一般のドローン事業者も参画したドローン運航管理システムの相互接続試験に成功

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29事業者が飛行試験を実施

2019-10-30   新エネルギー・産業技術総合開発機構,日本電気株式会社,株式会社NTTデータ,株式会社日立製作所,株式会社ゼンリン,日本気象協会,宇宙航空研究開発機構,福島県,南相馬市,福島イノベーション・コースト構想推進機構

NEDOは、ドローンの運航管理システムの開発プロジェクトを推進しており、今般、NEDO、日本電気(株)、(株)NTTデータ、(株)日立製作所、(株)ゼンリン、(一財)日本気象協会、宇宙航空研究開発機構は、福島県、南相馬市、(公財)福島イノベーション・コースト構想推進機構の協力のもと、10月23日から24日に、「福島ロボットテストフィールド」(福島県南相馬市・浪江町)において、ドローン事業者29者が参加した、同一空域で複数事業者のドローンが安全に飛行するための運航管理システムとの相互接続試験を実施し、1時間1平方kmに100フライト以上のドローンの飛行試験に成功しました。

具体的には、福島ロボットテストフィールドの総合管制室に設置した複数のドローン事業者が情報共有するための運航管理統合機能のサーバーや、先般公開した運航管理システムのAPIおよびAPI接続支援サービスを利用して、ドローン運航管理システムの相互接続試験を実施しました。本試験には、NEDOプロジェクト参画の17事業者に加え、プロジェクトに参画していない一般のドローン事業者12社が参画しました。一般のドローン事業者が本試験に参加したことで、運航管理システムの実用性や相互接続に関するセキュリティー対策の有効性が実証できました。

相互接続試験の様子(左)

総合管制室(右)

図1 相互接続試験の様子

1. 概要

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、同一空域で複数事業者のドローンが安全に飛行するための運航管理システムの開発や、「福島ロボットテストフィールド※1」(福島県南相馬市・浪江町)における運航管理システムの実証試験※2などを実施するプロジェクト※3を進めており、将来的には国際標準への提案を見据え、あらゆるドローン事業者が安心・安全にドローンを運航できる社会を目指しています。
運航管理システムでは、ドローン事業者が運用する「運航管理機能」が、「運航管理統合機能」および「情報提供機能」に接続することで、ドローンの飛行計画やリアルタイムの飛行状況、飛行禁止空域など空域の安全に関する情報などを、他のドローン事業者と共有することが可能となります。
先般、福島ロボットテストフィールドの総合管制室に、複数のドローン事業者が情報共有するための運航管理統合機能を提供するサーバーを設置し、2019年8月30日に稼働しました。また、運航管理システムのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)※4の利用規約の整備などを行いました。これにより、NEDOプロジェクトに参画していない一般のドローン事業者でも、APIを介して本サーバーに接続可能とした、運航管理システムとの相互接続試験の環境を構築しました。※5

今般、NEDO、日本電気株式会社、株式会社NTTデータ、株式会社日立製作所、株式会社ゼンリン、一般財団法人日本気象協会、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構は、福島県、南相馬市、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構の協力のもと、10月23日から24日に、福島ロボットテストフィールドにおいて、運航管理システムの相互接続試験を実施しました。
今回の接続試験ではNEDOプロジェクトに参加する17実施者のドローンと、NEDOプロジェクトに参加していない一般のドローン事業者12社が参画し、2020年代のドローンが普及し社会実装した将来を想定し、1時間1平方kmに100フライト以上のドローンの飛行試験を実施しました。一般のドローン事業者が本試験に参加したことで、運航管理システムの実用性や相互接続に関するセキュリティー対策の有効性が実証できました。
なお、この相互接続試験は、2017年11月22日にNEDOと福島県が締結したロボット・ドローンの実証等に関する協力協定※6、および2019年4月10日にNEDOと南相馬市が締結した福島ロボットテストフィールド等を活用したロボット関連人材育成等に関する協力協定※7に基づいて実施しました。

図2 飛行経路図(左:福島ロボットテストフィールドエリア、右:海岸エリア)

図2 飛行経路図(左:福島ロボットテストフィールドエリア、右:海岸エリア)

