タマネギ機能性成分フラボノイドの生産制御因子と関連染色体を特定

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近縁種シャロットがもつフラボノイド高含有性をネギに導入することで新規の機能性・ストレス耐性品種育成を目指す

2019-03-11  山口大学,理化学研究所,かずさDNA研究所,東京農業大学

山口大学大学院創成科学研究科(農学系学域)の執行正義教授のグループは、理化学研究所環境資源科学研究センターの平井優美チームリーダーと澤田有司研究員、東北大学大学院生命科学研究科の佐藤修正准教授、かずさDNA研究所ゲノム情報解析施設の平川英樹施設長、東京農業大学の峯洋子教授、田中啓介研究員との共同研究により、フラボノイド低含有性のネギと高含有性を有する近縁種シャロットの掛け合わせから得られた添加系統シリーズを用いて健康機能性や各種ストレス耐性に関与するフラボノイド生合成経路中の代謝物生産と遺伝子発現を網羅的に比較解析しました。その結果、フラボノイド生産に強く関与する染色体と遺伝子を特定しました。

【発表のポイント】
●国連が提唱するSustainable Development Goals(SDGs:持続可能な開発目標)中の能力目標3[保健]では、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する。」ことが謳われている。特に我が国では、2030年に人口の約1/3が高齢者になると予測され、動脈硬化性疾患、血管疾患、神経変性疾患などの加齢関連疾患が増加すると考えられており、発症する前の段階で加齢に伴って起こる疾患を予防することが重要となる。また、SDGsの能力目標13[気候変動]の中で「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」を提唱している。農業分野では、温暖化が進行する中でも、各種の生物的また非生物的ストレスに曝された状況でも健全に生育できる品種の育成が求められる。

●葉鞘基部のフラボノイドについて低生産性のネギと高生産性のシャロット*1(図1)の掛け合わせから得られた単一異種染色体添加系統シリーズ*2(図3)(以下、添加系統シリーズ)を用い、上記の健康機能性や各種ストレス耐性に関与する生合成経路中の代謝産物であるフラボノイドについて、葉鞘基部での生産性が低いネギと高いシャロットの掛け合わせから得られた単一異種染色体添加系統シリーズを用いて代謝物生産と遺伝子発現を網羅的に比較解析した結果、フラボノイド生産に強く関与する染色体と遺伝子を特定した。

●本研究成果はヒトの健康機能性や植物体のストレス耐性を併せ持つ新たな品種育成に貢献することが期待され、この様なネギ品種が育成されると、SDGsの上記の能力目標達成へ貢献できる可能性がある。

【論文題目】
題目:Widely targeted metabolome and transcriptome landscapes of Allium fistulosum–A. cepa chromosome addition lines revealed a flavonoid hot spot on chromosome 5A
著者:Mostafa Abdelrahman, Sho Hirata, Yuji Sawada, Masami Yokota Hirai, Shusei Sato, Hideki Hirakawa, Yoko Mine, Keisuke Tanaka, Masayoshi Shigyo
雑誌:SCIENTIFIC REPORTS
DOI:10.1038/s41598-019-39856-1
URL:www.nature.com/articles/s41598-019-39856-1
【謝辞】
本研究は、平成26~28年度日本学術振興会科学研究費助成事業基盤(B)「ネギ属バイオリーソースを用いたオミクス統合解析のタマネギ育種への応用(研究課題番号:26292020)」及び平成26年度後期東京農業大学生物資源ゲノム解析センター共同研究の助成を受けたものです。

【図1】 シャロット

【図2】 ネギ(左)にシャロット第5染色体 を 添加した系統(真ん中、右)

【図3】 シャロット由来の8種類の単一異種染色体 をそれぞれもつネギ系統シリーズの形態と染色体像

【図4】 添加系統シリーズにおけるフラボノイド生合成遺伝子の発現量を示すヒートマップ

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