新機構が生み出す過去最小の磁気渦粒子を発見 ~超高密度な次世代情報担体としての活用に期待~

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2020-05-19 東京大学,理化学研究所,科学技術振興機構,物質・材料研究機構,高エネルギー加速器研究機構

 

ポイント
  • 高い対称性を持つ希土類合金(GdRuSi)中で、既知の化合物では過去最小となる直径1.9nmの磁気スキルミオン(粒子性を持った渦状スピン構造)を観察することに成功。
  • 従来、スキルミオンは結晶構造の低い対称性に起因して生じるとされてきたが、この物質では動き回る電子が媒介する新機構によってナノスケールのスキルミオンが実現している。
  • 今回の発見は、極小サイズのスキルミオンの新しい設計指針を与えており、超高密度な次世代情報担体としての応用を後押しすることが期待される。

理化学研究所 創発物性科学研究センターのNguyen Duy Khanh 特別研究員(現 東京大学 物性研究所)、中島 多朗 研究員(現 東京大学 物性研究所)、于 秀珍 チームリーダーと、東京大学の関 真一郎 准教授(JST さきがけ研究者 兼任)、有馬 孝尚 教授、十倉 好紀 卓越教授らの研究グループは、物質・材料研究機構、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所との共同研究を通じて、既知の化合物では過去最小となる直径1.9nmの磁気スキルミオン(磁性体の中で現れる渦巻き状のスピン構造)を観察することに成功しました。スキルミオンは、幾何学的に保護された安定な粒子としての性質を持つため、次世代の情報担体の候補として盛んに研究が行われています。従来、スキルミオンを生み出すには、対称性の低い結晶構造が必要であると考えられてきましたが、本研究では動き回る電子が媒介する新機構を活用することにより、対称性の高い希土類合金中で過去最小のスキルミオンを実現することに成功しました。今回の発見は、極小サイズのスキルミオンを生み出すための新しい物質設計指針を与えており、超高密度な情報素子への展開に役立つことが期待されます。

本研究成果は、2020年5月18日(英国夏時間)に英国科学誌「Nature Nanotechnology」に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ研究領域「トポロジカル材料科学と革新的機能創出」研究課題「磁気構造と電子構造のトポロジーを利用した巨大創発電磁場の生成と制御」(No.JPMJPR18L5)、同 戦略的創造研究推進事業 CREST研究領域「量子状態の高度な制御に基づく革新的量子技術基盤の創出」研究課題「ナノスピン構造を用いた電子量子位相制御」(No.JPMJCR1874)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金基盤研究A「磁気構造のトポロジー・対称性に由来した新しいマグノン・熱輸送現象の開拓」(No.18H03685)および「電子顕微鏡によるトポロジカルスピン構造とそのダイナミクスの実空間観察」(No.19H00660)、同 新学術研究領域「ナノスピン変換科学」(No.17H05186)、同 外国人特別研究員プログラム(No.18F18804)、フンボルト財団、旭硝子財団、村田学術振興財団の支援を受けて行われました。共鳴X線散乱実験は、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 フォトンファクトリーの研究課題(2018G570)に基づいて行われました。

詳しい資料は≫
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0501セラミックス及び無機化学製品1700応用理学一般
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