位置情報ゲームを利用する中高年の歩数が有意に増加

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「Pokémon GO」リリース前後9か月間の歩数分析より

2019-02-09

東京大学大学院工学系研究科の樋野公宏准教授らは、2016年7月の「Pokémon GO」リリース前後における中高年の歩数について、位置情報ゲーム利用者と非利用者でその変化に差があるか調べました。
分析対象者は、横浜市が実施する「よこはまウォーキングポイント事業」の参加者のうち、40歳以上、かつ無作為に送付されたアンケート調査の回答者です。リリース前の1か月(2016年6月)とリリース後の8か月(同8月~2017年3月)を分析期間とし、2017年5月時点における位置情報ゲーム利用者46名(平均年齢56.6歳)と非利用者184名(同57.3歳)の二群の歩数を比較しました。二群で性別、年代、事前の歩数水準が同等になるよう揃えました。
「繰り返しのある二元配置分散分析」という方法で、リリース前後の二群の歩数の変化を分析した結果、リリース後の8か月のうち3か月(11月、12月、2月)において、リリース前と比べた歩数の平均変化量に二群で統計的に有意な差があり、利用群はよく歩いているということが分かりました。非利用群が歩数を減らす冬季でも、位置情報ゲームの利用群は歩数を維持したと言えます。属性別分析では、特に55-64歳の利用者がよく歩いていることが分かりました。これらの知見が、新たなゲームアプリの開発や自治体の健康づくり政策立案に活用されることが期待されます。今後も引き続き横浜市と協力して、都市環境における歩行の促進・阻害要因とその影響を明らかにしていく予定です。

Journal of Medical Internet Research:https://www.jmir.org/2019/2/e10724/

日本経済新聞社:https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP501934_V00C19A2000000/

プレスリリース本文
位置情報ゲームを利用する中高年の歩数が有意に増加
-「Pokémon GO」リリース前後 9 か月間の歩数分析より-
1.発表者:

樋野 公宏(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 准教授)
浅見 泰司(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 教授)
李 廷秀(東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室 特任准教授)2.発表のポイント:
◆中高年の歩数について、位置情報を活用したスマートフォン向けゲーム(以下、位置情報ゲ ーム)の利用者と非利用者で「Pokémon GO」のリリース前後で変化に差があるか調べまし た。
◆リリース前後 9 ヶ月という比較的長い期間にわたって歩数を分析したところ、位置情報ゲー ム利用者は、「Pokémon GO」のリリース後、非利用者と比べてよく歩き、日平均歩数の差 は最大の月で約 600 歩に達しました。
◆位置情報ゲームが、中高年の健康づくりに有用であることを明らかにした本研究の知見が、 新たなゲームアプリの開発や自治体の健康づくり政策立案に活用されることが期待されます。

3.発表概要:
東京大学大学院工学系研究科の樋野公宏准教授らは、2016 年 7 月の「Pokémon GO」リリ ース前後における中高年の歩数について、位置情報ゲーム利用者と非利用者でその変化に差が あるか調べました。
分析対象者は、横浜市が実施する「よこはまウォーキングポイント事業」(注 1)の参加者 のうち、40 歳以上、かつ無作為に送付されたアンケート調査の回答者です。リリース前の 1 か月(2016 年 6 月)とリリース後の 8 か月(同 8 月~2017 年 3 月)を分析期間とし、2017 年 5 月時点における位置情報ゲーム利用者 46 名(平均年齢 56.6 歳)と非利用者 184 名(同 57.3 歳)の二群の歩数を比較しました。二群で性別、年代、事前の歩数水準が同等になるよう 揃えました。
「繰り返しのある二元配置分散分析」(注 2)という方法で、リリース前後の二群の歩数の 変化を分析した結果、リリース後の 8 か月のうち 3 か月(11 月、12 月、2 月)において、リ リース前と比べた歩数の平均変化量に二群で統計的に有意な差があり、利用群はよく歩いてい るということが分かりました(図 1)。非利用群が歩数を減らす冬季でも、位置情報ゲームの 利用群は歩数を維持したと言えます。属性別分析では、特に 55-64 歳の利用者がよく歩いて いることが分かりました(図 2)。これらの知見が、新たなゲームアプリの開発や自治体の健 康づくり政策立案に活用されることが期待されます。今後も引き続き横浜市と協力して、都市 環境における歩行の促進・阻害要因とその影響を明らかにしていく予定です。

4.発表内容:
① 研究の背景・先行研究における問題点
人々の身体活動(歩行など)の向上は現代都市の大きな課題です。そのなかで、近年位置情 報ゲームによる身体活動量増加の効果が期待されています。2016 年 7 月にリリースされ爆発 的な人気を集めた「Pokémon GO」は、こうした側面からも注目を集めました。しかし、リリ ース前後の歩数を比較した研究は、若者を対象とした数週間程度の短期間の研究が海外で少数 実施されているにとどまり、中高年を対象とした研究や、長期間の研究はありませんでした。

