SNS使用と育児中のお母さんの孤独感との関連を見出しました

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2018/08/24 京都大学

萬代真理恵 医学研究科教務補佐員、中山健夫 同教授、高橋由光 同准教授、家曽美里 同博士課程学生らの研究グループは、乳幼児を育児中の母親にアンケート調査を行った結果、孤独感には、SNSでのつながりや、家族、友人との社会的つながり、経済的状況、対人関係のパターン、気分不安障害の可能性の有無が関連していることがわかりました。

本研究成果は、2018年8月16日に英国の国際学術誌「BMC Women’s Health」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

私は、もともと研究とは関わりなく過ごしてきたのですが、若いお母さんが、インターネットの普及でコミュニケーションの手段も多様化し、情報も多くなっているにもかかわらず、20年前の自分たちと同じく孤独感を抱えて子育てをしているのはなぜだろうか、と思ったことが、京大の医学研究科に社会人入学しこの研究を行ったきっかけです。

「ワンオペ育児」のつらさは物理的な孤立だけではありません。今回、乳幼児を育児中のお母さんたちの孤独感に焦点を当て、孤独感に関連する要因を明らかにできたことで、支援のきっかけになって、少しでも育児中のお母さんたちの力になれればいいなと思います。

概要

「ワンオペ育児」に象徴されるように、日本では、孤独な育児が社会問題となっています。また、育児中の母親を取りまく社会環境は、インターネット、SNSの普及によって変化しています。

本研究グループは、2014年に滋賀県長浜市で乳幼児健診を受診した0歳から3歳児の母親763名にアンケート調査を行い、孤独感に関連する要因を調べました。その結果、SNS使用と育児中のお母さんの孤独感との関連性などが見出されました。

本研究は、乳幼児を育児中の母親の孤独感について、対人関係パターンや、携帯電話などの利用、SNSを含めた社会的つながりとの関連を調べた初めての研究で、今後、SNSの利用を考慮に入れた、母親への育児支援に役立つ基礎資料となることが期待できます。

