測定・サンプリングなど多目的に使用できる”海洋のドローン“の開発

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無人船開発に浜通り企業の技術を結集

2019-05-24 日本原子力研究開発機構,株式会社ウィンディーネットワーク,海洋研究開発機構

【発表のポイント】

  • JAEA、ウィンディーネットワーク及びJAMSTECは、これまでに蓄積された無人船運用の経験や開発技術をもとに、福島県浜通り地区の企業5社〔(株) K.S.E.、Takeru Software、(有)協栄精機、 (株) 磐梯マリーン、日本オートマチックマシン(株)〕がもつ技術を最大限活用し、組織の枠を超えてアイディアを結集することで、放射線の測定をはじめ様々な用途に活用可能な無人船(海洋のドローン)の開発に成功した。
  • 本無人船開発の中で、放射線だけでなく水温や電導度の計測及び海底土サンプルの採取が同時にできるシステムもあわせて共同開発し搭載することで、原子力発電所周辺の河口域の詳細なモニタリングを可能とした。また、音響測定システムを搭載することで世界でも例を見ない無人船による海底測量を実現した。
  • 本無人船は、有人船で行っていた海洋調査の時間やコストの縮減及び人が立ち入ることが困難な過酷環境における調査、人命救助、防災時のツールとしても活用できる。
  • 本成果は、福島イノベーション・コースト構想の一環である福島県地域復興実用化開発等促進事業費補助金事業1)の助成を受けている。
  • 本無人船の販売や測量サービスは、2019年度中に事業化予定。

図1 本事業の成果概要

(a) 無人船外観:
船体の中央に海中への機器昇降用の直径100cmのムーンプールを有している。また、横方向の推進装置により、運動性能を最適化し、海洋調査時の定点維持が可能。
(b) 搭載センサー:
放射線測定、自己位置計測及び水温などの調査環境のデータを取得し、地上の操縦者までリアルタイムに送信可能。また、複数の海底土試料自動採取も可能。
(c) 無人船の音波測量機器を搭載により
作成した海底地形図:
水面から浅い箇所を赤、深い箇所を青で示す。

【動画】

【概要】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 (理事長 児玉敏雄、以下、「JAEA」という。) 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 福島環境安全センター 放射線監視技術開発グループ(南相馬市)は、株式会社ウィンディーネットワーク(以下「ウィンディーネットワーク」という。)及び国立研究開発法人海洋研究開発機構(以下、「JAMSTEC」という。) と共同で、放射線の測定をはじめ様々な用途に活用可能な無人船(海洋のドローン)の開発を行いました。本事業は、平成28年度から3年間、「福島県地域復興実用化開発等促進事業費補助金事業」の課題として採択されたものです。上記3機関が中心となり福島第一原子力発電所(以下「1F」という。)の事故以来実施してきた、無人船による河口域のモニタリングの経験a) をベースとして、放射線の測定だけでなく自動で海底土のサンプリングや水温、水深の測定等の様々な用途に活用可能な無人船を開発することを目的として福島県浜通りに拠点を持つ企業5社〔(株) K.S.E.、Takeru Software、(有)協栄精機、 (株)磐梯マリーン、日本オートマチックマシン(株)〕とともに実施しました。

なお、本事業において、無人船観測に係る以下の要素技術を開発しました。

(1) 無人船の船体製作・製品設計・制御技術開発

(2) ファイバー型検出器を用いた海底放射線測定システム

(3) 自動連続海底土サンプリング装置

(4) 小型自動ウィンチ制御技術

(5) 無人船による海底測量技術

このうち、(1) (3) (4)については、福島県浜通りに拠点を持つ企業が開発を担当しました。また、これらの要素技術を、JAMSTECの所有する無人船 (図1(a)) を改造して実際に組み込み実証を行いました。今後、無人船をはじめとする開発した技術の販売体制を構築すること及び運用技術を修練することによって、浜通り発のユニークな技術として2019年度内の事業化を予定しています (図2)。

図2 本事業の体制

【研究の背景と目的】

我が国において、無人船 (USV:Unmanned Surface Vehicle) 2) は2000年代から、研究目的の海洋調査a) 、無人の潜水ロボット (AUV: autonomous underwater vehicle) の中継機b) 及び海洋警備c) 等への活用を目的として開発されてきました。JAEAでは、1Fの事故後、無人船に搭載できる水底の放射性物質濃度を測定するシステムを開発し、海底の放射線分布を測定する基礎技術を蓄積してきましたd)

一方、世界的な情勢を見ると、石油タンカーの無人化、火山を含む島しょ部などの過酷環境における調査、津波時の人命救助、離島や海岸の調査及び災害対応時のツール等、無人船のニーズが高まっています。また、福島県浜通りは太平洋に面しており、海を生業とする大小様々な企業が存在しており、無人観測船を開発する高いポテンシャルを有しています。

そこで、JAEAとウィンディーネットワーク及びJAMSTECを中心として、浜通り企業が持つ要素技術の開発能力をフル活用した研究体制を構築し、平成28年度より「福島県地域復興実用化開発等促進事業費補助金事業」として、これまでの無人船の運用経験や最新の技術を組み込み、「低価格で幅広いニーズに対応できる無人船を浜通り企業から販売する(浜通り印)」を掲げて無人船の開発を目指しました。この技術を実用化することは、福島県浜通り地域において水産業等の再開のための基礎データを提供するだけでなく、将来の原子力防災への活用も期待できると考えています。

【開発内容と成果】

従来の無人船では、放射線計測機器など目的に応じてひとつの測定機器を搭載して船体と測定機器を遠隔で制御していましたが、海底の地形など評価に必要な情報は別に求める必要がありました。また、海底の堆積物の採取を遠隔で行うこともできませんでした。これらの多目的の測定(マルチセンサー)や試料採取の機能を満たすためには、システムの制御技術の開発が必要でした。さらに災害後の調査においては、様々な状況を想定する必要があり狭矮な水路でもアクセス可能な小型の無人船の開発が求められていました。

これらの課題を解決するため、JAMSTEC及び相馬市の企業である(株)磐梯マリーンを中心にムーンプールを船底の中央に配置するレイアウトにより小型船体を設計しました(図3, 表1)。また、JAEAと日本放射線エンジニアリング(株)の開発したファイバー型の放射線検出器や水温、水深、電導度の測定器を組み込んだマルチセンサーや海底土のコアサンプル3)採取装置を小型船に収まるように開発しました(図4)。また、センサーはいわき市の企業である(株)K.S.E.や(株)OCCが開発したウィンチとケーブルを用いて、海底や海中に昇降することが可能です。さらには、定点での調査や指定した航路での安定な調査が可能となるような小型船に最適な横方向のスクリューを開発することにより、無人の小型船により多目的の調査ができることを実証しました。この中でも自動で複数の海底土壌のコア試料を採取するサンプラーは、他に例を見ないユニークな技術です。また、音波測量機器4) を搭載でき、ウィンディーネットワークは世界でも例を見ない無人船で取得した情報による海底地形図 (水面からの深さマップ) の作成に成功しました (図1 (c))。

(開発した無人船で測定できる項目)

  • 海底表面の放射線測定
  • 海底土コアサンプルの採取 (最大20 cm×8本)
  • 海底の写真・動画撮影
  • 海水中の温度及び電導度の測定
  • 海底測量

図3 ムーンプールの作成

表1 開発した無人船のスペック

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