図3 前回(2月)飛行試験との比較

図3 前回(2月)飛行試験との比較

2. 社会実装を目指した運航管理統合機能、情報提供機能の開発と評価

運航管理システムのうち、ドローン事業者により運用される「運航管理機能」は、「運航管理統合機能」が提供する複数のドローン事業者間で飛行計画(どの経路やエリアで飛行させるかの計画情報)や飛行状況(飛行させているドローンの位置、高度、速度などのリアルタイム情報)、空域情報(飛行禁止空域や地表障害物などの空域の安全に関する情報)などの情報を共有するサービスを利用することで、同一空域で複数のドローン事業者がドローンを飛行させる場合でも相互の情報を共有することができ、安全にドローンを運用することが可能となります。また、「情報提供機能」が提供する地図情報、気象情報を利用しドローンを飛行させるのに必要な情報を入手できます。
今回実施した相互接続試験では、一般のドローン事業者が参加できるようにネットワークを介して運航管理統合機能と情報提供機能へ接続しました。そのため、ネットワークの安全性を向上させるため、ファイアウォールとIDS(侵入検知システム)を設置し、接続する事業者には認証キーを配布し、認証された事業者のみに接続を許可しました。また、複数ドローンによる気象観測、複数ドローンを隊列飛行させた物流など、複数のドローンを同時に運用するケースを想定した飛行計画や飛行状態の管理を可能にしました。そして、これらのドローンを安全に運用するための空域利用方法や運航ルールについて、運航管理シミュレーションによる検証・評価を行いました。

3. 一般のドローン事業者の参加による相互接続試験

今回の相互接続試験では、NEDOプロジェクトに参画していない一般のドローン事業者が参加しました。参加した一般のドローン事業者は以下です。(10飛行試験実施チーム、12事業者、23機)

事業者名 用途 機体数 特徴
有限会社ワインデング福島 農薬散布 1 長時間運用が可能
株式会社eロボティクス福島
株式会社東日本計算センター
気象観測 12 多数の機体の同期制御
名古屋鉄道株式会社
中日本航空株式会社
地形測量 1 レーザースキャナー
による高精度測量
エアロセンス株式会社 空撮 1 有線給電による
長時間空撮
株式会社ゆめサポート
南相馬
空撮 3 地域密着での
サービス提供
株式会社日立産業制御
ソリューションズ
空撮 1 画像による
航行ルート確認
三菱重工業株式会社 長距離監視 1 高耐久性と長時間運用
ALSOK福島株式会社 警備 2 有線給電による
長時間警備
双葉電子工業株式会社 点検 1 通信塔/プラント点検
ANAホールディングス
株式会社
物流 API接続による
検証参加

(順不同)

相互接続試験に参加する一般の事業者向けには、APIへの接続を支援するサービスを提供しました。飛行計画の申請、承認/否認の結果確認をWebサービスとして提供し、インターネットブラウザで飛行するエリアと時間を申告することを可能としました。さらにドローンが飛行中に自分の位置や速度を運航管理システムへ報告するために機体に搭載する運航管理デバイスを提供しました。
今後も多くの一般の事業者が容易に相互接続試験に参加できるよう、より使いやすい環境の整備を進める計画です。
各事業者が相互接続試験で実施したドローンのサービス、機体については別紙に記載します。

4. プロジェクト実施者の個別技術に関する主な研究成果

今回の相互接続試験では、NEDOプロジェクトに参画している以下のドローン事業者が接続しました。
(11飛行試験実施チーム、17事業者、23機)

事業者名 用途 機体数 特徴
株式会社NTTドコモ 災害調査 4 LTEを用いた運航管理機能による相互接続支援
楽天株式会社 物流 2 拠点間配送
一般財団法人日本気象協会 気象観測 1 ドローン飛行高度の風速などの計測
KDDI株式会社/テラドローン株式会社 警備 4 LTEによる警備映像伝送
株式会社日立製作所
国立研究開発法人情報通信研究機構
物流 5 無線中継による長距離運用
株式会社SUBARU
日本無線株式会社
日本アビオニクス株式会社
三菱電機株式会社
株式会社自律制御システム研究所
衝突回避システムの開発 2 NEDOプロジェクトの別テーマで
研究開発中の衝突回避技術を搭載した
システムと運航管理システムの接続確認
スカパーJSAT株式会社 災害対応 1 衛星通信機能の搭載
株式会社プロドローン 物流 1 大型機体による重量物搬送
空撮 1 小型機体の運航管理システム接続
シミュレーション 汎用シミュレーターの接続検証
株式会社エンルート 災害調査 1 三次元地形モデル作成
イームズロボティクス株式会社 物流 1 液体搬送に向けた振動計測
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 シミュレーション シミュレーションによる
安全性などの評価

(順不同)

