2019/4/1 英国・ウォーリック大学
高耐久性の光滑剤やフロントガラス、ディスプレーに使用できる透明なポリエチレンフィルムをアルミ並みに強化する新技術
(New technique to make transparent polythene films as strong as aluminium that could be used in impact resistant glazing, windscreens, and displays)
・ ウォーリック大学の WMG(ウォーリック・マニュファクチャリング・グループ)とロンドン大学クイーン・メアリーが、アルミニウムのように強靭だが超軽量の透明なポリエチレンフィルムの製造技術を開発。
・ 同新材料の使用することで、光滑剤、フロントガラス、サンバイザーやディスプレーの耐久性を向上させながらガラスのような透過性を維持しつつ軽量化が図れる。
・ 重く割れやすいガラスの代替として、透明プラスチック材料であるポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)が注目されているが、アルミニウムのような工学材料に比べるとこれらの材料では機械的性能が不十分。
・ 高密度ポリエチレン(HDPE)の温延伸による、高強度プラスチックフィルムを製造する現行技術により、金属のような従来の工学材料を超える材料が製造できる。
・ 延伸前のポリマーの微細構造は茹でたスパゲティーに例えられるような状態であるが、延伸後にポリマー分子がまっすぐな乾麺のように整列することで、ポリマーの強度が向上する。
・ ただし、延伸処理したポリエチレン材料は、延伸プロセスで発生する欠陥や空隙により半透明になる。これにより機械的特性と光透過性の両方を必要とするアプリケーションが制限される。
・ 添加剤を使用することで高強度と 90%の透過性を獲得した例もあるが、今回、添加剤を使用することなく HDPE に強度と剛性を付与しながら透過性を保持する製造後工程技術を新たに開発した。
・ 同技術では、HDPE の溶融温度を下回る温度領域にて HDPE ポリエチレンシートを延伸することで、 90%の透過性を達成。強度と透過性の最適なバランスが、90℃から 110℃の間の延伸温度で得られることがわかった。
・ このような透過性は、高温度の延伸による分子鎖移動の促進によりシートの欠陥が発生せず、欠陥で起こる光の散乱が低減することで得られる。
・ 同新材料のヤング率は 27GPa、延伸方向における最大引張強度は 800MPa で、PC と PMMA のそれらの 10 倍超(参考としてアルミニウムのヤング率は 69GPa、航空機グレードのアルミニウム合金の引張強度は最大で約 500MPa)。ポリエチレンの密度は 1000kg/㎥を下回り、アルミニウムでは約 2700kg/㎥であるため、重量ベースでは透明フィルムが性能を上回る。
URL: https://warwick.ac.uk/newsandevents/pressreleases/new_technique_to
(関連情報)
Polymer 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Glass-like transparent high strength polyethylene films by tuning drawing temperature
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0032386119302605?via%3Dihub
<NEDO海外技術情報より>