世界のダイコン500品種のゲノム情報を公開

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2020-03-27 東北大学

発表のポイント】
・世界で広く栽培され、根の形、大きさ、色、成分などの点で多様な特徴を持つ 500 を超えるダイコンの品種の DNA を分析し、染色体全体に渡って異なる部分(SNP:一塩基多型。ゲノム情報の一つ)を明らかにした。
・大量の SNP 情報を使った系統解析により、世界中に分布するダイコンは、栽培地域と関連して大きく4つのグループに分かれ、日本のグループは独自の一つのグループを形成することが分かった。
・膨大な品種間の SNP 情報は、多様な特徴を決める遺伝子の同定やゲノム情報を利用した育種(品種開発)の加速に繋がることが期待される。

【概要】
 ダイコンの品種開発を加速するためにはゲノム情報の基盤整備を進める必要があります。2014 年にダイコンのゲノム塩基配列情報を世界に先駆けて発表したのに続き、ゲノム情報を高度化するため、東北大学大学院農学研究科を中心に、千葉県のかずさ DNA 研究所と農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)野菜花き研究部門と協力して、地域に根付いた品種を主として 500 を超える世界各地のダイコン品種の DNA を分析し、世界最大級の数となる品種間で異なる部分(SNP:一塩基多型)を明らかにしました。この遺伝情報に基づくと、世界のダイコンは大きく4つのグループに分類され、日本の品種は独自のグループを形成することが分かりました。この研究の詳細は国際科学雑誌「DNA Research」への掲載が決定し、それに先立ち令和2年3月13日にオンラインで発表されました。
 本成果により、ダイコン特有の特徴(形質)を支配している遺伝子の探索やゲノム情報を利用した育種(品種開発)、さらに品種を識別する DNA 分析技術開発が加速すると期待されます。

【詳細な説明】
〇背景

 ダイコンは世界で広く栽培されているアブラナ科の野菜です。欧州を中心とする地域にはハツカダイコン、南アジアや東南アジアには莢を食用とするサヤダイコンが、東アジアには根が大きくて太るタイプのダイコンが栽培されています。その中でも日本では、各地で特徴的な地方品種が成立し、一般的な青首ダイコンや白首ダイコンのほかに、丸い形の根の‘聖護院ダイコン’、直径30 cmにもなる‘桜島ダイコン’、細長く2 m以上になる‘守口ダイコン’、辛味の強い‘辛味ダイコン’、根は太らず葉を食べる‘小瀬菜ダイコン’など、100を超える変異に富んだ地方品種が知られています。しかしながら、ダイコンのこれら多様な特徴が遺伝的にどのように決まるのかはほとんど分かっていません。2014年に東北大学大学院農学研究科の西尾剛教授(現名誉教授)と北柴大泰准教授(現教授)が中心になり、世界に先駆けて青首ダイコンのゲノム塩基配列情報を発表し、ゲノム情報を使った遺伝学的研究の端緒を開きました。その後複数の研究機関からより高い精度のゲノム塩基配列情報が公開されました。一方で、青首ダイコン以外のタイプについての遺伝子情報は、品種・系統数においても情報量においても限られています。形や成分などの違いを決める遺伝子や品種間を特徴づける遺伝子を見出すには、多くのダイコン品種・系統間において異なる膨大なSNP(一塩基多型)を染色体の広範囲に渡って(ゲノムワイドに)明らかにすることが必要です。近年、次世代シーケンサー装置の登場とこれを利用した分析技術の発展により、迅速にゲノム情報を明らかにできるようになったことから、世界のダイコンを対象にゲノムワイドなSNP分析に着手しました。

