世界初となるWi-SUN FANの認証を取得
2019-02-05 京都大学
原田博司 情報学研究科教授らの研究グループは、株式会社日新システムズとローム株式会社と共同で、IoT向け新国際無線通信規格Wi-SUN FAN (Field Area Network)を搭載した無線機器を開発しました。
本無線機は、1km程度の距離を安定して伝送することができるIEEE802.15.4/4g/4e技術を核に、Wi-Fi™システムで導入実績のあるインターネット接続用国際規格、およびIPをベースに無線機間の多段中継を実現するマルチホップ国際規格を統合した機能を搭載しています。そのため、スマートシティやスマートメータリングを構成する各種センサー、メーター、モニターを手軽にインターネットに接続することが可能になります。
本研究で開発された無線機器は、2019年1月30日に、世界で初めてWi-SUN アライアンスが行ったWi-SUN FAN認証試験に合格し、認証を取得しました。
図:Wi-SUN FANシステムの概要
詳しい研究内容について
―世界初となる Wi-SUN FAN の認証を取得―■ 概要
スマートシティやスマートグリッドなど屋外での通信ネットワークを実現するためには、高品質で 長距離かつ安全なネットワーク技術が必要となります。Wi-SUN FAN は IoT(Internet of Things: “モノ”のインターネット)構築に最適な国際無線通信規格「Wi-SUN」の新規格で、電気・ガス・水道 のメータリングのほか、インフラストラクチャ、高度道路交通システムなど、スマートシティ、スマ ートグリッドを構築するさまざまなアプリケーションにおいて、相互運用可能な通信ネットワーク技 術として期待されています。
京都大学大学院情報学研究科 原田博司 教授の研究グループは、株式会社日新システムズとローム 株式会社と共同で、IoT 向け新国際無線通信規格 Wi-SUN FAN (Field Area Network)を搭載した無線 機器を開発しました。そして、複数社の異なる無線機を複数台用いて、マルチホップ、周波数ホッピ ングおよび高度な認証セキュリティを利用したIP通信による認証試験に合格しました。本無線機は、 1km 程度の距離を安定して伝送することができる IEEE802.15.4/4g/4e 技術を核に、Wi-Fi™システム で導入実績のあるインターネット接続用国際規格、および IP をベースに無線機間の多段中継を実現 するマルチホップ国際規格を統合した機能を搭載しています。そのためスマートシティやスマートメ ータリングを構成する各種センサー、メーター、モニターを手軽にインターネットに接続することが 可能になります。
本機器は、2019 年 1 月 30 日に世界で初めて Wi-SUN アライアンスが行った Wi-SUN FAN 認証試験に 合格し、認証を取得しました。 図 1 Wi-SUN FAN システムの概要
■ 背景
スマートシティやスマートグリッドなど屋外での通信ネットワークを実現するためには、高品質で 長距離かつ安全なネットワーク技術が必要となります。Wi-SUN FAN は IoT 構築に最適な国際無線通 信規格「Wi-SUN」の新規格で、電気・ガス・水道のメータリングのほか、インフラストラクチャ、高 度道路交通システムなど、スマートシティ、スマートグリッドを構築するさまざまなアプリケーショ ンにおいて、相互運用可能な通信ネットワーク技術として期待されています(図 1)。
この Wi-SUN FAN は、IEEE802.15.4g 規格の低消費電力無線伝送技術と IPv6 による多段中継技術 を利用した相互運用可能な低消費電力 IoT 無線通信技術です。IoT 用の無線通信規格および技術適合 性・相互接続性認証を行う Wi-SUN アライアンスは、2016 年 5 月 16 日に標準仕様を制定し、これを受 け(京都大学、日新システムズ、ロームの)3 者は、2016 年 11 月 11 日に Wi-SUN FAN に対応した無 線機の基礎開発に成功したことを発表しました。その後 Wi-SUN アライアンスは、2018 年 10 月 3 日に Wi-SUN FAN 認証プログラムを発表しましたが、Wi-SUN FAN 認証を取得した無線機は存在していませ んでした。■ 今回の成果
今回、Wi-SUN FAN の基礎開発成果を元に Wi-SUN FAN の技術仕様書および認証プログラムに対応し た無線機(写真 1)を開発し、複数社の異なる無線機を複数台用いて、マルチホップ、周波数ホッピ ングおよび高度な認証セキュリティを利用した IP 通信による認証試験に合格しました。この無線機 は、Wi-SUN FAN 技術仕様書に記載されている以下の機能を有します。
● 日本で運用上必要となる IEEE 802.15.4/4g/4e に対応した物理層、MAC 層
●6LowPAN、IPv6 に代表される IETF 制定のアダプテーション層、ネットワーク層、トランスポート層
●RPL を用いたマルチホップ通信方式
● 周波数ホッピング
●認証セキュリティ対応
●マルチベンダ相互接続性
写真 1 認証を受けた機器
本無線機は、1km 程度の距離を安定して伝送することができる IEEE802.15.4/4g/4e 技術を核に、WiFi™システムで導入実績のあるインターネット接続用国際規格、および IP をベースに無線機間の多段 Wi-SUN FAN モジュール(開発中) Wi-SUN FAN 対応無線機 (開発評価ボード BP35C4-T01) 中継を実現するマルチホップ国際規格を統合した機能を搭載しています。そのためスマートシティや スマートメータリングを構成する各種センサー、メーター、モニターを手軽にインターネットに接続 することが可能になります。なお、本成果は、IEEE 802.15.4/4g/4e の標準化・開発実績のある京都 大学、Wi-SUN 対応の通信ミドルウェアの商用化を行う日新システムズ、同標準化に対応した通信モジ ュールを開発するロームという京都に本拠をもつ 3 者が、産学連携の共同コンソーシアム「次世代 WiSUN 共同研究コンソーシアム・京都」を組み、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の中で行われたものです。
■認証取得概要
認証取得日時:2019 年 1 月 30 日
認証機関:Wi-SUN アライアンス
認証試験機関:Allion Labs, Inc.
