2019/7/10 アメリカ合衆国・ユタ大学
・ ユタ大学が、熱放射を従来以上に電気に変換する、極小なシリコンチップを開発。熱放射によるエネルギーを効率的に電気に変換することにより、従来廃棄されていた大量なエネルギーの有効活用が期待される。
・ 熱放射から得られるエネルギー量には、「黒体限界」という理論的な限界があると言われているが、本研究では、2 枚のシリコンの表面を極薄幅まで接近させ、黒体限界を大きく越えるエネルギー量が得られたことを実証。
・ 研究チームでは、2 個のシリコンウェーハー間の真空ギャップが 100 ㎚の 5mm x 5mm サイズのチップを作製。チップが真空時に、一方の表面を加熱し、もう一方の表面を冷却して熱流束を発生させ、発電した。この手法の発電には特に特徴があるわけではないが、新技術では、2 個のシリコン表面を互いに接触させずに、顕微鏡的スケールで、均一にフィットさせる手法を開発。より接近させることは、より多くの発電につながる。黒体限界を超える高効率な熱放射は、今までできなかったが、ナノレベルでは実現可能だという。
・ 今後は、この技術をノートパソコンやスマートフォンなどの携帯デバイスのクールダウンに活用する他、その放射熱を 50%以上電力に変換して、バッテリーに還元できるようにする。新技術によるシリコンチップは、太陽光パネルの変換効率の向上や、自動車エンジンの廃熱発電などへの利用が期待できる。また、ペースメーカーなど埋め込み式の医療デバイスに搭載して、バッテリー交換を不要とさせたり、コンピュータープロセッサーをファンなしで冷却し、エネルギー消費の節約につなげたりも可能。従来は環境に放出されるだけであった廃熱の高効率な再利用技術の開発は、環境への負担が少ない循環型エネルギー社会形成への貢献が期待されている。
URL: https://unews.utah.edu/beat-the-heat/
(関連情報)
Nature Nanotechnology 掲載論文(アブストラクトのみ;全文は有料)
A near-field radiative heat transfer device
URL: https://www.nature.com/articles/s41565-019-0483-1
<NEDO海外技術情報より>