〇研究成果
1.世界各地で栽培されているダイコン(Raphanus sativus L.)の品種や野生系統、さらにR. sativusと近縁で別種のR. raphanistrumやR.
maritimusと呼ばれる野生種を対象に、これらに属する約500の品種・系
統について、染色体の約53,000箇所のSNPを明らかにしました(図
1)。分析したダイコンの品種・系統の数は世界に類がないほど多く、検出した総SNP数は約2,100万と世界最大です。
2.これら膨大な情報を整理し、研究者や品種開発者が利用しやすい形でデ
ータベースを構築しました。かずさ DNA 研究所が運用する http://radish.kazusa.or.jp のサイトにて近日公開する予定です。
3.本研究で明らかにした遺伝情報に基づいて系統解析を行うと次のことが分かりました。
1) 約500品種・系統は地理的な分布に対応するように大きく4つのグループに分類されました。日本の品種・系統は東アジア(中国・韓国)のグループとは異なり、独自のグループを形成することが分かりました
(図2)。
2) 日本のダイコンは、これまでは中国・韓国を経由して伝播したと考えられていました。しかし、今回の解析では、南アジア・東南アジアを経由して南西諸島、南九州に伝播し、日本国内に広がったという新たな伝播経路の可能性が見出されました。

〇今後の展望
1.ダイコンには根形や大きさが様々なものがあり、また、根の色の種類
(白、赤、紫、黒など)、辛味の程度も品種によって多様です。根以外にも莢が小さく種子数が少ないものから、20cm以上の長さの莢を持つダイコンもあります。根は太らずに葉を食用とする葉ダイコンもあります。播種後に早期(30日以内に)に花が咲くものもあれば、播種から200日以上かかる品種もあります。このように品種・系統それぞれで特徴が多様です。本研究の成果により、これらの特徴(形質)を支配している遺伝子の探索が加速することが期待できます。さらにゲノム情報を利用した育種(品種開発)の加速に繋がることが期待されます。
2. 本研究にて膨大な数の品種における膨大な数のSNPを明らかにしたことにより、地方品種等での品種間の識別や、品種の同定を可能にする遺伝子情報を提供することができました。今後SNP情報を使った識別・同定分析技術の開発が進むことが期待されます。
3.日本の地方品種は100を超えると言われています。本成果のSNP情報を使うことで、地方品種の類縁関係の詳細が明らかになります。また、独自性が明らかになった地方品種については遺伝資源としての重要性が増すことになります。遺伝資源保全の指標づくりに本成果の情報は活用できると考えています。
4.生物多様性条約の名古屋議定書により、現在は海外の国・地域の遺伝資源を入手することは難しくなっています。そこで、各国や地域において、そこに古くからあるダイコン品種・系統を本研究と同様の手順で分析し、本成果のデータと併せて解析することで、世界のダイコンの伝播経路がより正確に明らかになると考えています。

図 1 検出した SNP の染色体における分布の様子
約53,000 SNPのうちの一部の位置を赤で示している。Rs1〜Rs9は染色体の番号を示す。


図2 SNP 情報を基にして分析した各品種の遺伝的な分布(主座標分析)
各プロットが品種を示し、それぞれで計算された遺伝的な位置にプロットされている。緑のプロットは日本由来の品種・系統を示し、一つのグループを形成している。

【論文情報】
表題:Identification of genome-wide single-nucleotide polymorphisms among geographically diverse radish accessions
「地理的に多様に分布するダイコン品種・系統間のゲノムの広範囲にわたる一塩基多型(SNP)の同定」
著者:Hiroto Kobayashi, Kenta Shirasawa, Nobuko Fukino, Hideki Hirakawa, Takashi Akanuma, Hiroyasu Kitashiba* (*corresponding author)
(小林寛人、白澤健太、吹野伸子、平川英樹、赤沼岳、北柴大泰)
雑誌:DNA Research
巻頁:Published online before print (March 13th, 2020)
DOI:https://doi.org/10.1093/dnares/dsaa001

【関連情報】
予算:農研機構生研支援センターイノベーション創出強化研究推進事業
(29010B、平成29年度〜)

本件に関するお問い合わせ先

<研究に関すること>
東北大学 大学院農学研究科
応用生命科学専攻 植物遺伝育種学分野
教授 北柴 大泰

かずさ DNA 研究所 先端研究開発部
植物ゲノム・遺伝学研究室主任研究員 白澤 健太

<報道に関すること>
東北大学 大学院農学研究科 総務係 

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