国産の農業用作業機で初のISOBUS(イソバス)認証取得~汎用 ECU は4月から販売開始~

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2022-04-04 農研機構,(株)ササキコーポレーション,(株) タカキタ,東洋農機(株),(株) ヤハタ,(公財)とかち財団

ポイント

・農研機構は、(株)ササキコーポレーション、(株)タカキタ、東洋農機(株)、(株)ヤハタ及び(公財)とかち財団と、ISOBUS1)に対応した作業機ECU2)の共同研究を行い、この度、国際標準であるISOBUS認証を国産商用作業機としては初めて取得しました。
・メーカーがISOBUS対応作業機を開発・製造する際に活用可能な汎用ECU用ハードウエアについては2022年4月に先行して市販化することになりました。これらISOBUS対応作業機・開発機材が普及することにより、農作業のスマート化が加速されます。

概要

「ISOBUS」とは、国際規格ISO 117833)の実装技術を国際農業電子財団(AEF4))が一定のガイドラインに沿って認証するもので、欧米ではISOBUSに対応したトラクターや作業機が標準となりつつあります。ISOBUSの普及により、電子制御化が進むトラクターや作業機において、メーカーの枠を超えた電気的接続が可能となり、相互にさまざまなデータのやり取りをしながら、農地マップに基づく可変施肥やスポット農薬散布、作業ログの取得など、農作業のスマート化が図られるようになりました。国内においても、北海道などの大規模畑作地域を中心に、ISOBUSに標準対応した海外製大型トラクターの普及が進み、それに対応した作業機への関心が高まっています。しかし、商品開発のベースとなるECU(電子制御ユニット)用ハードウエアや通信ライブラリが高額であることから、国産作業機のISOBUS対応が進んでいませんでした。
このため、農研機構(本部:茨城県つくば市)では、(株)ササキコーポレーション、(株)タカキタ、東洋農機(株)、(株)ヤハタ及び(公財)とかち財団と、国産のISOBUS対応作業機ECUの共同研究を行い、この度、AEFの認証試験を受け、ISOBUS認証を取得しました。国産商用作業機ECUとしては初となります。汎用ECU用ハードウエアについては、ISOBUS対応作業機に先行して、2022年4月に市販化することになりました。引き続き、ISOBUSに対応した作業機の実用化を推進してまいります。

関連情報

予算:運営費交付金

問い合わせ先など

研究推進責任者 :
農研機構農業機械研究部門 所長 天羽 弘一
同 北海道農業研究センター 所長 奈良部 孝
(株)ササキコーポレーション 代表取締役社長 佐々木 一仁
(株)タカキタ 代表取締役社長 松本 充生
東洋農機(株) 代表取締役社長 太田 耕二
(株)ヤハタ 代表取締役社長 米田 正
(公財)とかち財団 理事長 米沢 則寿

研究担当者 :
農研機構農業機械研究部門
無人化農作業研究領域 革新的作業機構開発グループ 西脇 健太郎
同 北海道農業研究センター
寒地野菜水田作研究領域 野菜水田複合経営グループ 齋藤 正博
(株)ササキコーポレーション 技術開発部 甲地 重春
(株)タカキタ 製造開発本部 開発部 G4グループ 福田 博
東洋農機(株)開発本部 開発部 制御システム開発室 河辺 秀樹
(株)ヤハタ 北海道支社 開発・電装品技術部 山下 和明
(公財)とかち財団
ものづくり支援部十勝産業振興センターグループ 田村 知久

広報担当者 :
農研機構 農業機械研究部門 研究推進部 研究推進室 広報チーム
チーム長 藤井 桃子

詳細情報

社会的背景

トラクター、装着作業機、後付け電子機器など、異なるメーカーの機器を組み合わせて利用することが多い農業機械では、技術開発の効率化と利用者の利便性のためにメーカー間の壁を越えて接続互換性が保証される共通化技術が必要とされてきました。特に近年、広大な土地で精密な農作業を実現するために、トラクターに連動した作業機の制御が必要不可欠になってきており、通信規格の統一が要望されていました。これを受け、欧米では国際規格ISO 11783が開発され、ISOBUS(イソバス)という商標で大型機械を中心に普及が進んでいます。一方、日本では比較的小型で低コストの機械が中心だったため対応は遅れていましたが、近年ではスマート農業への関心の高まりや、ISOBUSを標準装備した輸入農機の増加等を受けて、国際標準に準拠しつつ日本農業の効率化にも寄与できる共通通信技術の社会実装に対する期待が高まっています。

研究の経緯

農研機構では2018年に、開発した農業機械用ECUについてISOBUS認証を取得しました。(https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/iam/082041.html)この成果を民間企業等に技術移転し、日本国内での早期実用化を図るため、2019年から(株)ササキコーポレーション、(株)タカキタ、東洋農機(株)、(株)ヤハタ及び(公財)とかち財団とコンソーシアムを組み、農研機構の農業機械技術クラスター事業(https://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/iam/cluster/index.html)においてISOBUS対応作業機ECUの開発に取り組んできました。

