日仏ASTRID協力の成果を反映したナトリウム冷却高速炉の検討

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2020-09-01 日本原子力研究開発機構

【発表のポイント】

  • 「仏国次世代炉計画(ASTRID)及びナトリウム高速炉の協力に関する実施取決め」(2014年~2019年)において、日本原子力研究開発機構とフランス原子力・代替エネルギー庁等は高速炉の主要技術の共同開発で所定の成果を上げ、2019年12月に取決め期間を満了しました。
  • 本共同開発で得られた知見を用いて、日本の従来のループ型炉とは異なるタンク型ナトリウム冷却高速炉について、耐震性、安全性、経済性等が成立する見通しが得られました。
  • 引き続き、研究開発を効率的に進めていくことを目的として、日本原子力研究開発機構とフランス原子力・代替エネルギー庁等は「ナトリウム冷却高速炉開発計画協力の実施取決め」を2019年12月3日に締結しました。今後は本取決めに基づき、日仏相互の優位な技術を生かしたナトリウム冷却高速炉の安全性・経済性向上のため、シビアアクシデント、解析コード開発等を中心としたR&D協力を進めます。

【概要】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄 以下、「JAEA」という)高速炉・新型炉研究開発部門の久保次長、近澤GL、加藤主幹らにより、2014年~2019年の「仏国次世代炉計画(ASTRID*1)及びナトリウム高速炉の協力に関する実施取決め」(2019年12月に期間満了 以下、「日仏ASTRID協力」という)に基づく共同開発を通じて得られた知見を用いて、従来のループ型炉と異なるタンク型ナトリウム冷却高速炉*2について、耐震性、安全性、経済性等が成立する見通しが得られました。

ナトリウム冷却高速炉は、第4世代原子力システム*3と称される、高い信頼性、経済性等を実現する次世代の原子力システムのうち、最も有望な技術のひとつです。核燃料サイクルはウラン資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化、潜在的有害度の低減を目指すものであり、その実現のため、高速炉は重要な選択肢のひとつとなっています。

JAEA等は、日仏ASTRID協力における設計協力として11分野を実施し、フランスの既存炉の経験を反映した設計データを入手し改良作業を実施することで、フランスの設計をJAEAが今後開発するナトリウム冷却高速炉に反映するための使用権を入手しました。また、燃料8分野、シビアアクシデント9分野、原子炉技術11分野において、日仏間で技術を融合(データシェア、設備共同利用、評価手法共同開発)することで、効率的な開発を行いました。

また、JAEAはフランスの既存の高速炉であるフェニックスおよびスーパーフェニックス*4の経験を踏まえたタンク型炉の設計情報を入手し、日本の「もんじゅ」等で培われた安全技術、耐震技術と融合することで、高速炉の実用化に寄与する大きな成果を上げることができました。具体的には、我が国の立地条件におけるタンク型炉の設計概念を検討することにより、重要課題である耐震性を含めたその設計が成立する見通しが得られました。

引き続き、研究開発を効率的に進めていくことを目的として、JAEAとフランス原子力・代替エネルギー庁(以下、「CEA」という)等は「ナトリウム冷却高速炉開発計画協力の実施取決め」を2019年12月3日に締結しました。今後は本取決めに基づき、日仏相互の優位な技術を生かしたナトリウム冷却高速炉の安全性・経済性向上のため、シビアアクシデント、解析コード開発等を中心としたR&D協力を進める予定です。

本研究成果は、6月15日付で「Mechanical Engineering Journal」に掲載されました。

【研究開発の背景及び経緯】

核燃料サイクルはウラン資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化、潜在的有害度の低減を目指すものであり、その実現のため、高速炉は重要な選択肢のひとつとなっています。

高速増殖原型炉「もんじゅ」の開発以降、実用化に向けて残された課題として、シビアアクシデント含む安全性向上、経済性向上、保守補修性を含む信頼性の向上を目的とした開発が行われてきました。日本はループ型炉、フランスはタンク型炉をそれぞれ開発してきましたが、これら残された課題のうち広範囲の部分は共通であることから、JAEAとCEA等は高速炉の研究開発成果の最大化を図るため、日仏ASTRID協力の実施取決めを、2014年8月14日に締結しました。当初は、ループ型とタンク型炉の共通課題としてシビアアクシデント、炉心燃料、ナトリウム技術等を対象に協力を行いましたが、国際的にタンク型炉が主流になりつつあることも考慮し、日本におけるタンク型炉の可能性も視野に入れ協力分野を拡大しました。協力の成果を国内におけるタンク型炉の検討にも反映しつつ2019年12月31日の満了期間までに所定の成果を上げることができました。

