通信衛星群による天文観測への悪影響についての懸念表明

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2019-07-09  国立天文台

現代社会では通信衛星や放送衛星によって、私たちは豊かな生活を送ることができます。衛星放送番組を日本中で楽しんだり、米国のGPS(全地球測位システム)や日本のQZSS(準天頂衛星システム「みちびき」)からの信号を携帯電話で受信することにより、自分の位置を正確に知ることができるのは、その例です。

一方、これらの衛星は太陽光を反射するため、天文研究用の可視・赤外線望遠鏡では「人工の星」として認識されます。さらに衛星と地上間の通信電波が、電波天文観測に影響を与えることもあります。このような状況から、国立天文台は天文観測環境を維持・保護するための活動を進めており、2019年4月1日に「周波数資源保護室」を設立したところです。

2019年5月24日、米国スペースX社は衛星通信によって世界中にインターネット接続サービスを提供するためのスターリンク(Starlink)衛星群の打ち上げを始めました。第1回目である今回は60基の打ち上げでしたが、最終的には総計12000基の衛星群から成る巨大通信衛星ネットワークを構築する計画です。この衛星群が完成すると、約200基の衛星(即ち、人工星)が常時空に見えると予想されています。実際に、米国アリゾナ州にあるローウェル天文台は、銀河の観測中にスターリンク衛星の光による多数の斜線が入った画像を取得しました。

これを踏まえ、世界の天文学者から成る国際組織・国際天文学連合は、スターリンク等の巨大衛星群による天文観測への懸念を表明する声明を6月3日に発表しました。この声明では、可視光線における観測への影響だけではなく、衛星と地上とを結ぶ無線通信による電波天文観測への懸念も表明しています。

国立天文台は、日本の天文学研究の中心機関として、すばる望遠鏡やアルマ望遠鏡等の研究施設を建設・運用し、数々の先端的研究成果を挙げてきました。宇宙、そして星空は全人類の宝です。人類がこの宇宙をよりよく知るためには、様々な波長において「空」がきれいに見える状態を維持することが必要です。このため国立天文台は、国際天文学連合や世界の天文研究機関と足並みをそろえ、関連衛星事業者の方々と協力して解決策を図っていくことが重要であると考えています。

皆様のご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

2019年7月9日
自然科学研究機構 国立天文台

2019年5月25日21時52分の通信衛星「Starlink」の様子(クレジット:平塚市博物館)

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