2018/08/03 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構,一般社団法人漁業情報サービスセンター
気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)は、平成29年12月23日の打上げ以降、順調に運用を続けており、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、本年12月の観測データの提供開始に向けて、初期校正検証運用※1を行っております。この中で、JAXAは、一般社団法人漁業情報サービスセンター(JAFIC)に対して、海面水温を含む3種類の準リアルタイムプロダクトの試験配信を7月25日より開始しました。
「しきさい」は、これまで水産分野で利用されてきた地球観測衛星と比べて、高解像度で観測が可能であり、海色と水温の同時観測(マルチリモートセンシング)によって、漁業利用と水産研究の両方に応用されることが期待されています。漁業利用では、漁場付近の海面水温等の海洋環境をより詳細に把握できるようになることから、漁場探索の高度化につながります。また、水産研究では、沿岸環境のモニタリング精度の高度化によって、藻場干潟、赤潮発生の監視や、沿岸漁業の資源管理への貢献が期待されています。
JAFICは、海面水温の現場データの提供等を通じてJAXAの校正検証に協力するとともに、試験配信されたプロダクトを用いて漁業者、調査研究機関等に対する漁海況情報提供サービス開始に向け準備を行う予定です。また、JAXAはJAFIC等から得られた現場データを活用して校正検証を進めていく予定です。
※1
初期校正検証運用
地上観測データとの比較などによるデータの精度確認やデータ補正等を行う運用
[別紙]
図1 4/19の「しきさい」の表面水温画像とまき網漁場
配色は寒色ほど温度が低く、暖色ほど温度が高い。赤丸はマイワシまき網漁場。漁場の南側は黒潮の高水温帯(赤)が分布しており、黒潮域から反流状に暖水(オレンジ~緑)が北上している。また、鹿島沿岸は冷水(青)が分布している。漁場は暖水が北上するエリアに形成されていることがわかる。
図2 4/28の「しきさい」クロロフィル濃度(植物プランクトン)分布図と赤潮分布
配色は寒色ほどクロロフィル濃度が低く、暖色ほどクロロフィル濃度が高い。赤丸のエリアは実際に珪藻類の赤潮が発生した海域(熊本県水産研究センターHPより)。有明海の湾奥から熊本県にかけてクロロフィル濃度の高いエリアが南北に分布している。諫早湾付近もクロロフィル濃度が高い。赤潮発生海域はクロロフィル濃度画像でも値の高い領域となっている。