【得られた成果】

設計協力では強制循環崩壊熱除去系、受動炉停止系、炉心上部機構等の11分野についてフランスの既存炉の経験を反映した設計データを入手するとともに、改良作業、評価作業を実施することでフランスの設計をJAEAが今後開発するナトリウム冷却高速炉に反映するための使用権を入手しました。 また、燃料8分野、シビアアクシデント9分野、原子炉技術11分野の協力では、日仏間でデータシェア、設備共同利用、評価手法共同開発を行いました。例えば、シビアアクシデント評価手法の開発では解析コード(SIMMERコード)を共同で開発し、炉心を領域ごとに並行して解析するモデルを導入することで、より複雑な炉心の評価を実施することが可能になりました。また、日本の試験装置であるPLANDTL-2*5においてフランスの予算で試験を実施し、シビアアクシデント時における崩壊熱除去システムの成立性を示す知見を得る等、解析コード検証に利用できるデータを拡充しました。さらに、高速炉用構造材料に対する高温長時間材料特性データの取得試験等を進め、次世代炉の設計にも適用可能な高温構造設計評価手法の高度化の検討を進めました。 これら日仏ASTRID協力で得られた知見を用いて、従来のループ型炉とは異なるタンク型ナトリウム冷却高速炉の概念を検討しました。原子炉容器が大きいタンク型炉は、これまで日本の厳しい地震条件では耐震性の確保が難しいとされてきましたが、耐震向上方策/免震システム等を採用することにより成立性があることを確認しました。また、建設費についても安全対策を向上した軽水炉と同等の目標を達成可能である見通しを得ました。この評価により今後の高速炉の開発の見通し、及び国際協力の有効性について確認することができました。

【今後の展開】

引き続き、研究開発を効率的に進めていくことを目的として、JAEAとCEA等は「ナトリウム冷却高速炉開発計画協力の実施取決め」を2019年12月3日に締結しました。今後は本取決めに基づき日仏相互の優位な技術を生かしたナトリウム冷却高速炉の安全性・経済性向上のため、シビアアクシデント、解析コード開発等を中心とした以下の各研究開発に関する協力を進めます。

・シビアアクシデント ・ナトリウム化学 ・材料開発 ・炉心材料 ・燃料技術

・検査/計装 ・解析コード開発 ・機器開発 ・試験施設 ・安全性 ・新型構造

これらの研究開発の成果として得られた評価手法や試験データ等を国内の高速炉開発に利用することは、高速炉の実用化のための技術基盤の確立とイノベーションの促進に貢献するものであり、タンク型ナトリウム冷却高速炉の他、民間による多様な技術間競争の促進による様々な炉型の安全性/経済性の向上にも資するものです。これにより、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化、潜在的有害度の低減に貢献してまいります。

用語説明

*1 ASTRID:

Advanced Sodium Technological Reactor for Industrial Demonstration

*2 タンク型ナトリウム冷却高速炉:

1次ナトリウム循環ポンプ、および中間熱交換器を1つの大きな原子炉主容器に収めたナトリウム冷却高速炉。

*3 第4世代原子力システム:

燃料の効率的利用、核廃棄物の最小化、核拡散抵抗性の確保等エネルギー源としての持続可能性、炉心損傷頻度の飛躍的低減や敷地外の緊急時対応の必要性排除など安全性/信頼性の向上、及び他のエネルギー源とも競合できる高い経済性の達成を目標とする次世代原子炉概念。

*4 フェニックスおよびスーパーフェニックス:

フランスで建設された高速増殖炉の原型炉及び実証炉。現在は運転を終了し廃炉措置を進めている。

*5 PLANDTL-2:

多層の燃料集合体からなる炉心槽と実機を模擬した炉内浸漬型冷却器を有し、ナトリウム試験を実施することができる試験装置。

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