2019-03-28 更新(河川情報センター)
その他のレーダ雨量計関連技術
これまで紹介したものほかに、レーダ雨量計に関する技術と最近のトピックスを紹介します。 より詳しく知りたい方は参考文献を参照ください。
1.フェーズドアレイ気象レーダ
大雨をもたらす雨雲の早期検出と発達の監視を目的として、X-バンドフェーズドアレイ気象レーダ(PAWR)が2012年に日本で初めて開発されました1)。
開発されたPAWRは、複数のスロットアンテナで構成される仰角方向に電子走査を行う1次元フェーズドアレイ・アンテナを用いた、仰角方向のビーム幅の広い電磁波(ファンビーム)の送受信と方位角方向のアンテナの機械回転による走査方法を採用しています2)3)。XバンドMPレーダが従来のパラボラアンテナを用いたビーム幅の狭い電磁波(ペンシルビーム)の送受信による 20~30秒毎に1仰角PPI(Plan Position Indicator)観測を実施するのに対し、PAWRは30秒毎の高度方向10~15kmを解像する約100仰角PPI観測相当の3次元観測を実現しています。なお、このPAWRは、単偏波機能(水平偏波のみ)とドップラー機能を有し、半径60 km以内を観測範囲とします。現在、上述の走査方法と機能を有したPAWRが、国内において5台試験運用されています。
2017年には、パッチアンテナを用いた電磁波の送受信方法の開発により実現した二重偏波機能を有する、マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)が新たに開発されました4)。偏波パラメータの利用による雨雲の検出と監視手法の高度化とともに、従来より高い時間分解能と精度を有する雨量計としての活用が期待されます。
【図1】フェーズドアレイ・アンテナのイメージ。
【図2】X-バンドMPレーダーとPAWRのそれぞれの電磁波の送受信のイメージ。
【図3】日清紡中央研究所(千葉県)に設置されているPAWR。レドーム内に
フェーズドアレイ・アンテナが収められています。(FRICS 撮影)
参考文献:
1) (国研)情報通信研究機構, 2012: 日本初 「フェーズドアレイ気象レーダ」を開発 ,
http://www.nict.go.jp/press/2012/08/31-1.html
2) 磯田ほか, 2014: フェーズドアレイ気象レーダによる豪雨の3次元観測, 可視化情報学会誌, 34, 4-9. DOI: http://doi.org/10.3154/jvs.34.4
3) Mizutani et al., 2018: Fast-scanning phased-array weather radar with angular imaging technique, IEEE Trans. Geosci. Remote Sens., 56, 2664-2673. DOI: http://doi.org/10.1109/TGRS.2017.2780847
4) (国研)情報通信研究機構, 2017: 世界初の実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」を開発・設置,