2022-06-23 京都大学
金光義彦 化学研究所教授、半田岳人 同特定助教(現:コロンビア大学JSPS海外特別研究員)、湯本郷 同助教、若宮淳志 同教授、橋本塁人 同博士課程学生、中村智也 同助教の研究グループは、金属を含まないハライドペロブスカイト物質MDABCO-NH4I3において、強誘電性と可視光発光が同時に発現し、さらにこれらの特性が互いに相関していることを発見しました。この物質は従来の金属ペロブスカイトとは異なり、希少な金属や有害な元素を含まない上に、低温溶液法で作製できるという特徴も持っています。強誘電体は不揮発性メモリーとして用いることができるため、発光特性とメモリー機能を併せ持つ多機能デバイスなどへの応用が期待されます。
本研究成果は、2022年6月22日(現地時間)に米国科学誌「Science Advances」にオンライン掲載されました。
本研究の概要図。強誘電性と発光特性が、金属を含まないペロブスカイト物質MDABCO-NH4I3で観測された。さらに、励起光の偏光方向と強誘電分極方向が揃った時に強い発光が現れる。
研究者のコメント
本研究で明らかになった発光と強誘電性の共存・相関というユニークな性質は、ペロブスカイト物質群の持つ物質設計の自由度の高さをうまく利用することで可能となっています。電気分極を持つMDABCO分子を、発光をよく示すハロゲン化ペロブスカイト構造中に組み込むことで新しい光機能を得られることがわかりました。今回の結果は、強誘電体中の電子状態を、光学的手法を用いて探るといった基礎研究にもつながると考えています。今後も、機能性材料としてのペロブスカイト物質の魅力をうまく引き出せるように研究を続けていきたいと思います。(半田岳人)
研究者情報
研究者名:金光 義彦
研究者名:半田 岳人
研究者名:湯本 郷
研究者名:若宮 淳志
研究者名:中村 智也