高温耐性に優れた多収の極良食味水稲新品種 「にじのきらめき」

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2018/09/06 農研機構

ポイント

高温耐性と耐倒伏性に優れた中生水稲新品種「にじのきらめき」を育成しました。「コシヒカリ」並の極良食味で、15%程度多収となります。縞葉枯しまはがれ1)に抵抗性を持ちます。大粒で業務用に適した品種として北関東の群馬県を中心に普及の取り組みが進められる予定です。北陸、東海地域以西でも栽培可能な品種です。

概要

近年、温暖化の進行に伴う登熟期間中の高温の影響で「コシヒカリ」に白未熟粒2)が発生し、品質が低下することが問題となっています。また、「コシヒカリ」は草丈が長く、収量向上のために多く施肥すると倒伏してしまい、穂発芽による品質の低下や収穫作業が予定通り進まないといった問題が発生しています。

そこで、農研機構は、高温登熟性と耐倒伏性に優れる中生水稲新品種「にじのきらめき」を育成しました。草丈が短くて耐倒伏性が強く、「コシヒカリ」に比べて標肥栽培で15%程度、「コシヒカリ」が倒伏する多肥栽培では30%弱多収です。玄米の外観品質は「コシヒカリ」よりも良好で、高温条件で栽培しても玄米品質に優れます。炊飯米の食味は「コシヒカリ」と同等の極良食味です。縞葉枯病に抵抗性を持つため、北陸だけでなく関東、東海以西でも栽培が可能です。北関東の群馬県を中心に普及の取り組みが進められる予定です。

予算:運営費交付金、農林水産省委託プロジェクト研究
「温暖化の進行に適応する品種・育種素材の開発」
品種登録出願番号:第32954号(平成30年3月20日出願、6月18日出願公表)

お問い合わせ

研究推進責任者:
農研機構中央農業研究センター 所長 梅本 雅

研究担当者:
同 作物開発研究領域 稲育種グループ 長岡 一朗、 前田 英郎
広報担当者:
同 北陸企画管理室 企画連携チーム長 上村 紀美夫

詳細情報

新品種育成の背景と経緯

温暖化の進行に伴う登熟期間中の高温により米の品質が低下し、食味や精米歩留まり等に影響するほか、なによりも価格が低下することが問題となっています。日本の水稲作付面積首位の「コシヒカリ」も出穂後の高温により玄米品質が低下しやすく、対策が求められています。また、多収穫のための多肥栽培でも倒伏せず、縞葉枯病などの防除コストが低減可能で、収量・品質に優れた外食や中食需要を満たせる品種が必要とされています。

そこで農研機構は、これらに対応するため、「コシヒカリ」よりも、耐倒伏性と高温耐性に優れ、縞葉枯病抵抗性で収量性が高く、大粒で玄米の外観品質に優れる極良食味品種「にじのきらめき」を育成しました。

「にじのきらめき」の特徴

  • 1)高温耐性に優れた「西南136号(後の「なつほのか」)」を母とし、極良食味の「北陸223号」を父とした交配から育成した品種です。
  • 2)育成地(新潟県上越市)での出穂期は「コシヒカリ」とほぼ同じです。成熟期は「コシヒカリ」より4日から5日程度遅くなります(表1)。
  • 3)稈長は「コシヒカリ」よりもかなり短くなります。穂長、穂数ともに「コシヒカリ」とほぼ同等で、草型は「中間型」です(表1、写真1)。
  • 4)育成地での玄米収量は「コシヒカリ」に比べて標肥栽培で15%程度、多肥栽培で30%弱の多収です。千粒重3)は「コシヒカリ」よりも2g程度重くなります(表2)。
  • 5)玄米外観品質 は「コシヒカリ」より明らかに優れます(表2、写真2)。食味は「コシヒカリ」と同等の評価です(表3)。
  • 6)耐倒伏性は強で、穂発芽性は難、葉いもち圃場抵抗性は中、穂いもち圃場抵抗性はやや強、縞葉枯病には抵抗性、白葉枯しらはがれ病4)抵抗性はやや弱、高温耐性はやや強です(表4)。
  • 7)栽培適地は、「コシヒカリ」の栽培が可能な北陸から関東以西です。

栽培上の留意点

1)白葉枯病に弱いため、常発地での栽培は防除を徹底して下さい(表4)。
2)倒伏には強いですが、過剰な施肥は倒伏および玄米タンパク含有量の増加による食味の低下を招きますので、地力にあわせた適切な肥培管理を行って下さい。

品種の名前の由来

虹のように多彩な特性を持つこととご飯が艶やかであることから命名しました。

今後の予定・期待

1)平成30年度より群馬県、栃木県、岐阜県の一部で作付けが始まっており、初年度は数ha、数年後にはさらなる普及が見込まれています。
2)ご飯の食味が良く、大粒で搗とう精せい・炊飯歩留まりの向上が期待できることから、中食や外食をはじめとする様々な用途への利用が期待できます。

用語の解説

1)縞葉枯病
稲のウイルス病のひとつで、ヒメトビウンカによって媒介されます。葉に黄緑色または黄白色の縞状の病斑があらわれ、生育が不良となり、やがて枯死します。後期感染では、黄緑色の条斑を生じ、穂が奇形となって十分に葉から出なくなる症状を示します。関東から東海地域を中心に発生が多くなっている病害です。

2)白未熟粒
胚乳(白米として食べる部分)の一部または全部が白く濁ってしまった玄米のことをいいます。登熟期の高温によりデンプンの蓄積が阻害されること等により発生します。精米しても白濁は無くならず、米の検査等級の下落や食味の低下の原因となります。また、粒が砕けやすいので精米時の歩留まりが悪くなります。

3)千粒重
玄米千粒の重さです。米粒の大きさを示す指標として使われ、大粒の品種では千粒重は重くなります。

4)白葉枯病
稲の細菌病のひとつで、冠水と強風雨によって感染の機会が増大し、発病が助長されます。葉縁に沿って黄色、白色あるいは青みを帯びた灰緑色の病斑が現れ、基部方向に伸長していきます。発病葉は先端から次第に枯れて灰白色となり、葉の枯死で稔実が害され、減収になることもあります。

参考図

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