2019/6/27 スウェーデン王国・チャルマース工科大学
(Mimicking wood’s ultrastructure with 3D printing)
・ チャルマース工科大学が、木質系インクを使用し、樹木の細胞構造を模倣した 3D プリンティングに成功。天然木材の細胞構造を模倣することにより、衣類、包装用品、家具、ヘルスケアやパーソナルケア用品に至るまで、植物繊維由来の環境に優しい製品の画期的な作製が期待できる。
・ 樹木の成長過程は遺伝暗号によって制御されていて、多孔性、強靭性、ねじれ強さ等の独特な特性を備えているが、金属やプラスチックとは異なり、溶融できず再形成が容易でないため、加工するには研削や平面化、湾曲が必要。木材から紙や繊維などへの変換には、強靭性を有する細胞構造を破壊しなければならない。新技術では、木材本来の特性を生かしながら製品を思い通りの形に 3D プリントできる。
・ 同大学では、木材パルプをナノセルロースゲルに変換した 3D プリンティング用のインクをすでに作製済み。新技術では、木材の遺伝暗号の解析やデジタル化に成功し、3D プリンターに指示できるようになった。これにより、セルロースナノフィブリルの配列がプリント過程で正確に制御できるようになり、木材の細胞構造が再現。配向と形を管理できるため、天然木材の有用な特性を捕獲できる。
・ 新技術ではさらに、植物細胞中の天然成分であるヘミセルロースを、ナノセルロースゲルに添加。ヘミセルロースは接着剤として働き、細胞壁を形成する過程において、自然界の木質化プロセスと類似した方法でセルロースに十分な強度を与える。本技術による木質ベースの製品は、天然木材使用時に比べ、設計や生産時間を大幅に削減できる。
・ 研究グループは、革新的なパッケージコンセプトの試作品をすでに開発済み。プリントされた細胞壁間のチャンバーにハニカム構造をプリントし、その内部に固体粒子を封入した。セルロースは酸素バリア性が優れているため、食品や医薬品用の密封容器を作製するには有望な手法だ。また、ヘルスケア製品や衣料品の試作品も開発した。今後は、宇宙空間における同技術開発の進展の可能性を検討中。
・ 本研究は、欧州宇宙機関(ESA)のワークショップですでに実証済み。また、Florida Institute of Technology(Florida Tech)と米航空宇宙局(NASA)とでは、微小重力での物質の試験など、新たなプロジェクトに取り組み中。
URL: https://www.chalmers.se/en/departments/chem/news/Pages/Mimicking-theultrastructure-of-wood-with-3D-printing-for-green-products.aspx
(関連情報)
APPLIED Materialstoday 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Materials from trees assembled by 3D printing – Wood tissue beyond nature limits
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352940718304918?via%3Dihub
<NEDO海外技術情報より>