世界初、最小規格のオンボード光モジュールで400ギガビット/秒伝送を実現

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データセンター用サーバーなどの省エネや処理速度向上に貢献

2019-03-05 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構,技術研究組合光電子融合基盤技術研究所

NEDOと技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)は、標準化組織COBO(Consortium for On-Board Optics)の規格において最も小さいClass Aのオンボード光モジュール(34mm×36mm×8mm)で、400ギガビット/秒の伝送速度を世界で初めて実現しました。これは、PETRAが開発したシリコンフォトニクス技術を用いた世界最小5mm角の超小型光トランシーバー「光I/Oコア」と、その実装技術を適用したことによるものです。

今回開発したオンボード光モジュールは、電気信号と比較して電力消費の小さな光信号で情報処理を行う電子部品で、データセンター用サーバーなどのICT機器の処理速度向上と省エネルギー化に貢献します。

PETRAはCOBOと協力し、3月5日から7日に米国カリフォルニア州・サンディエゴで開催される世界最大級の光通信技術の展示会「OFC(Optical Fiber Communication Conference and Exposition)2019」にてオンボード光モジュールを展示し、デモンストレーションを行います。

世界初、最小規格のオンボード光モジュールで400ギガビット/秒伝送を実現

図1 400ギガビット/秒伝送オンボード光モジュール

1.概要

人工知能(AI)やIoTの進展により電子情報の流通量は加速度的に増加しており、より多くの情報を短時間で処理することが求められています。特に膨大な量の情報を扱うデータセンターでは、大規模集積回路(LSI)、メモリ、スイッチなどの間での情報伝送量と速度の増大に伴い、消費電力量が急激に増加していることが問題になっています。

この問題を解決するため、従来の電気配線に代わって光配線を用いた伝送技術が世界各国で開発されています。電気信号と光信号を相互に変換する光トランシーバーは、光配線において重要なデバイスの一つであり、更なる高速化や省電力化のため、これまで主流であった電子回路基板の端部に実装されるタイプに代わり、電子回路基板上のLSI近傍にも実装可能なオンボード光モジュールの開発が求められています。この動きの中で、オンボード光モジュールを標準化し普及させることを目的とした標準化組織COBO(Consortium for On-Board Optics)が2015年に設立されました。

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」プロジェクト(以下、本プロジェクト)※1を、技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)に委託し、オンボード光モジュールの技術開発と、開発成果の国際競争力を確保するための国際標準化活動を進めてきました。PETRAはこの分野で唯一の標準化団体であるCOBOに設立当初から参画し、国際標準の確立に向けて具体的な活動を進めてきました。

今般、NEDOとPETRAは、COBOが規格化したオンボード光モジュールの中で、最も小さいClass Aのサイズ(34mm×36mm×8mm)において送受信各400ギガビット/秒の伝送速度を世界で初めて実現しました。

この光モジュールの実現には、本プロジェクトで開発した3つの技術成果を適用しました。

  • シリコンフォトニクス技術※2を用いた世界最小5mm角の超小型光トランシーバー「光I/Oコア※3」技術
  • 高密度実装を可能とするポリマー光導波路※4の配線技術
  • 小型化を可能とする高密度コネクター技術

今回実現したオンボード光モジュールは、低コストで安定供給可能な国際標準に準拠したものであることから、サーバー製造者に広く普及することが期待されると同時に、データセンター用サーバーなどのICT機器の処理速度向上と省エネルギー化に貢献します。

PETRAはCOBOと協力して、3月5日から7日に米国カリフォルニア州・サンディエゴで開催される世界最大級の光通信技術の展示会「OFC(Optical Fiber Communication Conference and Exposition)2019」において、Class Aのオンボード光モジュールを展示し、デモンストレーションを行います。

2.今回の成果

電子回路基板上のLSI近傍にも実装可能なオンボード光モジュールを実現する上で、小型化、すなわち光トランシーバーを構成するレーザー光源、光変調器、受光器などの光学素子を高密度に集積することが技術的な課題でした。

今回のオンボード光モジュールでは、図2に示すように、4つの超小型光トランシーバー「光I/Oコア」と、高密度光接続を実現するために開発した光ファイバー・コネクターとの間を、高密度ポリマー光導波路配線技術を用いて低損失で接続する構造を開発しました。このポリマー光導波路は、光を用いた情報伝送で使用される波長において高い透過性を有していることから、従来のポリマー光導波路では難しかった低損失伝送を可能としました。また、光ファイバー・コネクターは、従来対比約2倍の高密度となる125μmピッチで32芯束ねた細径光ファイバーアレイと接続する構造となっており、オンボード光モジュールとは別に、小型の光伝送素子として標準化提案を進めています。以上のように、本プロジェクトの成果である「光I/Oコア」を核とし、2つの新規開発要素技術を活用して、オンボード光モジュールの小型化の課題を克服しました。

オンボード光モジュールの内部構造

図2 オンボード光モジュールの内部構造

3.今後の予定

COBOは、LSIの大容量化に対応するための次世代の標準として、ホストLSI※5の直近に光インターフェース※6をパッケージ集積する規格の検討を開始しています。これに対し、NEDOとPETRAは本プロジェクトで現在開発中の光電子集積インターポーザー技術※7の成果を利用して具体的な標準化案を作成し、COBOに提案していきます。

【注釈】
※1 「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」プロジェクト
事業期間:2013年度~2021年度
※2 シリコンフォトニクス技術
シリコン基板上に光素子を形成する技術。シリコンを用いることにより光回路を小型化でき、大規模集積が可能になる。また、光回路と電子回路の一体形成や製造コストの低減が可能になるなどの特長を持つ。
※3 光I/Oコア
NEDO事業で開発した、シリコンフォトニクス技術を用いた超小型の光トランシーバーチップの名称。
※4 ポリマー光導波路
光に対して透明で適切な屈折率を持ったポリマーを用いて作製された、通信に光を用いるシート状または板状の構造を持つ伝送路。
※5 ホストLSI
コンピューターネットワークに接続されたLSI。
※6 光インターフェース
光信号を用いる通信システム用の入出力インターフェース。
※7 光電子集積インターポーザー技術
回路基板とLSIの間に電気信号を光信号に変換する回路を内蔵するインターポーザーを作製するために必要な技術。LSIと変換回路を密接に接続することで、信号伝送はより高速、低消費電力になる。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO IoT推進部 担当:中山、大橋

PETRA 担当:中田

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:佐藤、坂本、藤本

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