惑星の明るさの計算方法が変わりました

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2021-12-15 国立天文台

図:夕方の空に輝く月と金星(月の右下)
夕方の空に輝く月と金星(月の右下)。(撮影:長山省吾、クレジット:国立天文台) オリジナルサイズ(2.2MB)


このごろ、晴れた日の夕方に南西の低い空を見ると、金星が大変明るく輝いていることに気がつきます。12月4日には最大光度のマイナス4.9等となりました。この「マイナス4.9等」という数字を見て「あれ?」と思った方はいませんか?実は、金星の明るさは、これまで最大でもマイナス4.7等程度としていたのですが、その数値が変わったのです。

金星の明るさの変化

地球から見ると、金星は遠ざかったり近づいたりしながら満ち欠けを繰り返しているために、その明るさが変化します。惑星は、地球から見て、太陽の光を反射する面積が大きく見えるほど明るくなります。ですから、一般的には地球からの距離が近い場合、また欠け方が小さい場合に、明るく見えることになります。しかし金星の場合には、地球より内側の軌道を回る惑星ですので、地球に近い位置にあるほど欠け方が大きくなります。そのため、地球からの距離が最も近い内合のころでも、最も欠け方が小さい外合のころでもなく、その間の三日月型に欠けたころに最大光度となります。

図:地球から見た金星の満ち欠け
地球から見た金星の満ち欠け。内合のころは、金星は最も大きく見えるが、最も大きく欠けている。逆に、外合のころは、ほとんど欠けていないが、最も小さく見える。(クレジット:国立天文台) オリジナルサイズ(768KB)

最新の計算方法に変更

国立天文台は「暦象年表」という、国民の祝日や二十四節気などの暦や、惑星の位置や明るさなどさまざまな情報を掲載した冊子を作っています。2022年版からは、惑星の明るさの計算方法を、1986年以降長く使っていた方法から、太陽観測探査機SOHOの観測成果などを反映させた最新の方法に変更しました。この変更によって、金星の最大光度が明るくなったり、内合前後の増光現象について改善されたりしています。

この新しい計算方法で12月4日の金星の最大光度を算出すると、今まで見たことのない「マイナス4.9等」という値になるのです。

図:これまでの方法(茶色の破線)と最新の方法(青の実線)による、金星の明るさの計算結果
これまでの方法(茶色の破線)と最新の方法(青の実線)による、金星の明るさの計算結果。(クレジット:国立天文台)

文:石崎昌春(国立天文台 天文情報センター)

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