高梁川水系小田川流域の大雨・洪水・浸水の状況

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2018/07/23 防災科学技術研究所

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更新履歴
  • 平成30年7月23日 初版
連絡先
  • 水・土砂防災研究部門 上米良・前坂
  • 広報課担当者 笹嶋・菊地

概要

広島県・岡山県を流れる高梁川水系小田川の流域(図1)について、国土交通省のデータなどを解析して、2018年7月5日から7日の大雨と河川の増水、それにより発生した浸水の状況を調べました。

  • 小田川の流域では7月5日から7日の3日間にわたり降雨が継続しました。3日間の総雨量は流域平均して約320 mm/(3 day)でした。(図2)
  • 小田川下流の矢掛町東三成では、7月5日、6日の両日、夕方から未明にかけて6時間ほどの間に約3–4 m川の水位が急激に上昇しました。(図2)
  • 小田川下流に位置する倉敷市真備町の広い範囲が浸水しました。浸水域の面積は8.28 km2、浸水の総量は15.3 × 106 m3と推定されました。(図3)
  • 浸水の総量を小田川の流域平均の水の深さに換算すると31.7 mmとなり、3日間の総雨量320 mm/(3 day)のおよそ1割に相当する量の水が真備町に流れ込んだと推定されました。(図3)
  • 倉敷市真備町の宅地や農地が広がる堤内地の高さは、堤防の高さより平均して6 mほど低いことが分かりました。(図4)

解析に用いたデータや情報の詳細は、この記事の最後の「謝辞」に示しています。

小田川の流域

高梁川水系小田川流域の大雨・洪水・浸水の状況
図1: 小田川の流域(薄い水色で網かけされた範囲)。流域の面積は483 km2。2種類の河川流路網データ(HydroSHEDS、W05)に基づいて流域を同定した。小田川は西から東に向かって流れ、流域東端の倉敷市真備町の東側で高梁川と合流する。東三成観測所では国土交通省が河川水位を観測している。(図をクリックすると、拡大されます。)

流域平均雨量と河川水位の経時変化

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図2: 小田川の流域平均雨量とその累積値の経時変化(上)、小田川下流の矢掛町東三成における河川水位の経時変化(下)。雨量は国土交通省水管理・国土保全局の「Cバンドレーダオンライン合成雨量データ」(赤)、同気象庁の「解析雨量」データ(青)に基づく。河川水位は東三成観測所のデータに基づく。河川水位の極大に逆さ三角を付した。

  • 小田川の流域では7月5日から7日の3日間にわたり降雨が継続した。
  • 3日間の総雨量は流域平均して約320 mm/(3 d)であった。
  • 7月5日の降雨により、川の水位は平常より3 mほど上昇した。(2018-07-06 01:00 15.26 m)
  • 翌7月6日の降雨により、水位はさらに上昇し、平常より6 mほど高い状況となった。(2018-07-07 02:00 18.43 m)
  • 7月5日、6日の両日、夕方から未明にかけて6時間ほどの間に約3–4 m川の水位が急激に上昇した。
  • 水位変化の波形には4つの極大が認められる。水位の極大は降雨の極大から4時間半から6時間半遅れて出現した。

浸水深の地理的分布

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図3: 小田川下流に位置する倉敷市真備町の浸水深の地理的分布。上空から撮影された写真をもとに浸水域を判読、浸水面の標高を水平一様に12.5 mと仮定し、国土地理院の詳細な地形データ(DEM5A)を用いて推定した。図中左上の白い部分のデータは存在しない。

  • 浸水深の分布は国土地理院の分析結果「浸水推定段彩図」とほぼ一致する。
  • 浸水域は岡山河川事務所が公表している「洪水浸水想定区域図」の「10.0m~20.0m未満の区域」とほぼ一致する。
  • 浸水域の面積は8.28 km2、浸水の総量は15.3 × 106 m3と推定される。(15.3 × 106 m3の水は25 mプール51,000杯分に相当。1杯300 m3として換算。)
  • 浸水の総量を小田川の流域平均の水の深さに換算すると31.7 mmとなる。すなわち、3日間の総雨量320 mm/(3 d)のおよそ1割に相当する量の水が真備町に流れ込んだと推定される。
  • 1時間雨量の最大値は7月6日21–22時の27.1 mm/hである(流域平均)。これはつまり、浸水の総量31.7 mmに匹敵する量の雨が、6日夜のわずか1時間の間に降ったことを意味する。(27.1 mm/hは「Cバンドレーダオンライン合成雨量データ」に基づく。)

浸水した地域の特徴

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図4: 小田川下流の堤防(赤)と堤内地(青)の標高の度数分布。国土地理院の詳細な地形データ(DEM5A)を用いて求めた。

  • 倉敷市真備町の宅地や農地が広がる堤内地の高さは、堤防の高さより平均して6 mほど低い。
  • 浸水に対する地域の脆弱性を考える上で重要な事実である。

謝辞


1702地球物理及び地球化学
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