Interfaces 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Highly Flexible Transistor Threads for All-Thread Based Integrated Circuits and Multiplexed Diagnostics
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsami.9b09522

<NEDO海外技術情報より>

Abstract

Abstract Image

Physically intimate, real-time monitoring of human biomarkers is becoming increasingly important to modern medicine and patient wellness. Such monitoring is possible due to advances in soft and flexible materials, devices and bioelectronics systems. Compared to other flexible platforms, multifilament textile fibers or threads offer superior flexibility, material diversity, and simple ambient processing to realize a wide range of flexible devices such as sensors, electronics, and microfluidics. In this paper, we realize unique flexible transistors on threads and interconnect them to realize logic gates and small-scale integrated circuits. Compared to prior textile-based transistors, the proposed thread-based transistors (TBTs) are realized with a readily shaped, colloidally dispersed gel consisting of silica nanoparticles and 1-ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide (EMI TFSI) ionic liquid for all-around electrolyte gating of a carbon nanotube (CNT) semiconducting network assembled on the thread. We interconnect TBTs with thread-based electrochemical sensors (TBEs) to realize an all-thread based multiplexed diagnostic device. All-thread based platforms are thin, highly flexible and conformal, allowing them to be worn directly on the skin without any polymeric substrate, or sutured transdermally using a needle.

0403電子応用0600繊維一般
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