運転行動などによる認知症早期発見や運転リスク評価方法の研究開発
2020-03-11 産業技術総合研究所
ポイント
- 高齢化の進行にともない、高齢ドライバーによる交通事故や認知症患者の介護負担が増加
- 認知症早期発見や運転リスク予測の研究に取り組むコンソーシアム型の共同研究を開始
- 認知機能低下を補う運転支援技術や、認知症の早期発見による治療などにつながることを期待
概要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、筑波大学附属病院や自動車メーカー、サプライヤー企業、製薬メーカーなどの企業6社(スズキ(株)、(株)SUBARU、パイオニア(株)、パナソニック(株)、マツダ(株)など)と共同で、認知機能が低下した高齢ドライバーの運転リスク評価や、車の運転などの日常生活データにもとづく認知症の早期発見に関する研究開発を目的としたコンソーシアム「健康起因交通事故撲滅のための医工連携研究開発コンソーシアム2(Automotive and Medical Concert Consortium 2)」(以下、「AMECC2」という)を設立しました(2020年1月1日設立。本プレス発表時点で参加企業は6社)。
今後は継続して参加企業を募るとともに、2022年3月末までの予定で共同研究を実施し、運転リスク予測方法や認知症早期発見方法の開発に取り組みます。得られた成果をもとに、認知機能が低下した高齢ドライバーの運転支援技術の開発や、早期発見した認知症の治療や対策の促進が期待されます。
コンソーシアムの活動内容と期待されるその後の展開
社会的背景
高齢化社会の進展に伴い、わが国では65歳以上の四人に一人が認知症または軽度認知障害となっており、今後さらなる増加が見込まれています。このような状況を反映して高齢ドライバーによる交通事故や、認知症患者に対する介護負担の増加などが社会的な課題となってきています。認知機能が低下した高齢者の運転リスクを適切に評価して、リスクに応じた運転支援技術やシステムの開発が求められています。また、認知症を早期発見することによって、運動、食事、薬などによる対処が期待されています。
経緯
産総研は、2016年11月から2019年3月まで、筑波大学附属病院、東京大学、企業12社とともに、「健康起因交通事故撲滅のための医工連携研究開発コンソーシアム」による共同研究を実施してきました。その結果、自動車運転中に脳卒中、心疾患、てんかんを発症した場合の特徴を明らかにして、発症検知につながるデータを取得しました。次なる取組として、認知症を含む認知機能が低下した高齢ドライバーの事故防止や認知症の早期治療・対処を目指したコンソーシアムを新たに設立して、共同研究を行うことになりました。
AMECC2の活動内容
認知機能の低下がみられない若年者や高齢者、軽度認知障害者(MCI)、認知症患者を対象に、ドライビングシミュレーターや実験車両(認知症患者を除く)を用いた運転中のデータ(運転操作や生体データ)や、歩行、声などの生活行動データを取得します。加えて、認知機能に関わる医学的なデータ(認知機能検査、脳画像)を取得します。これらを総合的に解析することによって、日常生活から認知機能低下を早期に発見する手法や運転リスクを予測する手法を開発します。
AMECC2への参加
自動車メーカーやそのサプライヤー、保険会社、通信会社など、認知症の予防や共生に関心のある企業を広く募ります。申し込み、お問い合わせ先は以下の通りです。
AMECC2 事務局
参加企業には研究期間内の総額1500万円/1社の資金提供をお願いしています。また、応募いただいた後に、次の条件を満たしていることおよびAMECC2運営委員会での承認を経てご参加いただきます。
- 研究開発目標達成や研究計画遂行に必要となる組織、人員などを有していること。
- 研究開発に必要な共同研究費を産総研に支払うのに充分な経営基盤を有していること。
※なお、海外企業は国内に関連製品の主要製造拠点を持つことが条件ですが個別にご相談ください。
参加応募の詳細については以下のURLをご参照ください。
<https://unit.aist.go.jp/ahf/AMECC2.html>