2019/3/13 アメリカ合衆国・ アイダホ国立研究所(INL)
(Critical Materials: Researchers eye huge supply of rare-earth elements from mining waste)
・ INL、ラトガース大学、OLI System Inc.、カリフォルニア大学デービス校およびローレンスリバモア国立研究所(LLNL)から成る研究チームが、微生物を使用して採鉱廃棄物から希土類元素(rare-earth elements: REEs)を抽出する技術を開発。
・ ネオジムやジスプロシウムを含む金属元素の REEs は、携帯電話やコンピューター等のハイテクデバイス製造に不可欠だが入手が困難。現在、米国内での生産による供給が無いことから、製造業者は供給途絶の危機に直面する恐れがある。
・ リン鉱石からリン酸を抽出した後に残る廃棄物のリン酸石膏(phosphogypsum: PG)には、REEs が大量に含まれている。米国では 2017 年に約 2 千 8 百万トンのリン鉱石を採掘しており、抽出したリン酸は肥料等の生産に使用されている。
・ 現在、全米(特にアイダホ州とフロリダ州)の貯蔵サイトには、10 億トン超の PG 廃棄物の蓄積があると推測。全世界では、毎年約 10 万トンの REEs が PG 廃棄物中に残留するが、これは、毎年世界で産出される約 12 万 6 千トンの希土類酸化物の量とほぼ同等。
・ PG 廃棄物からの REEs 抽出の可能性を調べるため、人工のリン酸石膏を 6 種類の希土類元素(イットリウム、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、イッテルビウム)でドープし、元素抽出方法の研究を実施。
・ その結果、腐敗した果物等を含み、環境中に一般的に存在する微生物のグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)が生成する化学物質の混合物が REEs の回収に特に有効であることを発見。同微生物は、「バイオリーチング」と呼ばれるプロセスで PG から REEs を溶出させる、グルコン酸等の有機酸を生成する。REEs はその後沈殿・精製を経て産業利用される。
・ 以前の研究では、同微生物を利用して使用済みの流動接触分解(FCC)触媒から REEs を回収する研究を実施したが、今回の研究で同微生物が生成する化学物質の混合物がリン酸やグルコン酸の能力を上回ることを確認した(最も良く効いた化学物質は硫酸であった)。
・ 初期研究では、同微生物を利用したバイオリーチングは経済的に実施可能で、特に硫酸と比較すると環境負荷が少ないことを確認。鉱石から REEs を抽出する従来の方法では、有毒な酸性の汚染物質を大量に排出する。・ ただし、REEs 抽出源としての PG の利用には主要な課題が残る。PG にはウランやトリウムといった放射性物質が含まれることと、PG は廃棄物に分類されるため、現在蓄積されている PG へのアクセスが規制当局により制限されること。
・ しかし、大量の REEs 源である PG への関心は高く、すでに鉱業会社が同技術に関して問い合わせている。次には、リン酸製造時に排出されて REEs を含有する産業用 PG 等で微生物由来の有機酸による試験を実施する。
・ 本研究は、米国エネルギー省(DOE)のエームズ研究所が率い、DOE のエネルギー効率・再生可能エネル.ギー局(EERE)の Advanced Manufacturing Office が支援する Energy Innovation Hub である、 Critical Materials Institute(CMI)の支援により実施された。 URL: https://inl.gov/article/critical-materials-researchers-eye-huge-supply-of-rare-earthelements-from-mining-waste/
(関連情報)
The Journal of Chemical Thermodynamics 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Bio- and mineral acid leaching of rare earth elements from synthetic phosphogypsum
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0021961418312710?via%3Dihub
<NEDO海外技術情報より>