将来の社会インフラとするため技術全体の底上げを目指す小型実験用無人機の飛行実証試験
2019-05-31 JAXA
無人機の利活用はますます広がりを見せています。現状では、操縦者の目視範囲内での適用が中心ですが、今後は操縦者の目視外まで範囲を広げ、より日常的に運用されることが期待されています。JAXAはこれらを可能にすることを目指して小型無人機に適用するための安全向上技術の研究開発を実施しています。
2018年には6月と11月、北海道大樹町にある大樹航空宇宙実験場で飛行実証試験を行い、開発中の各要素技術が、今後の小型実験用無人機の研究開発で次の段階へ進むために有効であることが確認できました。
試験では次の4点について機能や有効性を確認しました。
- 機体システム健全性モニター技術(飛行中に取得したデータを活用し、日常的な運用の中に潜む、不安全事象の兆候を見つける機能)
- 飛行環境状態モニター技術(無人機が機体周りに起こっている風/擾乱などの状況を解析し、オペレータに警告する技術)
- 操縦・オペレーション支援技術(手動操作による無人機の離着陸を支援する機能や、緊急時に障害物や人の頭上などを回避しながら自動で帰投する技術)
- コマンド通信中継局(これまでより飛行距離を広げるための長距離通信に対応する中継局としての機能)
試験に向け準備中の小型実験用無人機
飛行実証試験の様子
このうち 1. は、小型無人機への適用として今回初めて試験を行った技術です。こうした日常運用データ解析機能は旅客運航会社(エアライン)ではすでに導入済みですが、小型無人機の分野を対象としたものはまだありません。日常運用に潜む不安全に関する兆候を見つけ、小型無人機の運用者や機体整備者などにフィードバックし、不具合が起こる前に改善や安全向上を図ることにつながる重要な技術です。これまでJAXAが有人機における安全技術の研究開発で蓄積した知見を無人機の飛行にも活かし、将来の社会インフラとしていくための技術全体の底上げを目指します。