2019/5/6 アメリカ合衆国・ローレンスバークレー国立研究所 (LBNL)
プラスチックを作り直す:プラスチック完全リサイクルの打開策を発見
(Plastic Gets a Do-Over: Breakthrough Discovery Recycles Plastic From the Inside Out)
・ LBNL が、分子レベルで構成要素単位に分解後、機能や品質を損なわずに様々な形状、手触り、色合いに何度も再構築できる PDK(poly(diketoenamine)プラスチックを開発。
・ 特定の性質を付与する色素やフィラー等の様々な添加剤を含むプラスチック製品のほとんどでは、その機能や美観を維持したリサイクルが不可能。PET(ポリエチレンテレフタレート)でもリサイクルされるのは僅か 20~30%で、それ以外は焼却や埋立処理されている。
・ プラスチックは炭素を含んだ基本化合物であるモノマー(単量体)ユニットが繰り返し結合してできたポリマー(重合体)と呼ばれる大きな分子より構成。プラスチックを強くするフィラーやフレキシブルにする可塑剤等の添加剤の化学物質はモノマーに硬く結合し、リサイクル処理後もプラスチック中に残存する。
・ リサイクル処理時には、様々な化学組成のプラスチックを混合・破砕後に溶解して新材料を作るが、処理前のプラスチックから受け継がれる特性が予測できない。そのため、モノマーを回収して再利用したり、高品質な製品の製造へとアップサイクルできる循環型材料の実現が困難であった。
・ PDK をベースとしたプラスチックでは、高濃度の酸溶液に浸すだけで添加剤からモノマーを分離・回収できる。PDK 接着剤の合成に使用するガラス製品で様々な酸を試験していた際に、接着剤の組成の変化を発見。
・ NMR(核磁気共鳴)分光装置で同物質の分子構造を分析すると、オリジナルのモノマーが確認できた。その後の試験では、酸が PDK ポリマーをモノマーに分解するだけでなく、添加剤からのモノマーの分離を促進することを実証した。
・ 次に、回収した PDK モノマーからポリマーが作製できることを実証。このようなポリマーは、元材料の特性を引き継がない新しいプラスチック材料となる。さらに、フレキシビリティー等の特性を付加することでアップサイクルも可能。
・ 現在、将来の廃棄物分類・処理に向けたリサイクル施設の近代化に必要なインフラについて見直す時期にあり、これらの施設を PDK のようなプラスチックのリサイクルやアップサイクル用に設計できれば、プラスチックの埋立処理や海洋廃棄が回避可能と考える。
・ 今後は、テキスタイルや 3D プリンティング等の幅広いアプリケーションに向けた、熱的・機械的特性を備えた PDK プラスチックの開発を予定。さらに、植物をベースとした材料や他の持続可能な資源を統合した材料開発も目指す。
URL: https://newscenter.lbl.gov/2019/05/06/recycling-plastic-from-the-inside-out/
(関連情報) Nature Chemistry 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Closed-loop recycling of plastics enabled by dynamic covalent diketoenamine bonds URL: https://www.nature.com/articles/s41557-019-0249-2
<NEDO海外技術情報より>