予防・先制医療ソリューションの早期実用化を目指して共同研究を開始

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2020-03-31 東北大学東北メディカル・メガバンク機構,日本製薬工業協会,日本医療研究開発機構

AMED: 国立研究開発法人日本医療研究開発機構

発表のポイント
  • 国立大学法人東北大学東北メディカル・メガバンク機構と日本製薬工業協会は、2020年1月31日の連携協定の締結を受けて、2020年3月17日に共同研究の契約を締結し、2019年度中に共同研究を開始しました。
  • 生活習慣に関する調査票データやMRI画像データ、オミックスデータなどの関連性を調査するなどの共同研究を通して、創薬ニーズに基づいたデータおよび解析などにより次世代医療の社会実装及び革新的な医薬品・医療技術の更なる創出を進めて参ります。
内容

国立大学法人東北大学東北メディカル・メガバンク機構(機構長:山本雅之、以下、ToMMo)と日本製薬工業協会(会長:中山讓治、以下、製薬協)は、2020年1月31日の連携協定の締結を受けて、2019年度中に共同研究を開始しました。 

疾患の予防・早期介入を行うためには、発症前あるいは発症早期の段階で発症予測や早期診断を行う必要があります。そのためには、健康な状態からの疾患発症・回復するまでに至る一連の長期データや健常人と患者を比較して得られたデータが重要です。

そこで、ToMMoは15万人規模の健康情報とゲノム情報そして生体試料などを製薬協と共有し、製薬協が「政策提言2019」で提言した「予防・先制医療ソリューションの早期実用化」※1を目指すための研究内容を検討してきました。このたび、以下3件の共同研究について倫理委員会等での承認を受け、共同研究契約が締結されましたのでお知らせします。

  1. 生活習慣と脳形態、認知機能・心理機能の関連解析研究
  2. 睡眠障害の層別化に向けたバイオマーカー探索のための予備的研究
  3. 日本人における遺伝性乳癌卵巣癌症候群およびリンチ症候群の原因病的バリアント頻度と罹患状況に関する予備的研究

ToMMoと製薬協は、相互の理解と友好を深め、協力して科学技術の発展を促進し、ビッグデータやゲノムコホート研究※2などの成果を活用しながら、次世代医療(個別化予防・個別化医療)の推進や革新的な医薬品・医療技術の更なる創出に取り組んで参ります。これらの取り組みにより健康寿命が延伸され、人生100年を通じて誰もが健康で活躍することができる社会の実現に貢献して参ります。

研究計画の概要

共同研究計画の概要は以下の通りです。なお、研究期間は2021年3月までです。

研究組織
  • ToMMo
  • 製薬協及び第一三共株式会社、大日本住友製薬株式会社、武田薬品工業株式会社、株式会社ツムラ、ヤンセンファーマ株式会社
研究内容詳細
  1. 生活習慣と脳形態、認知機能・心理機能の関連解析研究
    個人の健康に影響を与える各種生活習慣の中で、睡眠、活動習慣と脳MRI画像、認知・心理機能、生理学的検査を中心としたデータを解析することで、脳体積減少や認知機能低下に対するリスク因子、促進因子、保護因子などの探索を行います。
  2. 睡眠障害の層別化に向けたバイオマーカー探索のための予備的研究
    個人の健康状態に影響を与える可能性の高い睡眠に着目し、睡眠の質と生化学検査値、MRI測定値情報やゲノム・オミックス解析※3情報との関連を調べ、睡眠状態を客観的に評価するバイオマーカーを探索し、最終的には睡眠状態と関連が深い疾患のリスク予測の開発につなげます。
  3. 日本人における遺伝性乳癌卵巣癌症候群およびリンチ症候群※4の原因病的バリアント※5の頻度と罹患状況に関する予備的研究
    東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査参加者におけるゲノム情報および生活習慣・健康情報を用いて、日本人における両症候群の原因となる遺伝子変化の頻度、遺伝子変化がある方の発症状況、発症と生活習慣・健康状態の関連を明らかにし、両症候群に関連する遺伝子に変化がある方に対する適切な発症予防と早期発見・治療を実現します。
共同研究の経緯

