テレスコープアレイ実験史上最大のエネルギーをもつ宇宙線を検出

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2023-11-24 大阪公立大学

概要

宇宙から降り注いでいる高エネルギーの粒子(宇宙線)の中には、非常に高いエネルギーの宇宙線がごく稀に存在しており、宇宙におけるもっとも激烈な物理現象と関連していると考えられています。宇宙線は荷電粒子であるため宇宙磁場で曲げられますが、非常に高いエネルギーの宇宙線は磁場で曲げられにくく、到来方向が発生源を指し示す「次世代天文学」となることが期待されています。
大阪公立大学大学院 理学研究科および南部陽一郎物理学研究所の藤井 俊博准教授(2022年3月まで京都大学白眉センターおよび大学院理学研究科に所属)、常定 芳基教授、東京大学 宇宙線研究所の荻尾 彰一教授、﨏 隆志准教授、佐川 宏行シニアフェロー、理化学研究所 開拓研究本部の樋口 諒基礎科学特別研究員、木戸 英治研究員、長瀧 重博主任研究員(数理創造プログラム 副プログラムディレクター)、大阪電気通信大学 工学部の多米田 裕一郎准教授、信州大学 工学部および航空宇宙システム研究拠点の冨田 孝幸助教、神奈川大学 工学部の池田 大輔特別助教、有働 慈治准教授らの国際共同研究グループは、アメリカユタ州で稼働中の最高エネルギー宇宙線観測実験「テレスコープアレイ実験」にて、2021527に極めて高いエネルギー(2.44×1020乗電子ボルト = 244エクサ電子ボルト)をもった宇宙線の検出に成功しました。
テレスコープアレイ実験は2008年から現在までの15年以上にわたり、最高エネルギー宇宙線の定常観測を続けています。今回検出された宇宙線は、テレスコープアレイ実験の観測の中でもっともエネルギーが高く、1991年に検出された「オーマイゴッド粒子」※1と呼ばれる宇宙線に匹敵するエネルギーをもちます。さらに、この宇宙線が到来した方向には候補となる有力な天体が見つからず、未知の天体現象や標準理論を超えた新物理起源の可能性も示唆されます。
本研究成果は、国際学術誌「Science」に2023年11月24日にオンライン掲載されました。

テレスコープアレイ実験史上最大のエネルギーをもつ宇宙線を検出
図:2021年5月27日にテレスコープアレイ実験で検出された極めて高いエネルギーの宇宙線を地表粒子検出器の信号情報から描画したイメージ図(画像提供: 大阪公立大学/京都大学L-INSIGHT/Ryuunosuke Takeshige)


この極めて高いエネルギーの宇宙線を初めて見つけたとき、かつてないエネルギーの値が表示されていたため、何かの間違いだろうと思いました。その後、到来方向に候補天体が見つけられず残念に思うと同時に、ではこの宇宙線はどこから来たのか、という新しい謎が見つかったワクワク感を覚えています。今後は、稼働中のテレスコープアレイ実験拡張計画や、次世代実験によって極高エネルギー宇宙線の発生源を明らかにしたいと考えています。
藤井 俊博准教授

用語解説

※1 オーマイゴッド粒子:1991年10月15日にフライズアイ実験によって観測された320エクサ電子ボルトという極めて高いエネルギーを持つ宇宙線。驚くべきエネルギーを持つことから「オーマイゴッド粒子」と呼ばれている。

資金情報

文部科学省 科学研究費重点領域研究431
日本学術振興会 科学研究費助成事業
特別推進研究JP21000002、同JP15H05693、基盤研究(S)JP19104006、同JP15H05741、同JP19H05607、基盤研究(A) JP18H03705、若手研究(A) JPH26707011、国際共同研究強化(B) JP19KK0074
アメリカ国立科学財団、韓国国立研究財団、ロシア科学アカデミー、Belgian Science Policy IUAP (ULB)
東京大学宇宙線研究所 共同利用研究プロジェクト、RIKEN Pioneering Project: Evolution of Matter in the Universe (r-EMU)

掲載紙情報

発表雑誌:Science
論 文 名:An extremely energetic cosmic ray observed by a surface detector array
著     者:Telescope Array Collaboration
掲載URL:https://doi.org/10.1126/science.abo5095

プレスリリース全文 (1.1MB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
准教授:藤井 俊博(ふじい としひろ)

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課

1700応用理学一般
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