レーダ雨量計の観測特性

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2019-03-28 更新(河川情報センター)

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レーダ雨量計の観測特性

レーダ雨量計は、機器の特性や設置場所、降雨成因の違いなどによって異なった観測特性を示します。そのため、複数のレーダ雨量計による観測データを連続的に合成するためには、適切な品質管理を行う必要があります。

 1.周波数特性

レーダ雨量計はパルス状のマイクロ波※により観測を行っており、マイクロ波はその周波数帯によっていくつかの種類に分類されています。レーダ雨量計はその中のCバンドとXバンドの周波数(IEEEによる分類:下表)のマイクロ波を使って観測を行っています。
一般的な各周波数帯の特徴としては、周波数が高いXバンドの方が、分解能の面で有利ですが、遠方まで観測ができません(伝搬損失が大きく降雨域を通過することによって減衰しやすい)。一方、周波数が低いCバンドは減衰しにくいため、遠方まで観測が可能です。
電磁波のうち周波数3000GHz以下が電波に分類され、その中の波長1cm~10cmの電波(センチ波:周波数 3GHzから30GHz)がマイクロ波と定義されています(波長1mm~1m:周波数 300MHzから300GHzのミリ波、センチ波、極超短波の電波を総称してマイクロ波と呼ぶ場合もあります。
センチ波(SHF[Super High Frequency])は直進性が強い性質を持ち、特定方向に向けて発射するのに適しています)
世界的には、アメリカや中国では主にSバンド、ヨーロッパや東南アジアではCバンドが気象レーダーに多く使われています。

【表1】 マイクロ波の周波数による分類(IEEEによる)
レーダ雨量計の観測特性

 2.高度特性と距離特性

レーダ雨量計による降雨観測では、レーダサイトから遠くなるほどビーム幅が広がり(観測対象空間のビームの充満率が低くなる)、かつ観測高度が高くなり観測精度は低下します。
レーダ雨量計の観測高度は各レーダ雨量計の設置標高や観測仰角によっても異なります。Cバンドレーダ雨量計は山岳によるビームの遮蔽を避けて遠方120km以遠まで観測を行うため、多くが高地に設置されているのに対して、XバンドMPレーダ雨量計は都市域を挟み込むように観測を行うため、多くが平地もしくは都市が見渡せる程度の標高に設置されています。


【図1】 空中線標高約500m、観測仰角0.3°、観測ビーム幅1.0°とした場合の、レーダビーム(幅:黄色ハッチ)のレーダサイトからの距離と高度の関係、黒太線:出水期の平均的な融解層高度

 3.観測値の特性

レーダ雨量計はパルス波を用いて、降雨を間接的に観測していることから、直接的に雨量を観測している地上雨量計と異なり、下記の様な観測特性があります。
①レーダ雨量計は様々な高度の降水を観測しているため、上空で雪が雨に変わる層(融解層:季節や大気の状態によって変動し、地域によっても異なります。出水期は概ね3km以上、冬期は1km以下になることもあります。)や、さらにその上空を観測する場合があり、氷晶が融けて雨に変わるところをとらえることによる円弧状の強エコー域(ブライトバンド)が発生したり、雨に対する関係式を用いて雪を観測することによって雨量が過少になることがあります。
②他のレーダから発射された電波を受信して(干渉を受けて)、直線状または螺旋状の本来存在しないエコーが発生することがあります。
③レーダ観測域外まで到達して返ってきた電波を受信することで、二次エコー(観測域内には本来無いエコー)が発生することがあります。
④電波が大気の成層により異常伝搬(屈折)し、本来対象としていないものからの弱い反射エコーが晴天時に発生することがあります。
⑤レーダ雨量計が観測しているのは上空の降水です。そのため、レーダ雨量計が観測した降水は、落下の際に風による移流の影響を受けます。雨粒(直径0.1mm~8mm程度:9mm以上では分裂)の落下速度(重力と空気抵抗が平衡した時の終端速度)は概ね0.3m/sから10m/sで、上空の風速は高高度ほど大きくなることが多く、数m/sから数十m/s程度となっています。雨粒が高度3kmから5m/sで落下してくると仮定して、水平風は鉛直方向に一様に5m/sであるとした場合、レーダで観測した降水は、地上到達時には最大3kmずれることになります。ただし、実際には鉛直方向の風や、雨粒の落下の際の拡散、併合、相変化等による質量や形状の変化、水平風の風向の高度による違い等の影響も受けながら地上に到達しています。従ってレーダ観測雨量は、その直下の地上雨量と必ずしも1:1に対応するものではありません。
⑥地上や海面から返ってきた電波によりクラッタが発生することがあります。地上から返ってきた電波はグランドクラッタと呼ばれ、地表の状態や季節等により強度が変動します。一方、海面から返ってきた電波はシークラッタと呼ばれ、台風や低気圧の通過に伴ううねり等により顕在化します。
⑦レーダサイト直上を強雨域が通過することにより、レーダを覆うレドームの表面に水膜が発生し、電波が水膜により減衰して、観測域全域にわたって過少観測となることがあります。
⑧レーダ雨量計が観測しているのは観測対象とする空間の平均値です。単体のレーダ雨量計が観測する1メッシュに該当する空間は、円錐台(メガホンの様な形)をしており、レーダサイト近傍では、CMP:高さ250m×底面直径3m程度、XMP:150m×3m程度ですが、定量観測域の端(CMP:120km,XMP:60km)ではCMP:250m×1.5km程度、XMP:150m×1.3km程度の大きさとなっており、レーダサイト遠方ほど大きな空間の平均的な状況を観測しています。

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