② 研究内容
本研究では、2016 年 7 月の「Pokémon GO」リリース前後における中高年の歩数について、 位置情報ゲーム利用者と非利用者でその変化に差があるか調べました。分析対象者は、横浜市 が実施する「よこはまウォーキングポイント事業」の参加者(2017 年 3 月末時点で約 23 万人) のうち、40 歳以上(2017 年 3 月末時点)、かつ無作為に送付された参加者アンケート調査(2017 年 5 月実施)の回答者です。リリース前の 1 か月(2016 年 6 月)とリリース後の 8 か月(同 8 月~2017 年 3 月)を分析期間とし、アンケート調査実施時点における位置情報ゲーム利用 者 46 名(平均年齢 56.6 歳)と非利用者 184 名(同 57.3 歳)の二群の歩数を比較しました。 位置情報ゲームの利用状況は、上記アンケート調査における「位置情報を使ったゲームアプリ (キャラクターを捕まえる、陣地を取るなど)を利用していますか」という設問への回答結果 から判定しました。なお、二群で性別、年代、事前の歩数水準が同等になるよう揃えました。
「繰り返しのある二元配置分散分析」という方法で、リリース前後の二群の歩数の変化を分 析した結果、リリース後の 8 か月のうち 3 か月(11 月、12 月、2 月)において、リリース前 と比べた歩数の平均変化量に二群で統計的に有意な差があり、位置情報ゲームの利用群はよく 歩いているということが分かりました(図 1)。リリース前は非利用群の平均日歩数が 261 歩 多かったのですが、非利用群が歩数を減らす冬季でも利用群は歩数を維持し、12 月には利用群 の日平均歩数が 583 歩も多くなりました。
属性別分析では、性別、年代(55 歳未満、55-64 歳、65 歳以上)、職業(有職、無職)、 事前の歩数水準(高、低)、主観的健康感(高、低)で区分し、同様に位置情報ゲームの利用 群と非利用群の歩数を比較しました。複数月で有意差が見られたのは、男性、55-64 歳、有職 者、事前の歩数水準が高い群、主観的健康感が高い群でした。特に 55-64 歳においては、9 月を除く 7 か月で有意差が見られ、利用群がよく歩いていることが分かりました(図 2)。利 用群と非利用群の日平均歩数の差はリリース前に 320 歩でしたが、リリース後は最大 1891 歩 (12 月)に達しました。

③ 社会的意義・今後の予定 など
位置情報ゲームが、中高年の身体活動量促進に有用であることが明らかになりました。本研 究で得られた知見は、新たなゲームの開発や、自治体等の健康づくり政策の立案に役立てられ ることが期待されます。
なお、本研究は、横浜市と本研究チームが締結した「よこはまウォーキングポイント事業検 証に関する協定書」(2015 年 10 月 30 日)に基づき実施したものです。今後も引き続き横浜 市を対象として、都市環境における歩行の促進・阻害要因とその影響を明らかにし、歩行を促 進するまちづくり手法を検討していく予定です。

5.発表雑誌:
雑誌名:Journal of Medical Internet Research
論文タイトル:Step Counts of Middle-Aged and Elderly Adults for 10 Months Before and After the Release of Pokémon GO in Yokohama, Japan
著者:Kimihiro Hino*, Yasushi Asami, Jung Su Lee
DOI 番号:10.2196/10724
アブストラクト URL:http://www.jmir.org/2019/2/e10724/

6.問い合わせ先:
東京大学大学院工学系研究科
准教授 樋野 公宏(ひの きみひろ)

7.用語解説:
(注 1)よこはまウォーキングポイント事業:
横浜市に在住・在勤・在学する 18 歳以上の希望者に歩数計を配布し、ウォーキングを通じて 楽しみながら健康づくりに取り組んでもらう事業。
https://enjoy-walking.city.yokohama.lg.jp/walkingpoint/

(注 2)繰り返しのある二元配置分散分析:
ある特性値(本研究では歩数)に関連すると考えられる因子が 2 つ(本研究では「利用者か非 利用者か」と測定月)ある場合、それぞれの因子の効果と、2 つの因子の組み合わせによる相 乗効果(交互作用)を区別して求める手法を「二元配置分散分析」と言う。特に、同一の対象 者から多時期にわたり繰り返し測定して比較する手法を「繰り返しのある二元配置分散分析」 と言う。本研究では、交互作用が統計的に有意かどうか検定し、各月において二群の平均歩数 に差があるか調べた。

8.添付資料:


図 1.位置情報ゲームの利用状況別に見た「Pokémon GO」リリース前後の日平均歩数 (前:2016 年 6 月、後:同 8 月~2017 年 3 月)


図 2.位置情報ゲームの利用状況別に見た「Pokémon GO」リリース前後の平均一日歩数(55-64 歳) (前:2016 年 6 月、後:同 8 月~2017 年 3 月)

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