認証番号:WSA 0171(Wi-SUN FAN の認証番号としては世界初)
図 2 取得した Product Certificate Document
■ 今後の展開
今後も、3 者は Wi-SUN アライアンスが主催する相互接続性仕様検証イベントに参加し、Wi-SUN FAN 規格の技術適合性・相互接続性認証試験に貢献するとともに、本無線機を社会実装するため、さらな る開発を京都における産学連携プロジェクトとして推進してまいります。 また本成果は、2 月 5 日よ り米国・ニューオーリンズで開催される米国最大級の電力業界関連のイベント「DistribuTECH 2019」 の Wi-SUN アライアンスのブースにおいて展示を行う予定です。
【用語説明】
■ IEEE 802.15.4g
屋外で利用可能なセンサー、メーター等に搭載し、エネルギーマネージメント等を行うために必要と なる無線通信伝送部(物理層)の国際標準規格。1 ホップ最大1km程度の伝送が都市部でも実現で き、低消費電力に IPv6 等の情報を伝送できる特長を有する。米国 IEEE802.15 委員会で制定。京都大 学 原田博司教授は、この標準化委員会の副議長であり、フレーム同期部コードが強制規格に採用さ れるなどの技術的なメジャーコントリビュータである。
■ IETF
インターネット技術の標準化を推進する任意団体。 コンピュータシステムを相互接続するため、 共 通の技術仕様策定を議論するグループから発展したもの。
■ Wi-SUN アライアンス
IEEE 802.15.4g 規格をベースにエネルギーマネージメント、防災、工場等の各種アプリケーションを 実現するために他のオープンな国際標準規格と融合させ、製造メーカ間で相互接続可能な国際無線通 信規格「Wi-SUN Profile」を制定する任意団体。現在会員企業は全世界に 100 社以上。スマートメー ターと宅内エネルギー管理システム(HEMS)との間の通信規格「Wi-SUN ECHONET」は全国の電力会社 に採用。現在すでに当該仕様が搭載されているスマートメーターは 700 万台以上出荷。今後は東京電 力管内で 2000 万台以上出荷される予定。詳細は https://www.wi-sun.org を参照。
■ Wi-SUN FAN (Field Area Network)
Wi-SUN アライアンスが制定するスマートメータリング、配電自動化を実現するスマートグリッドお よび、インフラ管理、高度道路交通システム、スマート照明に代表されるスマートシティを無線で実 現するためのセンサー、メーターに搭載する IPv6 で多段中継(マルチホップ)可能な通信仕様。2016 年 5 月 16 日にバージョン1を Wi-SUN FAN ワーキンググループで制定。物理層部に IEEE 802.15.4g、 データリンク層に IEEE 802.15.4/4e、アダプテーション層に IETF 6LowPAN そしてネットワーク層部 に IPv6、ICMPv6、トランスポート層に UDP、そして認証方式として IEEE 802.1x を採用している。ま た製造ベンダー間の相互接続性を担保するための試験仕様等も提供されている。
■ 京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室について
京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室は、京都大学 大学院情報学研究科通信情報システ ム専攻に所属し、ディジタル通信分野に関する研究開発を行っています。特に原田博司教授は、2012 年 Wi-SUN アライアンス設立時の共同創業者(Founder member)であり、現在 Wi-SUN アライアンス理事 会議長(Chair of the Board)として、また、 Wi-SUN アライアンス HAN WG 議長として、Wi-SUN シ ステムの技術仕様策定、普及活動を行ってきました。原田博司研究室では、Wi-SUN システム全般の研 究開発を行っており、主に通信方式、電波伝搬・伝送、システム最適化、応用システム等の研究開発 を行っています。
■ 日新システムズについて
日新電機株式会社(東証 1 部上場)の全額出資子会社である日新システムズは、これまで組み込みシ ステム開発で培った機器制御技術とネットワーク技術を土台に、エネルギーをはじめとする様々な分 野において、価値あるスマート社会を実現していくことで新しい未来をみなさまと共に創り続ける企 業です。
日新システムズのホームページ https://www.co-nss.co.jp/
Wi-SUN FAN ソリューションページ https://www.co-nss.co.jp/media/press/wsf/
■ ロームについて
ロームは、1958 年(昭和 33 年)設立の半導体・電子部品メーカです。自動車・産業機器のほか、民 生・通信など多様な市場に対し、品質と信頼性に優れた LSI やディスクリート、電子部品を供給する とともに、システム全体を最適化するソリューション提案を行っています。 また、Wi-SUN FAN に対しては、要素技術で欠かせない IEEE802.15.4g 規格に対応する RF 技術や WiSUN FAN スタックを搭載する最適な MCU の選定技術、それらのモジュール製品化技術などを保持して おり、Wi-SUN FAN に対応した無線通信モジュールの量産に向けて開発を進めています。これまで京都 大学・株式会社日新システムズとの共同開発で、世界初の Wi-SUN FAN 対応無線機の基礎実験に成功 したのち、小型 IoT 用ゲートウェイや広範囲情報収集システムの開発を行ってきました。今後もロー ムは、急拡大するインフラの無線化や IoT 機器に向けて Wi-SUN FAN の開発を推進していきます。