研究成果の内容・特徴
    研究成果の概要は次のとおりです。

  1. 安価なISOBUS機器開発環境の実現
    これまで、国内作業機メーカーがISOBUS対応作業機械を開発するためには、高額な海外製コントローラの導入が必要でしたが、(株)ヤハタが開発した汎用ECU用ハードウエア(図1)と通信ライブラリを活用することで、ECUに要する費用を大幅にコストダウン(1/3以下に低減)することが可能となりました。また、日本語でのサポートも受けられるようになり、中小作業機メーカーでも作業機のISOBUS対応に安心して取り組めるようになります。
  2. 作業機としては3メーカー、2種類のISOBUS対応を実現
    開発対象とした作業機はブロードキャスタ(粒剤散布機)とポテトハーベスタ(馬鈴薯収穫機)です。(株)ササキコーポレーションはUT、TC-BAS、TC-GEO、TC-SC(用語の解説 1)参照)に対応したブロードキャスタ用ECU(図2)を開発しました。(株)タカキタはTC-BAS、TC-GEO、TC-SCに対応したブロードキャスタ用ECU(図3)を開発しました。東洋農機(株)はUT、AUX-Nに対応したポテトハーベスタ用ECU(図4)を開発しました。(株)ササキコーポレーションと東洋農機(株)に関しては、上記(株)ヤハタの汎用ECU用ハードウエアを利用しています。
  3. 国産の農業用作業機で初のISOBUS認証取得
    本共同研究において、先述の4社がISOBUS認証を取得しました。そのうち(株)ササキコーポレーション、東洋農機(株)、(株)ヤハタの3社についてはAEFのWebサイト(図5)で確認することができます。様々なISOBUS対応トラクター、ISOBUS共通操作端末(キャビンに設置するユーザインタフェース)と組み合わせて動作するということがAEFにより客観的に認められているため、既にISOBUS対応トラクターを所有している大規模農家・営農集団や、そのユーザ端末にISOBUS機能が実装されているものが多い高精度(RTK)GNSS(衛星を使用した測位システム)利用農家、更にはISOBUSが普及している海外への積極的な売り込みが可能となります。
今後の予定

汎用ECU用ハードウエアについては、2022年4月に(株)ヤハタから市販化する予定です。価格は、現在調整中ですが、外国製コントローラの1/3以下になる予定です。メーカー開発の個別作業機についてはモニター試験後の実用化予定です。

用語の解説

1)ISOBUS:AEF(解説4)参照)が定義するISO 11783(解説3)参照)の実装基準です。UT、AUX-N、TC-BAS、TC-GEO、TC-SC、TECU、TIM、ISB等の機能に分類されています。本プレスリリースに関連した各機能の詳細は以下のとおりです。

マーク 機能 説明
UT
(Universal Terminal)
キャビン内に設置される共通操作端末を使用するための機能です。接続された作業機から送られてきた画面の表示と、それに基づいた操作を行う際に使用します。
AUX
(Auxiliary Control)
ジョイスティックやスイッチボックスなどの補助入力装置を使用するための機能です。バージョンの新旧(New or Old)があります。
TC-BAS
(Task Controller
Basic)
トラクター等のほ場作業機械とPCなどにインストールして使用されるほ場管理情報システムとの間で、作業指示マップや作業履歴等のデータを受け渡しするための機能です。ISOBUSでは、「ISO XML」というデータ仕様を使うことになっており、これを読み書きする際に必要となります。
TC-GEO
(Task Controller
Geo-based)
GPS等により得られる位置情報に連動した動作を行うための機能です。マップベースの可変散布などを実現できます。
TC-SC
(Task Controller
Section Control)
作業幅を複数の範囲(セクション)に分割し、セクションごとにON/OFFさせるための機能です。ほ場外や既に作業したエリアへの無駄な作業・散布を防止できます。

2)ECU:Electronic Control Unitの略で、システムを電子回路により制御する装置(ユニット)の総称です。農業機械では、トラクター本体、可変施肥(肥料の散布量を生育や地力のばらつきに応じて変えて散布する技術)ができるブロードキャスタや、ブームスプレーヤなどに搭載されています。

3)ISO 11783:農業機械用車上ネットワークの通信制御の国際規格です。総ページ数は1000ページを超える膨大な文書で、技術の進歩に伴って更新されています。

4)AEF:Agricultural Industry Electronics Foundation(国際農業電子財団)の略で、ISO 11783普及促進活動をする業界団体です。「ISOBUS」仕様の定義、適合性の確認、認証試験、データベース公開、拡張仕様の検討等を行っています。

参考図


図1 ISOBUS認定を取得した汎用ECU用ハードウエアの外観 [(株)ヤハタ提供]


図2 開発対象作業機(ブロードキャスタ)と作業機ECU [(株)ササキコーポレーション提供]


図3 ISOBUS共通操作端末(右)と接続された作業機ECU(左) [(株)タカキタ提供]


図4 開発対象作業機(ポテトハーベスタ)及び作業機ECUからISOBUS共通操作端末にポテトハーベスタ用のプログラムを読み込んでいる様子 [東洋農機(株)提供]



図5 国際農業電子財団(AEF)の公開データベースのホームページ
https://www.aef-online.org/products/aef-isobus-database.html
(左上)とデータベース上 に登録された参画メーカー(右上)青線囲み、登録された作業機の表示例(下)

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