今回の相互接続試験における、個別技術に関する成果は以下です。

  • スカパーJSAT(株)は、災害現場や地上通信環境が未整備な地域での目視外運航を想定した飛行試験を行い、通信衛星を経由して衛星ドローンの位置、飛行状態の把握、コントロールをリアルタイムで直接運航管理機能から実施できることを実証しました。
  • (株)NTTドコモは、上空の携帯電話(LTE)回線を用いた運航管理機能を提供し、21飛行試験実施チームのうち7チームに対し運航管理統合機能のAPIの接続を支援しました。ドローンに搭載する運航管理デバイスは約60グラムと軽量であり、大型の産業用ドローンのみならず汎用的なドローンにも搭載が可能なものを実現しました。
  • (株)日立製作所/情報通信研究機構は、複数ドローンの目視外長距離飛行を実現可能としたマルチホップ通信※8を有する位置情報共有装置と多用途運航管理機能の開発を行い、運航管理統合機能、情報提供機能と連携することにより、ドローンハイウェイの利用を想定した「郵送」のユースケースにおいて、安全かつ確実なドローンの運航管理が可能なことを実証しました。
  • (株)SUBARU/日本無線(株)/日本アビオニクス(株)/三菱電機(株)/(株)自律制御システム研究所は、NEDOプロジェクトの別テーマで研究開発中の衝突回避技術を搭載したシステムが、運航管理システムと相互に接続できることを確認しました。これにより無人航空機の運航管理システムと衝突回避技術の統合に目途が付きました。
  • 宇宙航空研究開発機構は、多数のドローンの飛行とその運航管理を模擬するシミュレーターを開発し、運航管理システムの設計・評価を行っています。今回の試験では、このシミュレーターの一部を運航管理システムに接続し、実際に飛行するドローンを相手に衝突を避ける方法と手順を検証しました。
    各事業者が相互接続試験で実施したドローンのサービス、機体については別紙に記載します。

図4 飛行状況管理画面

図4 飛行状況管理画面

5. 今後の予定

今後、NEDO、日本電気(株)、(株)NTTデータ、(株)日立製作所、(株)ゼンリン、(一財)日本気象協会は、2020年2月まで、運航管理システムを運用し、一般のドローン事業者も含めた運航管理システムの機能検証を継続して実施する予定です。

【注釈】

※1
福島ロボットテストフィールド
物流、インフラ点検、大規模災害などに活用が期待される無人航空機、災害対応ロボット、水中探査ロボットといった陸・海・空のフィールドロボットを主な対象に、実際の使用環境を再現し、研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる研究開発拠点。福島県南相馬市と浪江町で2018年度から順次開所中。

※2
運航管理システムの実証試験
同一空域・複数ドローン事業者のための運航管理システムを実証(2019年3月1日ニュースリリース)https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101072.html

※3
プロジェクト
事業名:ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト
実施期間:2017年度~2021年度の5年間を予定
2019年度予算:36億円
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP2_100080.html

※4
API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)
プログラムやソフトウェアの機能を共有する仕組み。APIをインターネット上で公開することで、国内外の事業者にサービスを提供することができる。

※5
相互接続試験の環境の構築
同一空域・複数事業者のドローン運航管理システムとの相互接続試験の環境を構築(2019年10月3日ニュースリリース)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101208.html

※6
ロボット・ドローンの実証等に関する協力協定
NEDOと福島県の連携を強化し、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」において福島ロボットテストフィールドを積極的に活用することでロボット・ドローンの実用化を加速させ、福島イノベーション・コースト構想の推進とロボット・ドローン産業の活性化を図るべく、2017年11月22日に締結された協定。なお、協定の正式名称は「福島ロボットテストフィールドを活用したロボット・ドローンの実証等に関する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構と福島県との協力協定」。
NEDOと福島県がロボット・ドローンの実証に関する協力協定を締結(2017年11月22日ニュースリリース)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100877.html

※7
福島ロボットテストフィールド等を活用したロボット関連人材育成等に関する協力協定
NEDOと南相馬市が連携し、福島ロボットテストフィールドを活用したロボット関連人材育成講座やWorld Robot Summit 2020などのさまざまな機会を活用し、国内外の優秀な人材が集う環境を整備することにより、ロボット関連人材育成の推進、ロボット関連産業の活性化を図るべく、2019年4月10日に締結された協定。なお、協定の正式名称は「福島ロボットテストフィールド等を活用したロボット関連人材育成等に関する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構と南相馬市との協力協定」。
NEDOと南相馬市がロボット関連人材育成などに関する協力協定を締結(2019年4月10日ニュースリリース)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101100.html

※8
マルチホップ通信
データの中継機能を持った無線デバイスを使用し、直接通信が不可能な距離にある端末間で通信を行う技術。本実証では、遠方を飛行するドローンの無線機からの信号を、中継ドローンに搭載された無線機を中継することで遠距離通信を実現。

[別紙]

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