2018-02-13 東京大学,大阪大学,物質・材料研究機構,高輝度光科学研究センター,日本原子力研究開発機構,理化学研究所
東京大学を中心とする研究グループは、理化学研究所、大阪大学、高輝度光科学研究センター、物質・材料研究機構、日本原子力研究開発機構らの協力のもと、セリウムモノプニクタイドと呼ばれる物質群において、物質内部に隠れたトポロジーの決定に世界で初めて成功しました。
概要
東京大学物性研究所 (所長 瀧川仁) の黒田健太助教、近藤猛准教授を中心とする研究グループは、理化学研究所創発物性科学研究センターの有田亮太郎チームリーダー、大阪大学大学院理学研究科の越智正之助教、高輝度光科学研究センターの室隆桂之主幹研究員、物質・材料研究機構の北澤英明副拠点長、日本原子力研究開発機構の芳賀芳範研究主幹らの協力のもと、セリウムモノプニクタイドと呼ばれる物質群において、物質内部に隠れたトポロジーの決定に世界で初めて成功しました。
2016年ノーベル物理学賞の対象となった物質に潜在するトポロジーによって区別されたトポロジカル電子相の研究は世界中で爆発的に行われています。トポロジカル電子相では、物質の内部 (中身) に隠れたトポロジーを反映して、物質表面 (見かけ) にトポロジカル電子相特有な電子状態が発生します。そのため、物質が持つトポロジーは見かけだけで判断されてきました。
同研究グループは、物質のトポロジーを見かけでなく中身で判断するのに適した光である軟X線を用いることで、物質がトポロジカル電子相へ変化していくトポロジカル相転移の観測に成功しました。本研究成果により、見かけに頼らず物質内部に隠れた本質的なトポロジーを直接的に決定することが可能となるため、今後この手法を用いることで、さらに多彩なトポロジカル電子相発見に繋がることが期待されます。
この研究成果は、Physical Review Letters 誌 オンライン2 月13日版 (米国東部時間) に掲載される予定です。
プレスリリースの図1 : 本研究で観測された相対論効果によるトポロジカル相転移。
相対論効果の大きさに依存した電子構造の変化。相対論効果が充分大きくなると電子構造の反転が発生する。この反転が起源となり、物質内部のトポロジーが変化して非トポロジカル電子相からトポロジカル電子相へ転移する。通常、相対論効果が小さく反転が起こる前が非トポロジカル電子相となり、相対論が大きく反転が起こったあとがトポロジカル電子相となる。
発表雑誌
論文タイトル : Experimental determination of topological phase diagram in Cerium monopnictides
著者 : Kenta Kuroda*, M. Ochi, H. S. Suzuki, M. Nakayama, R. Noguchi, C. Bareille, S. Akebi, S. Kunisada, T. Muro, M. D. Watson, H. Kitazawa, Y. Haga, T. K. Kim, M. Hoesch, S. Shin, R. Arita, and Takeshi Kondo (*:責任著者)