ToMMoは2011年度から東日本大震災被災地における医療の再生と医療機関の復興と併せ、被災地を中心とした15万人規模の地域住民の健康調査を地域の方々のご理解とご協力の下で実施しています。その中で世界初の出生からの三世代コホート調査も実施しています。併せて生体試料、健康情報などのバイオバンクを構築し、ゲノム・健康・診療情報などを併せて解析することで、創薬研究や個別化医療などの次世代医療体制の構築を目指しています。

一方、製薬協は、2019年1月に「製薬協 政策提言2019」を策定し、健康医療ビッグデータやAI、ゲノム医療といった革新的なテクノロジーを取り入れた先端的な研究開発を、産学官の広範なステークホルダーにより構築されたエコシステムについて取り組んでいくことを表明しました。ライフサイエンス分野のイノベーションを実現させることで国民の健康寿命の延伸と経済成長を可能とし、それが次のイノベーションを創出しサイエンスが更に発展するという好環境を生み出すことを目的としています。

上記の経緯を受けて、両者は2019年度から大規模な共同研究に向けた準備を本格化し、2019年度中にパイロット研究をスタートし、2020年度以降に本格的な共同研究を行っていくことを計画しました。そして、2020年1月31日に次世代医療の推進に向けた連携協定書を両者で締結し、次世代医療(個別化予防・個別化医療)に関してToMMo及び製薬協が推進する産学連携事業の取組を進めることといたしました。

今回、パイロット研究の計画が倫理審査はじめ各種手続きを経て開始されることで、さらに緊密な連携の下、生活習慣に関する調査票データやMRI画像データ、オミックスデータなどの関連性を調査するなどの共同研究を通して、創薬ニーズに基づいた追加データの取得や解析などにより次世代医療の社会実装及び革新的な医薬品・医療技術の更なる創出を進めて参ります。

参考
東北メディカル・メガバンク(TMM)計画について
TMM計画は、東日本大震災からの復興と、個別化予防・医療の実現を目指しています。東北大学東北メディカル・メガバンク機構と岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構を実施機関として、東日本大震災被災地の医療の創造的復興および被災者の健康増進に役立てるために、平成25年より合計15万人規模の地域住民コホート調査および三世代コホート調査等を実施して、試料・情報を収集したバイオバンクを整備しています。TMM計画は、平成27年度より、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が本計画の研究支援担当機関の役割を果たしています。
用語解説
※1政策提言2019、予防・先制医療ソリューション:
製薬協 政策提言2019は、製薬協が2019年1月24日に発表した政策提言で「イノベーションの追求と社会課題の解決に向けて-」を副題とし、『製薬協 産業ビジョン2025』の実現に向け、製薬業界に求められるもの、社会に対して発信していくべきことを整理したもの。また、予防・先制医療ソリューションは同提言の中で提案された「予防・先制医療の実現」のための社会課題を解決・改善・提供するサービスやしくみづくり。

※2 ゲノムコホート研究:
コホート調査(ある特定の人々の集団を一定期間にわたって追跡し、生活習慣などの環境要因・遺伝的要因などと疾病の関係を解明するための調査のこと)で特にゲノム情報を参加者から取得して行う研究のこと。
※3 オミックス解析:
ゲノム解析(遺伝情報の網羅的解析)、メタボローム解析(代謝物の網羅的解析)、プロテオーム解析(タンパク質の網羅的解析)、トランスクリプトーム解析(mRNAの網羅的解析)などを総称する言葉。
※4 遺伝性乳癌卵巣癌症候群、リンチ症候群:
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)は、BRCA1、BRCA2遺伝子の生殖細胞系列における病的バリアント※5が原因で乳がん、卵巣がんを発症する疾患。リンチ症候群はMLH1遺伝子など複数の遺伝子の生殖細胞系列における病的バリアントが原因で発症する大腸がんなどの疾患。いずれも、遺伝子の変化と疾患の発症との関連性が高いことが明らかになっている。
※5 病的バリアント:
疾患の原因となる遺伝子の変化(バリアント:塩基の置換・欠失・挿入などによる遺伝情報の違い)。
お問い合わせ先

東北大学東北メディカル・メガバンク機構

長神 風二(ながみ ふうじ)

日本製薬工業協会

広報部

AMED事業に関すること

国立研究開発法人日本医療研究開発機構

基盤研究事業部 バイオバンク課

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