3Dスキャンによる雷保護範囲検討手法

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2020-03-30 JAXA

落雷対策の必要性

JAXAの事業所の多くは多雷地区(雷被害のリスクが高い地区)にあり、落雷による機器等の故障が年数件発生している状況にあります。

ロケット・衛星関連の建築物が数多く存在する種子島や能代は、とりわけ落雷が多い地区です※1。多雷地区の重要建築物の落雷対策は極めて重要ですが、最も厳しいレベルで保護しても100%落雷から防ぐことはでききません。そのため費用対効果を十分考慮した落雷対策(避雷針・避雷導体・避雷器等)※2の実施が求められています。

※1 参考:雷統計データ(雷ぶらり)

※2 建築基準法第三十三条では、「高さ二十メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。」と定められていますが、JAXAにおいては多雷地区における建築物の重要度を選定し、高さ20m以下の場合でも避雷対策を行っている建築物もあります。

雷保護範囲検討の現状

雷保護範囲は、回転球体法(新JIS基準)や角度法(旧JIS基準)を用いて周辺地面と保護対象物(建築物)の位置関係を確認しながら決定しています。

しかし、雷保護範囲は現状2Dデータで検討している場合が多く、様々な角度からの作図・確認が必要となり、容易に確認ができないことがあります。

具体的には、地面(地形)と対象建築物の位置が重要となりますが、地盤の高さは同一ではないこと、増改築の繰り返しや、外壁等に照明などの突起物が設置されていることなどから、完成図等の図面情報のみでは正確な位置関係を把握することが困難であるという課題があります。

3Dスキャンによる新検討手法

現状の問題を解決する手法として、建築物と土地の3DスキャンをUAV※3で実施し、3Dデータでの雷保護範囲を確認することが最も効率よく、容易な手法であることが分かりました。2018年3月に能代ロケット実験場の敷地全体の3Dスキャンを実施し、2018年10月には、株式会社パスコと、この手法に関する特許の共同出願を実施しました。

能代ロケット実験場での3Dスキャン

撮影に使用したドローン

能代ロケット実験場

撮影に使用したドローン

撮影に使用したドローン

能代ロケット実験場

撮影は下記の仕様に基づいて実施しました。

撮影結果

赤色の部分は新検討手法導入前の雷保護範囲です。画像右上のチェックボックスをクリックすると、新検討手法による雷保護範囲が表示されます。

■ 既存保護範囲

新 保護範囲

Leaflet | JAXA・(株)パスコ

■ 既存保護範囲(別角度から)

新 保護範囲(別角度から)

Leaflet | JAXA・(株)パスコ

得られる効果
  • UAVによる撮影した高精度な空中写真から3次元地形モデルを作成することで、建築物の形状に加えて地形の高低差や建築物の配置を加味することで、敷地全体を網羅したより詳細な雷保護範囲の生成ができるようになりました。
  • 建物と地形の総合的な3次元データであることから、建築物間の雷保護範囲も確認でき、避雷設備の最適な配置計画が立案できます。
  • 3Dデータを用いており視覚的にもイメージしやすいため、建築等の専門知識がない場合でも合意形成が容易になります。
  • 既存の図面や測量図が十分にない場合に、3Dスキャンをすることで実測し図面化する時間が不要となり、大幅に時間が短縮されます。

※3 UAV … Unmanned Aerial Vehicle の略。無人航空機。いわゆる「ドローン」のこと。

今後の展開

  • 他事業所の雷保護範囲の確認や重要なアンテナ・装置等に対する保護状況を、本手法を用いて確認していく予定です。
  • 広い範囲を一度に調査することに適しており、沿岸部にある広大な敷地を有する発電施設等の重要な建築物に対しても迅速に雷保護範囲を確認できるように本手法の高度化(調査、設計作業のシームレス化)を進めてまいります。