超電導量子ビットを創始 100ビットを目指す:中村泰信

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日経サイエンス  2018年9月号 フロントランナー挑む 第84回
古田彩(編集部)

世界中が競って開発する超電導量子コンピューターの
最初の素子を生み出したパイオニアは
100量子ビットの高精度な制御を目標に掲げる

いま,世界中で期待が沸騰している量子コンピューター。多種多様なハードウエアの開発が試みられているが,その最前線にいるのが,グーグルやIBM,インテル,各国の有力大学とベンチャー企業がしのぎを削る,超電導を使った量子コンピューターだ。その基本素子となる超電導量子ビットの最初の1個を世に送り出したのが,東京大学先端科学技術研究センターの中村泰信である。

1999年4月,Nature誌の表紙を,NECの基礎研究所にいた中村が報告した1枚のグラフが飾った。緩やかな波形が重なったそのグラフは,基板上に作りこんだ超電導の小さな箱が,クーパー対と呼ぶ電子ペアがN個入った「0」状態と,N+1個入った「1」状態を同時に取る「量子的重ね合わせ」になっていることを示していた。重ね合わせは,測定すると「0」と「1」のどちらかの状態になり,各状態の実現確率は箱に電圧をかける時間によって変えることができる。それは量子ビットの基本動作で,中村は世界で初めて,固体素子を使って量子ビットを作れることを示したのだ。

続きは 日経サイエンス 2018年9月号誌面でどうぞ。

中村泰信(なかむら・やすのぶ)
東京大学先端科学技術研究センター教授。1968年大阪生まれ。1990年東京大学工学部卒,1992年同大大学院修士課程修了。工学博士。NEC基礎研究所研究員,デルフト工科大学客員研究員などを経て,2005年NEC主席研究員。2012年より現職。2014年より理化学研究所チームリーダー兼務。1999年仁科記念賞,2014年江崎玲於奈賞を受賞。

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