デジカメで鉢植え植物の精密な3次元形質を自動測定できるようになった

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カメラ1台あればいい:超低コストな植物の3次元自動測定手法を開発

2021-06-15 東京大学

発表者
Alexander Feldman(東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構 特任研究員)
Haozhou Wang (東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻 博士課程1年)
深野  祐也 (東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構 助教)
加藤 洋一郎 (東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻 教授)
二宮  正士 (東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構 特任教授)
郭    威 (東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構 助教)
発表のポイント
  • 画像解析技術を使って、一般的なデジタルカメラで撮影された画像から鉢植え植物の3次元データを高精度で自動測定する、Pythonパッケージ(EasyDCP)を開発・公開しました。
  • 本手法で推定された植物の草丈と投影葉面積は、手作業での測定値と非常に高い相関があり、市販の高額なレーザースキャナーと同等またはわずかに高い精度で形質を測定できました。
  • 本手法は、鉢植えの植物の3次元形質データが安価・高速・大量に測定可能ですので、幅広い植物科学分野で利用が期待されます。
発表概要

東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構の郭威助教らは、画像解析技術を使って、デジタルカメラで撮影された画像から鉢植え植物の3次元データを高精度で自動測定するPythonパッケージ(EasyDCP:Easy Dense Cloud Phenotyping)を開発・公開しました。近年、植物の3次元形質を非破壊で測定するための手法が発展していますが、生態学分野ではほとんど用いられていません。その理由のひとつが、既存の計測システムは、コストが高く、大規模で、特別な装置や専用施設を必要とするためです。
大量の個体の測定を必要とする生態学的な研究には、野外や温室で栽培した鉢植え植物を安価に高速に測定するシステムが必要です。そこで、一般的なデジタルカメラと、市販およびオープンソースのソフトウェアを組み合わせて、鉢植え植物の撮影画像から3次元形質を自動で測定するパイプライン(EasyDCP)を開発しました(図1)。EasyDCPの精度を評価するために、5種類の鉢植え植物(ホソアオゲイトウ、ツユクサ、オヒシバ、メヒシバ、ハキダメギク)の草丈と投影葉面積を、手作業での測定値と商用のレーザースキャナーによる測定値とで比較しました。すると、投影葉面積はレーザースキャナーと同程度(Easy DCP: 決定係数 0.96、レーザースキャナー: 決定係数 0.96)、草丈に関しては本手法の方が正確でした(Easy DCP: 決定係数 0.96、レーザースキャナー: 決定係数0.86)。本手法は、既存の3次元形質計測システムに比べて、安価で、撮影から測定までが半自動化されており、多様なサイズの植物を計測できます。そのため、生態学的な研究をはじめ、これまで3次元形質測定が用いられてこなかった様々な植物科学分野への応用が期待されます。

発表内容

デジカメで鉢植え植物の精密な3次元形質を自動測定できるようになった

図1 開発した手法(EasyDCP)の大まかな流れ
デジタルカメラで撮影した後(a, Imaging)、EasyDCPで植物個体を3次元再構築し(b, EasyDCP_Creation)、3次元データを元に様々な形質を測定する(c, EasyDCP_Analysis)。


植物の形を計測することは、植物学の最も基本的な作業です。近年の技術的な発展により、ゲノムデータは大量に手に入るようになりましたが、草丈・投影葉の面積・草姿など植物の形に関する表現型の測定は未だに労力がかかります。そのため、植物の2次元・3次元形質を大量に高速で測定する技術開発が盛んに行われています。しかしながら、これまでの技術は計測のための大規模な専用施設や、レーザースキャナーのような特別で高価な装置を必要となるものです。そのため野外や温室で栽培した鉢植え植物を安価に高速に測定するシステムが開発されれば、さまざまな植物科学分野の役に立つはずです。
そこで、通常のデジタルカメラと、市販およびオープンソースのソフトウェアを組み合わせて、鉢植え植物の撮影画像から3次元形質を自動で測定するパイプライン(EasyDCP)を開発しました(図1)。このパイプラインは、①デジタルカメラを用いた植物株の撮影、②撮影された2次元画像から3次元点群構築を行う、③3次元点群データを分析し、植物の形質に関わる特徴量の計算の3ステップからなります。
EasyDCPの精度を評価するために、5種類の植物(ホソアオゲイトウ、ツユクサ、オヒシバ、メヒシバ、ハキダメギク)を栽培し、各個体の草丈と投影葉面積を手作業での測定値と商用のレーザースキャナーによる測定値とで比較しました。すると、EasyDCPは非常に高い精度で形態形質を推定できることがわかりました。具体的には、投影葉面積はレーザースキャナーと同程度(Easy DCP: 決定係数 0.96、レーザースキャナー: 決定係数 0.96)、草丈に関しては本手法の方が正確でした(Easy DCP: 決定係数 0.96、レーザースキャナー: 決定係数 0.86)。
本手法は、撮影から測定までが半自動化されています。また、特別な撮影装置を必要とせずカメラで撮影するだけですので、多様なサイズの植物を計測できます。加えて、必要なコストは10万円程度(デジタルカメラと有料の3次元点群構築ソフトウェア)と非常に安価です。そのため、生態学的な研究をはじめ、これまで3次元形質測定が用いられてこなかった様々な植物科学分野への応用が期待されます。
なお、EasyDCPのソースコードとテスト用データはhttps://zenodo.org/record/4756537#.YJ3zzLeRVt0で公開していますので、誰でも利用可能です。

発表雑誌
雑誌名
Methods in Ecology and Evolution
論文タイトル
EasyDCP: an affordable, high-throughput tool to measure plant phenotypic traits in 3D
著者
Alexander Feldman, Haozhou Wang, Yuya Fukano, Yoichiro Kato, Seishi Ninomiya, Wei Guo*(*責任著者)
DOI番号
10.1111/2041-210X.13645
論文URL
https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/2041-210X.13645
問い合わせ先

東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構
助教 郭 威(カク イ)

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