『原子力機構の研究開発成果2019-20』p.13
東京電力福島第一原子力発電所(1F)では、溶融した燃料が固まってできた燃料デブリの取出しが重要な課題となっています。デブリを安全に取り出すためには硬さや弾性係数、破壊靭性などの機械的特性を明らかにする必要があります。しかし、実際の燃料デブリの性状ははっきりしておらず、模擬的な燃料デブリを作成して機械的特性を調べる必要があります。
図1-4 ウラン・ジルコニウム酸化物の結晶構造実際の計算に用いたウラン・ジルコニウム酸化物の結晶構造の一つを示しています。()はウラン、(
)がジルコニウム、(
) が酸素原子に対応していて、ウラン原子 24 個、ジルコニウム9 個、酸素 64 個からできています。
この場合、デブリの詳細な成分が分かっていないため、たくさんの種類の模擬デブリを作成して実験を行わなければならず、時間的にも費用的にも大きなコストが必要となります。これに対して、もし、数値シミュレーションで燃料デブリの機械的特性を評価できれば、大きなコスト削減となり、デブリ取出しを効率化できる可能性があります。このような状況を受けて、燃料デブリの主成分であるウラン・ジルコニウム酸化物(図1-4)の機械特性を原子レベルのシミュレーションによって評価することに挑戦しました。シミュレーションには第一原理計算と呼ばれる経験的なパラメータを必要としない信頼性の高い方法を用いました。