詳しい研究内容について
概要
「ワンオペ育児」に象徴されるように、日本では、孤独な育児が社会問題となっています。また、育児中の 母親を取りまく社会環境は、インターネット、SNS の普及によって変化しています。そこで、京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 健康情報学分野 萬代真理恵 専門職学位課程学生 研究当時、現 京都大学 医学研究科附属ゲノム医学センター教務補佐員)、中山健夫 同教授、高橋由光 同准教授、家曽美里 同博士課 程学生らの研究グループは、2014 年に滋賀県長浜市で乳幼児健診を受診した 0 歳から 3 歳児の母親 763 名に アンケート調査を行い、孤独感に関連する要因を調べました。その結果、孤独感には、SNS でのつながりや、 家族、友人との社会的つながり、経済的状況、対人関係のパターン、気分不安障害の可能性の有無が関連して いることがわかりました。本研究は、乳幼児を育児中の母親の孤独感について、対人関係パターンや、携帯電 話などの利用、SNS を含めた社会的つながりとの関連を調べた初めての研究で、今後、SNS の利用を考慮に 入れた、母親への育児支援に役立つ基礎資料となることが期待できます。
本成果は、2018 年 8 月 16 日に英国の国際学術誌「BMC Women’s Health」のオンライン版に掲載されま した。
1.背景
育児中の女性の孤独感は、母親自身の抑うつや健康状態の低下を招くのみならず、子どもの健康や虐待等へ の影響の恐れもあります。けれども、育児中の女性に対する孤独感に関して、社会的要因としてインターネッ ト上のつながりについて検討した研究はありませんでした。また、育児中の女性が孤独感を感じる状況は、社 会的ネットワークの変化によって変わってきているのではないかと考えられますが、これらを含めた社会的要 因や個人的要因である内的作業モデルと孤独感との関連を検討したものはありませんでした。
2.研究手法・成果
滋賀県長浜市で、2014 年 7 月 28 日~同 9 月 29 日に乳幼児健康診査 4 か月、10 か月、1 歳 8 か月、2 歳 8 か月児健診)を受診するために来訪した母親 763 名を対象に、無記名自記式質問票を配布しました。質問項 目は、改訂版 UCLA 孤独感尺度、内的作業モデル尺度の下位尺度 「SECURE 安定)尺度」、K6、Lubben Social Network Scale 短縮版 LSNS-6)、通信機器と情報源の種類など 71 項目です。
分析は、孤独感得点を従属変数とし、「経済的ゆとり」、「健康状態」、「内的作業モデル安定型 対人関係の パターン)」、「託児の有無」、LSNS-6 の 4 項目 「家族」、「友人」、「ママ友」、「SNS」、「書籍 雑誌利用頻度」、 「スマートフォン使用時間」、「K6」、を独立変数とする重回帰分析を行いました。結果、回収した調査票 638 部 回収割合 89.2%)のうち欠測を除く 523 部 有効回答割合 73.1%)を解析対象としました。対象者の孤独 感尺度の平均値と標準偏差は 36.1±9.7 得点範囲 20~80)でした。重回帰分析の結果、経済的ゆとりの低さ、 SNS、家族、友人との社会的つながりの低さ、対人関係のパターンを示す「内的作業モデル安定型」の低さ、 気分不安障害の可能性、と孤独感とに有意な関連が見られました。
3.波及効果、今後の予定
世界的にも、乳幼児を育児中の一般の母親の孤独感について調べた研究はあまりありません。実際に育児中 の母親が孤独感を抱いていることが明らかになり、その関連要因について提言することで、育児支援がもっと 進むことが期待できます。本研究だけから一般的な結論を出すことはできませんが、今後の支援を考えていく 上で、SNS でのつながりを視野に入れての、双方向な情報提供支援を、公的または民間のサービスとして検討 する意義を示すものと言えます。また、今回人数は少ないですがティーンエイジャーである若い母親の孤独感 は全体平均よりも 10 ポイント近く高く、より孤独感を抱えながら育児を行っている可能性があります。この ティーンエイジャーである母親をハイリスク集団と認識して、医療機関と行政が連携を取って育児支援を考慮 していくよう、今後提言していく必要があります。
ただし、本研究は横断研究であるため、SNS を利用した結果孤独感が減少するというような因果関係を示す ものではなく、この点は本研究の限界と言えます。また、本研究の対象とはならなかった、健診に来られなか った母親が健康や経済上の問題を抱えている場合は、今回の対象者よりも孤独感が高い可能性があります。そ のためにも、今後ほかの集団でも同様の結果が得られるか、さらなる研究が期待されます。
4.研究プロジェクトについて
記載すべき利益相反はありません。本研究は京都大学大学院医学研究科健康情報学分野運営費によって実施 されました。
<用語解説>
・改訂版 UCLA 孤独感尺度: 20 項目からなる質問の得点で孤独感を測定する尺度。得点範囲
は 20~80 で、高 いほど孤独感が高い。
・内的作業モデル尺度: 愛着理論に基づいて開発された、対人関係の構築パターンを測定する
尺度。その中で SECURE(安定)尺度は、得点範囲が 6~36 で、高いほど他人からの援助を
有効に活用できるとされる。
・K6: 気分不安障害の程度を測定する尺度。得点範囲は 0~24 で、高いほど気分不安障害が
強い。
・Lubben Social Network Scale: 社会的つながり ソーシャルネットワーク)の程度を測
定する尺度。社会 的つながり 家族、友人など)に関する人数について質問し、それぞれの
得点範囲は 0~15 で、得点が高 いほど社会的つながりが大きい。
<論文タイトルと著者>
タイトル: Loneliness among mothers raising children under the age of 3 years and
predictors with special reference to the use of SNS: A community-based
cross-sectional study
(3 歳以下の子供を育児中の母親の孤独感と、SNS 使用を中心にしたその予測因子
コミュニティベ ースの横断研究)
著     者: Marie Mandai, R.N., M.P.H. 萬代真理恵)
掲 載 誌: BMC Women’s Health  DOI 10.1186/s12905-018-0625-x
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