IS 法による安定した連続水素製造に向けて

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高濃度ヨウ素を含むヨウ化水素酸溶液移送ポンプ軸封システムを開発

『原子力機構の研究開発成果2020-21』P.70

図6-14 連続水素製造試験設備の外観
IS 法の実用化を目指すために、IS 法の全ての機器を工業材料で製作した試験装置です。水素製造実証試験に使用しています。

図6-15 固着したポンプの外観
(a)固着停止したポンプのピストン部に固体I2の析出が確認できました。
(b)I2 濃度の高い HIx 溶液を移送する際に、ピストンとシリンダーの微少な隙間で I2 溶解度が低下することにより I2 が析出し、ポンプが固着したと考えられます。

図6-16 開発した気液併用軸封システムの概要
ポンプ停止の原因と考えらえる I2 析出を防止するために、①温度低下を防ぐヒーター、②プロセス流体の流出を防ぐ不活性ガスの供給、③ I2 を溶解する溶媒(HI 溶液)注入、④漏えいした蒸気吸引を組み込んだ軸封システムを開発しました。

 


高温ガス炉の熱利用技術開発の一貫として、熱化学水素製造 IS 法の研究開発を行っています。IS 法では高腐食性の硫酸やヨウ化水素(HI)、ヨウ素(I2)を用いるとともに、最高 900 ℃の高温環境が存在するため、実用化を目指すためには、耐食・耐熱性を持つ金属・セラミック等の工業材料製機器が必要となります。この開発の一貫として、2013 年度にプロセス全系に耐食・耐熱性工業材料を用いた連続水素製造試験設備を製作し(図 6-14)、本試験装置を用いて連続水素製造試験を行って運転制御や機器信頼性を確証しています。
2016 年に行った水素製造試験では、水素製造量10 L/h での 8 時間連続運転に成功しましたが、高濃度 I2を含むヨウ化水素酸(HIx:HI、I2、H2O の混合溶液)の移送ポンプが固着して停止する問題が発生しました。固着したポンプのピストンとシリンダー(軸封部)を確認したところ、ピストン表面に固体 I2 の析出が確認されました(図 6-15(a))。この原因は、送液した HIx 溶液には溶解度に近い I2 が含まれており、軸封部での温度低下、組成変化により固体の I2 が析出し、ピストン/シリンダー間の摺動抵抗が増大し、ピストンとシリンダーが固着し停止したものと考えられます(図 6-15(b))。
そこで、軸封部に固体 I2 を析出させないための気液併用軸封システムを開発しました(図 6-16)。この軸封システムは、①温度低下による I2 析出を防ぐヒーター、②プロセス流体の流出抑制、軸封部からの I2 及び溶媒を排出する不活性ガスの供給、③析出 I2 を溶解する溶媒(HI 溶液)の微量注入、④軸封部から微量に漏れる蒸気から周辺機器を保護するための蒸気吸引、の四つの機能が組み込まれています。水素製造試験で固着停止したポンプと同様組成の HIx 溶液を用いて本軸封システムの効果検証を行ったところ、24 時間停止することなく安定して運転できることを確認しました。その後、この軸封システムを連続水素製造試験設備に組み込んだ連続水素製造試験において、水素製造量20 L/h、31 時間の連続運転に成功しました。
今後は、連続運転で得た知見を基に固体 I2 析出を防止するための組成調整法の導入などの設備改良を進め、長時間の運転により運転制御や機器信頼性に関するデータを蓄積し、実用化に向けた技術開発に活用していく予定です。(野口 弘喜)

●参考文献
Noguchi, H. et al., R&D Status of Hydrogen Production Test Using IS Process Test Facility Made of Industrial Structural Material in JAEA, International Journal of Hydrogen Energy, vol.44, issue 25, 2019, p.12583–12592.

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2001原子炉システムの設計及び建設2003核燃料サイクルの技術
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