シリコンウェハ酸化膜上で原子分解能STEM観察に成功

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ナノ材料の非破壊原子分解能評価のための効果的なアプローチ

2019-05-27 東京大学

大きさが数nmの小さなナノ材料の合成や物性評価は、ICチップの材料になるシリコンウェハ、セラミックス等のバルク基板上で実施されています。もし興味のあるナノ材料が見つかった時、その詳細な構造を透過型電子顕微鏡法(TEM)や走査型透過電子顕微鏡法(STEM)で明らかにしたいと多くの研究者は考えます。しかし、材料をTEMやSTEMで観察するためには、通常は試料に加工を施す必要があり、観察したい元の形状と構造がこの前処理によって変化してしまう可能性がありました。

東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻の丸山茂夫教授と項栄助教らのグループは、大学院工学系研究科総合研究機構の幾原雄一教授、熊本明仁卓越研究員との共同研究により、特定の単層カーボンナノチューブ(CNT)が成長する興味深いナノ材料に着目し、大きさが10 nm以下のCo-W-C三元系触媒ナノ粒子について、合成から構造解析までの一貫した研究調査を実施しました。今回、本研究グループらはシリコンウェハに形成した絶縁体の二酸化ケイ素(SiO2)膜上にこの触媒ナノ粒子を作製することで、観察のための試料加工を施すことなく反応前後の触媒を原子スケールで構造解析することに成功しました。

上記を実現させるにあたり、今回シリコンウェハ酸化膜(Si/SiO2)のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)加工によって特別に作製されたSi/SiO2 TEMグリッドが採用されました。これは、金属製メッシュに薄い導電性カーボン膜を貼った従来のTEMグリッドとは異なるものです。Si/SiO2 TEMグリッドのSiO2膜の厚さは20 nmです。Co-W-C三元系触媒ナノ粒子はこのSiO2膜上の全体で均一に担持されています。SiO2は高温で安定であることから、従来のTEMグリッドでは不可能な触媒の合成・反応・観察の全ての実験が可能になります。これにより、高分解能なSTEM観察と高感度なエネルギー分散型X線分光法(EDS)による組成マッピングを高度に組み合わせ、かつ単層CNT成長が起こる高温反応の前後を逐次観察する手法が確立されました。本実験により、単層CNTが生成し始める反応過程において、触媒が炭化物Co6W6Cから金属Co(コバルト)へと相変化していることを明らかにできました。Si/SiO2上のCo-W-C系ナノ粒子は、特定構造を有する単層CNTの成長に適した触媒構造へと構造進化していることになります。これらは、単層CNT触媒の新しい構造進化モデルとして学界に提案されるものです。

本研究成果は、2019年5月24日付の米国学術誌 Science Advances 電子版に掲載されました。

 

シリコンウェハ酸化膜上で原子分解能STEM観察に成功

プレスリリース本文:

/shared/press/data/setnws_201905271437284354663583_286661.pdf

Science Advances:https://advances.sciencemag.org/content/5/5/eaat9459.abstract

0403電子応用0501セラミックス及び無機化学製品
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